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「おーっほっほっほ! カイル様、見ていらっしゃい! 今日の私は、王妃としての公務をすべて放り出し、この麗らかな午後に背徳の『二度寝』を決め込んで差し上げますわ!」
数年後。王宮の広大な庭園を見渡す豪華な寝室で、リペはシルクの寝具を跳ね除け、仁王立ちで宣言した。
その指先には、焼きたてのクロワッサン。かつて彼女が夢見た「自由なパン生活」の象徴である。
「お嬢様。……いえ、リペ王妃殿下。公務を放り出すと仰いますが、今日の予定は元々『国王陛下と愛を語り合うティータイム』しか入っておりませんよ」
側に控えるセバスが、相変わらずの無表情で眼鏡を直した。
「な、なんですって!? 私のスケジュール管理はどうなっていますの! もっとこう、分厚い書類の山とか、口うるさい大臣との論戦とか、悪妻として踏みにじるべき障害はないのですか!?」
「あいにくですが、陛下が『リペにストレスを与えるような仕事はすべて僕が片付ける』と仰って、昨夜のうちに全滅させてしまいました」
リペはクロワッサンを握りしめたまま、ガックリと肩を落とした。
そこへ、豪華なマントを翻し、以前にも増して大人の色気を纏ったカイル国王陛下が、弾けるような笑顔で入室してきた。
「リペ! 聞いたよ! 君は僕との時間を犠牲にしてまで、『王宮の寝具の寝心地を自ら確認し、国民の睡眠の質を向上させるための研究』に没頭しようとしてくれているんだね!」
「違いますわ! ただ怠けたいだけですわ!」
「ああ、なんて献身的なんだ! 自分を『怠け者』という悪名に晒してまで、僕に休息の重要性を教えようとしてくれるなんて。……よし、僕も一緒に研究(二度寝)に協力しよう。さあ、ベッドの半分を空けておくれ!」
カイルは迷いなくリペの隣に飛び込み、彼女をシーツごと抱きしめた。
「殿下……いえ、陛下! 重いですわ! 暑苦しいですわ! 離しなさいな!」
「嫌だよ。君の隣は、世界で一番安全で、一番情熱的な僕の居場所なんだから。……リペ、君の焼きたてのパンのような香りに包まれていると、僕は世界一の幸せ者だと実感するよ」
カイルはリペの首筋に顔を埋め、深く息を吸い込んだ。
リペは顔を真っ赤にしながら、抵抗するのを諦めて、彼の柔らかな髪に指を差し入れた。
「……もう、本当にお馬鹿さんですわね。私がどんなに悪ぶっても、貴方はそれを金粉で飾り立ててしまうのですから」
「当然だろう? 君が僕に投げる『石』は、僕のフィルターを通ればすべて『宝石』に変わるんだ。……死ぬまで、君の宝石を僕に投げ続けておくれ」
カイルが優しく顔を上げ、リペの唇に甘い口付けを落とした。
その様子を、窓の外から双眼鏡で眺めている影があった。
「……ああ、お姉様と陛下のラブ・パワーが、今日も王宮のバラを狂い咲きさせていますわ……! 私、マリアンヌ、一生この光景を記録し続けますわ!」
「マリアンヌ様。そろそろ陛下に見つかって、また『邪魔をするな』と国外追放(という名の豪華旅行)を命じられますよ」
セバスのツッコミに、マリアンヌは「それもまたお姉様の愛ですわ!」と鼻息を荒くした。
リペは、カイルの胸の中で、窓の外に広がる青空を見つめた。
前世の記憶なんてない。特別な魔法も使えない。
ただ、あまりに重すぎる愛を持った夫と、少し変わった友人たちに囲まれているだけ。
「……ねえ、カイル様」
「なんだい、僕の可愛い悪妻」
「明日こそは……明日こそは絶対に、貴方を困らせて差し上げますわよ。覚悟しておきなさいな!」
「ああ、楽しみにしているよ。……リペ、愛している」
「……っ。……私も、仕方なく、愛して差し上げますわ!」
リペは最後の一切れのクロワッサンを、幸せそうに口に運んだ。
彼女の「悪役令嬢」としての戦いは終わったが、「世界一愛される悪妻」としての賑やかな日々は、これからも永遠に続いていくのである。
数年後。王宮の広大な庭園を見渡す豪華な寝室で、リペはシルクの寝具を跳ね除け、仁王立ちで宣言した。
その指先には、焼きたてのクロワッサン。かつて彼女が夢見た「自由なパン生活」の象徴である。
「お嬢様。……いえ、リペ王妃殿下。公務を放り出すと仰いますが、今日の予定は元々『国王陛下と愛を語り合うティータイム』しか入っておりませんよ」
側に控えるセバスが、相変わらずの無表情で眼鏡を直した。
「な、なんですって!? 私のスケジュール管理はどうなっていますの! もっとこう、分厚い書類の山とか、口うるさい大臣との論戦とか、悪妻として踏みにじるべき障害はないのですか!?」
「あいにくですが、陛下が『リペにストレスを与えるような仕事はすべて僕が片付ける』と仰って、昨夜のうちに全滅させてしまいました」
リペはクロワッサンを握りしめたまま、ガックリと肩を落とした。
そこへ、豪華なマントを翻し、以前にも増して大人の色気を纏ったカイル国王陛下が、弾けるような笑顔で入室してきた。
「リペ! 聞いたよ! 君は僕との時間を犠牲にしてまで、『王宮の寝具の寝心地を自ら確認し、国民の睡眠の質を向上させるための研究』に没頭しようとしてくれているんだね!」
「違いますわ! ただ怠けたいだけですわ!」
「ああ、なんて献身的なんだ! 自分を『怠け者』という悪名に晒してまで、僕に休息の重要性を教えようとしてくれるなんて。……よし、僕も一緒に研究(二度寝)に協力しよう。さあ、ベッドの半分を空けておくれ!」
カイルは迷いなくリペの隣に飛び込み、彼女をシーツごと抱きしめた。
「殿下……いえ、陛下! 重いですわ! 暑苦しいですわ! 離しなさいな!」
「嫌だよ。君の隣は、世界で一番安全で、一番情熱的な僕の居場所なんだから。……リペ、君の焼きたてのパンのような香りに包まれていると、僕は世界一の幸せ者だと実感するよ」
カイルはリペの首筋に顔を埋め、深く息を吸い込んだ。
リペは顔を真っ赤にしながら、抵抗するのを諦めて、彼の柔らかな髪に指を差し入れた。
「……もう、本当にお馬鹿さんですわね。私がどんなに悪ぶっても、貴方はそれを金粉で飾り立ててしまうのですから」
「当然だろう? 君が僕に投げる『石』は、僕のフィルターを通ればすべて『宝石』に変わるんだ。……死ぬまで、君の宝石を僕に投げ続けておくれ」
カイルが優しく顔を上げ、リペの唇に甘い口付けを落とした。
その様子を、窓の外から双眼鏡で眺めている影があった。
「……ああ、お姉様と陛下のラブ・パワーが、今日も王宮のバラを狂い咲きさせていますわ……! 私、マリアンヌ、一生この光景を記録し続けますわ!」
「マリアンヌ様。そろそろ陛下に見つかって、また『邪魔をするな』と国外追放(という名の豪華旅行)を命じられますよ」
セバスのツッコミに、マリアンヌは「それもまたお姉様の愛ですわ!」と鼻息を荒くした。
リペは、カイルの胸の中で、窓の外に広がる青空を見つめた。
前世の記憶なんてない。特別な魔法も使えない。
ただ、あまりに重すぎる愛を持った夫と、少し変わった友人たちに囲まれているだけ。
「……ねえ、カイル様」
「なんだい、僕の可愛い悪妻」
「明日こそは……明日こそは絶対に、貴方を困らせて差し上げますわよ。覚悟しておきなさいな!」
「ああ、楽しみにしているよ。……リペ、愛している」
「……っ。……私も、仕方なく、愛して差し上げますわ!」
リペは最後の一切れのクロワッサンを、幸せそうに口に運んだ。
彼女の「悪役令嬢」としての戦いは終わったが、「世界一愛される悪妻」としての賑やかな日々は、これからも永遠に続いていくのである。
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