27 / 27
28
しおりを挟む
「オギャァァァァァッ!!」
元気な産声が響いた直後。
バンッ! と寝室の扉が開かれた。
「シナモン!!」
飛び込んできたのは、汗だくで、粉まみれのクラウスだった。
その手には、湯気を立てる黄金色のパンが握られている。
「焼けたぞ! 『特製・安産祈願パン(母子ともに健康ブレッド)』だ!」
「……タイミング、ばっちりです」
私はベッドの上で、生まれたばかりの我が子を抱きながら微笑んだ。
「見てください、クラウスさん。元気な男の子ですよ」
「男の子……」
クラウスはパンをサイドテーブルに置き(そこは冷静に耐熱マットの上に置いた)、震える手で私たちに近づいた。
「俺の……子か?」
「ええ。あなたの目元にそっくりな、可愛い赤ちゃんです」
クラウスは恐る恐る指を差し出した。
すると、赤ちゃんはその小さな手で、クラウスの指をギュッと握り返した。
「……ッ!!」
クラウスの目から、滝のような涙が溢れ出した。
「ううっ……うわぁぁぁん! 小さい……! 温かい……! パン生地より柔らかい……!」
「パンと比較しないでください」
「ありがとう、シナモン。……ありがとう、生まれてきてくれて」
彼は私の額に、そして赤ちゃんのおでこに、優しくキスをした。
その時。
「どけクラウス! 孫の顔が見えないだろう!」
「私の孫よ! 一番抱っこは私がするわ!」
ドカドカと親族一同が雪崩れ込んできた。
ロダン元皇帝(父)、アデラ大公妃(母)、アルフレッド国王、そしてフェリクス(弟)。
「おおお! なんと凛々しい顔立ちだ! 将来は筋肉ムキムキのパン職人になるぞ!」(国王)
「いいえ、この聡明な瞳……間違いなく、世界を統べる暗黒の帝王になる」(ロダン)
「赤なら似合うかしら? 唐辛子の産湯(うぶゆ)に浸からせましょう」(アデラ)
「やめてください母上! 皮膚がただれます!」(フェリクス)
騒がしい。
本当に騒がしいけれど、愛に溢れた家族たち。
赤ちゃんは彼らの大声に驚くどころか、キャッキャと笑い声を上げた。
「大物になりますね」
私はクスクスと笑った。
「さて、名前を決めなくてはなりませんね」
全員が静まり返り、ゴクリと唾を飲んだ。
以前の会議では『バゲット』だの『悪魔』だの、ろくな案が出なかった。
「クラウスさん。……決めてありますよね?」
「ああ」
クラウスは頷き、赤ちゃんを抱き上げた。
「この子の名前は……『リュカ』だ」
「リュカ……?」
全員がキョトンとした。
「食材の名前じゃないのか?」(ロダン)
「強そうじゃないわね」(アデラ)
クラウスは優しく子供を見つめて言った。
「古代語で『光』という意味だ。……シナモンが俺に光をくれたように、この子も誰かの光になってほしい。そして……」
彼は少し照れくさそうに付け加えた。
「実は、この名前のアナグラム(文字の並べ替え)で……ある言葉が隠されているんだ」
「ある言葉?」
私は首をかしげた。
リュカ……Lyca……Clay……?
「……まあ、それは俺とシナモンだけの秘密だ」
「えーっ! 教えてくださいよ!」
「ダメだ。一生の謎解きにしておけ」
クラウスは悪戯っぽく笑った。
(もしかして……私の好きなパンの頭文字とか?)
真相は分からないけれど、その響きはとても優しくて、温かかった。
「リュカ……。素敵な名前です」
私は赤ちゃんに語りかけた。
「よろしくね、リュカ。パパとママの宝物」
リュカは答えるように、「あーうー」と声を上げ、そして……テーブルの上のパンに向かって手を伸ばした。
「おっ! 早速パンに興味を示したぞ!」
「さすが我が息子だ!」
爆笑に包まれる寝室。
窓の外からは、春の優しい風と、小麦畑の香りが漂ってきていた。
***
それから、五年後。
『ベーカリー・シナモン』は、今日も大繁盛していた。
「いらっしゃいませー! 焼きたてのクロワッサンはいかがですかー!」
店先で元気な声を上げているのは、五歳になった息子、リュカだ。
小さなエプロンをつけて、トングを器用に操っている。
「あらリュカ君、偉いわねえ」
「おじちゃん、これ買うよ」
常連客たちに愛され、看板息子として立派に働いている。
厨房では、私とクラウスが並んで生地をこねていた。
「シナモン、窯の温度よし。バゲットを入れるぞ」
「はい! クープ入れ完了です!」
阿吽(あうん)の呼吸。
言葉を交わさなくても、お互いの動きが手に取るように分かる。
あれから、色々なことがあった。
ロダン父上は店の裏で「隠居パン屋」として、黒くない普通のパンを焼く楽しみに目覚めた。
アデラお義母様は、定期的に激辛パンを食べに来ては、「まだまだね」と言いつつ完食して帰っていく。
エドワード王子(今は国王)とリリィ様は、毎年結婚記念日に「お米パン」を買いに来てくれる。
そしてフェリクスは、なぜかウチの店の経理担当として、公務の合間に帳簿をつけに来ている(報酬はクリームパン)。
「……幸せだな」
ふと、クラウスが呟いた。
「え?」
「こうして、君と並んでパンを焼いて……子供の成長を見守って。……俺の人生、捨てたもんじゃない」
彼は粉のついた手で、私の頬をツンとつついた。
「公爵様に戻りたいとは思いませんか?」
私が意地悪く聞くと、彼は首を横に振った。
「まさか。俺の天職はここにある。……世界一のパン職人の、専属温度管理係だ」
「ふふっ。頼りにしてますよ、パートナー」
私たちは顔を見合わせて笑った。
カランカラン!
ドアベルが鳴り、リュカが厨房に駆け込んできた。
「パパ! ママ! 大変だよ!」
「どうした?」
「お店の前に、すごい行列ができてる! 『伝説のパン屋はここですか?』って!」
どうやら、世界中からまた新しいお客様(パン好き)が押し寄せてきたらしい。
私はエプロンの紐を締め直した。
「さあ、クラウスさん! 休憩終わりです! 追加で100個焼きますよ!」
「やれやれ……。嬉しい悲鳴だな」
クラウスも苦笑しながら、帽子を被り直した。
私たちは、いつものように、そしてこれからもずっと。
小麦と、酵母と、たくさんの愛に囲まれて生きていく。
「よし、行くぞ!」
「はい!」
「いらっしゃいませーーッ!!」
私たちの声が重なり、店内に、そして青空に響き渡った。
『ベーカリー・シナモン』。
そこは、世界で一番香ばしくて、世界で一番幸せな場所。
パンの香りに誘われて、今日もまた、新しい物語が焼き上がる――。
元気な産声が響いた直後。
バンッ! と寝室の扉が開かれた。
「シナモン!!」
飛び込んできたのは、汗だくで、粉まみれのクラウスだった。
その手には、湯気を立てる黄金色のパンが握られている。
「焼けたぞ! 『特製・安産祈願パン(母子ともに健康ブレッド)』だ!」
「……タイミング、ばっちりです」
私はベッドの上で、生まれたばかりの我が子を抱きながら微笑んだ。
「見てください、クラウスさん。元気な男の子ですよ」
「男の子……」
クラウスはパンをサイドテーブルに置き(そこは冷静に耐熱マットの上に置いた)、震える手で私たちに近づいた。
「俺の……子か?」
「ええ。あなたの目元にそっくりな、可愛い赤ちゃんです」
クラウスは恐る恐る指を差し出した。
すると、赤ちゃんはその小さな手で、クラウスの指をギュッと握り返した。
「……ッ!!」
クラウスの目から、滝のような涙が溢れ出した。
「ううっ……うわぁぁぁん! 小さい……! 温かい……! パン生地より柔らかい……!」
「パンと比較しないでください」
「ありがとう、シナモン。……ありがとう、生まれてきてくれて」
彼は私の額に、そして赤ちゃんのおでこに、優しくキスをした。
その時。
「どけクラウス! 孫の顔が見えないだろう!」
「私の孫よ! 一番抱っこは私がするわ!」
ドカドカと親族一同が雪崩れ込んできた。
ロダン元皇帝(父)、アデラ大公妃(母)、アルフレッド国王、そしてフェリクス(弟)。
「おおお! なんと凛々しい顔立ちだ! 将来は筋肉ムキムキのパン職人になるぞ!」(国王)
「いいえ、この聡明な瞳……間違いなく、世界を統べる暗黒の帝王になる」(ロダン)
「赤なら似合うかしら? 唐辛子の産湯(うぶゆ)に浸からせましょう」(アデラ)
「やめてください母上! 皮膚がただれます!」(フェリクス)
騒がしい。
本当に騒がしいけれど、愛に溢れた家族たち。
赤ちゃんは彼らの大声に驚くどころか、キャッキャと笑い声を上げた。
「大物になりますね」
私はクスクスと笑った。
「さて、名前を決めなくてはなりませんね」
全員が静まり返り、ゴクリと唾を飲んだ。
以前の会議では『バゲット』だの『悪魔』だの、ろくな案が出なかった。
「クラウスさん。……決めてありますよね?」
「ああ」
クラウスは頷き、赤ちゃんを抱き上げた。
「この子の名前は……『リュカ』だ」
「リュカ……?」
全員がキョトンとした。
「食材の名前じゃないのか?」(ロダン)
「強そうじゃないわね」(アデラ)
クラウスは優しく子供を見つめて言った。
「古代語で『光』という意味だ。……シナモンが俺に光をくれたように、この子も誰かの光になってほしい。そして……」
彼は少し照れくさそうに付け加えた。
「実は、この名前のアナグラム(文字の並べ替え)で……ある言葉が隠されているんだ」
「ある言葉?」
私は首をかしげた。
リュカ……Lyca……Clay……?
「……まあ、それは俺とシナモンだけの秘密だ」
「えーっ! 教えてくださいよ!」
「ダメだ。一生の謎解きにしておけ」
クラウスは悪戯っぽく笑った。
(もしかして……私の好きなパンの頭文字とか?)
真相は分からないけれど、その響きはとても優しくて、温かかった。
「リュカ……。素敵な名前です」
私は赤ちゃんに語りかけた。
「よろしくね、リュカ。パパとママの宝物」
リュカは答えるように、「あーうー」と声を上げ、そして……テーブルの上のパンに向かって手を伸ばした。
「おっ! 早速パンに興味を示したぞ!」
「さすが我が息子だ!」
爆笑に包まれる寝室。
窓の外からは、春の優しい風と、小麦畑の香りが漂ってきていた。
***
それから、五年後。
『ベーカリー・シナモン』は、今日も大繁盛していた。
「いらっしゃいませー! 焼きたてのクロワッサンはいかがですかー!」
店先で元気な声を上げているのは、五歳になった息子、リュカだ。
小さなエプロンをつけて、トングを器用に操っている。
「あらリュカ君、偉いわねえ」
「おじちゃん、これ買うよ」
常連客たちに愛され、看板息子として立派に働いている。
厨房では、私とクラウスが並んで生地をこねていた。
「シナモン、窯の温度よし。バゲットを入れるぞ」
「はい! クープ入れ完了です!」
阿吽(あうん)の呼吸。
言葉を交わさなくても、お互いの動きが手に取るように分かる。
あれから、色々なことがあった。
ロダン父上は店の裏で「隠居パン屋」として、黒くない普通のパンを焼く楽しみに目覚めた。
アデラお義母様は、定期的に激辛パンを食べに来ては、「まだまだね」と言いつつ完食して帰っていく。
エドワード王子(今は国王)とリリィ様は、毎年結婚記念日に「お米パン」を買いに来てくれる。
そしてフェリクスは、なぜかウチの店の経理担当として、公務の合間に帳簿をつけに来ている(報酬はクリームパン)。
「……幸せだな」
ふと、クラウスが呟いた。
「え?」
「こうして、君と並んでパンを焼いて……子供の成長を見守って。……俺の人生、捨てたもんじゃない」
彼は粉のついた手で、私の頬をツンとつついた。
「公爵様に戻りたいとは思いませんか?」
私が意地悪く聞くと、彼は首を横に振った。
「まさか。俺の天職はここにある。……世界一のパン職人の、専属温度管理係だ」
「ふふっ。頼りにしてますよ、パートナー」
私たちは顔を見合わせて笑った。
カランカラン!
ドアベルが鳴り、リュカが厨房に駆け込んできた。
「パパ! ママ! 大変だよ!」
「どうした?」
「お店の前に、すごい行列ができてる! 『伝説のパン屋はここですか?』って!」
どうやら、世界中からまた新しいお客様(パン好き)が押し寄せてきたらしい。
私はエプロンの紐を締め直した。
「さあ、クラウスさん! 休憩終わりです! 追加で100個焼きますよ!」
「やれやれ……。嬉しい悲鳴だな」
クラウスも苦笑しながら、帽子を被り直した。
私たちは、いつものように、そしてこれからもずっと。
小麦と、酵母と、たくさんの愛に囲まれて生きていく。
「よし、行くぞ!」
「はい!」
「いらっしゃいませーーッ!!」
私たちの声が重なり、店内に、そして青空に響き渡った。
『ベーカリー・シナモン』。
そこは、世界で一番香ばしくて、世界で一番幸せな場所。
パンの香りに誘われて、今日もまた、新しい物語が焼き上がる――。
0
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説
白い結婚三年目。つまり離縁できるまで、あと七日ですわ旦那様。
あさぎかな@コミカライズ決定
恋愛
異世界に転生したフランカは公爵夫人として暮らしてきたが、前世から叶えたい夢があった。パティシエールになる。その夢を叶えようと夫である王国財務総括大臣ドミニクに相談するも答えはノー。夫婦らしい交流も、信頼もない中、三年の月日が近づき──フランカは賭に出る。白い結婚三年目で離縁できる条件を満たしていると迫り、夢を叶えられないのなら離縁すると宣言。そこから公爵家一同でフランカに考え直すように動き、ドミニクと話し合いの機会を得るのだがこの夫、山のように隠し事はあった。
無言で睨む夫だが、心の中は──。
【詰んだああああああああああ! もうチェックメイトじゃないか!? 情状酌量の余地はないと!? ああ、どうにかして侍女の準備を阻まなければ! いやそれでは根本的な解決にならない! だいたいなぜ後妻? そんな者はいないのに……。ど、どどどどどうしよう。いなくなるって聞いただけで悲しい。死にたい……うう】
4万文字ぐらいの中編になります。
※小説なろう、エブリスタに記載してます
恋人に夢中な婚約者に一泡吹かせてやりたかっただけ
棗
恋愛
伯爵令嬢ラフレーズ=ベリーシュは、王国の王太子ヒンメルの婚約者。
王家の忠臣と名高い父を持ち、更に隣国の姫を母に持つが故に結ばれた完全なる政略結婚。
長年の片思い相手であり、婚約者であるヒンメルの隣には常に恋人の公爵令嬢がいる。
婚約者には愛を示さず、恋人に夢中な彼にいつか捨てられるくらいなら、こちらも恋人を作って一泡吹かせてやろうと友達の羊の精霊メリー君の妙案を受けて実行することに。
ラフレーズが恋人役を頼んだのは、人外の魔術師・魔王公爵と名高い王国最強の男――クイーン=ホーエンハイム。
濡れた色香を放つクイーンからの、本気か嘘かも分からない行動に涙目になっていると恋人に夢中だった王太子が……。
※小説家になろう・カクヨム様にも公開しています
【本編完結】婚約者を守ろうとしたら寧ろ盾にされました。腹が立ったので記憶を失ったふりをして婚約解消を目指します。
しろねこ。
恋愛
「君との婚約を解消したい」
その言葉を聞いてエカテリーナはニコリと微笑む。
「了承しました」
ようやくこの日が来たと内心で神に感謝をする。
(わたくしを盾にし、更に記憶喪失となったのに手助けもせず、他の女性に擦り寄った婚約者なんていらないもの)
そんな者との婚約が破談となって本当に良かった。
(それに欲しいものは手に入れたわ)
壁際で沈痛な面持ちでこちらを見る人物を見て、頬が赤くなる。
(愛してくれない者よりも、自分を愛してくれる人の方がいいじゃない?)
エカテリーナはあっさりと自分を捨てた男に向けて頭を下げる。
「今までありがとうございました。殿下もお幸せに」
類まれなる美貌と十分な地位、そして魔法の珍しいこの世界で魔法を使えるエカテリーナ。
だからこそ、ここバークレイ国で第二王子の婚約者に選ばれたのだが……それも今日で終わりだ。
今後は自分の力で頑張ってもらおう。
ハピエン、自己満足、ご都合主義なお話です。
ちゃっかりとシリーズ化というか、他作品と繋がっています。
カクヨムさん、小説家になろうさん、ノベルアッププラスさんでも連載中(*´ω`*)
表紙絵は猫絵師さんより(。・ω・。)ノ♡
白い結婚の行方
宵森みなと
恋愛
「この結婚は、形式だけ。三年経ったら、離縁して養子縁組みをして欲しい。」
そう告げられたのは、まだ十二歳だった。
名門マイラス侯爵家の跡取りと、書面上だけの「夫婦」になるという取り決め。
愛もなく、未来も誓わず、ただ家と家の都合で交わされた契約だが、彼女にも目的はあった。
この白い結婚の意味を誰より彼女は、知っていた。自らの運命をどう選択するのか、彼女自身に委ねられていた。
冷静で、理知的で、どこか人を寄せつけない彼女。
誰もが「大人びている」と評した少女の胸の奥には、小さな祈りが宿っていた。
結婚に興味などなかったはずの青年も、少女との出会いと別れ、後悔を経て、再び運命を掴もうと足掻く。
これは、名ばかりの「夫婦」から始まった二人の物語。
偽りの契りが、やがて確かな絆へと変わるまで。
交差する記憶、巻き戻る時間、二度目の選択――。
真実の愛とは何かを、問いかける静かなる運命の物語。
──三年後、彼女の選択は、彼らは本当に“夫婦”になれるのだろうか?
悪役令嬢と誤解され冷遇されていたのに、目覚めたら夫が豹変して求愛してくるのですが?
いりん
恋愛
初恋の人と結婚できたーー
これから幸せに2人で暮らしていける…そう思ったのに。
「私は夫としての務めを果たすつもりはない。」
「君を好きになることはない。必要以上に話し掛けないでくれ」
冷たく拒絶され、離婚届けを取り寄せた。
あと2週間で届くーーそうしたら、解放してあげよう。
ショックで熱をだし寝込むこと1週間。
目覚めると夫がなぜか豹変していて…!?
「君から話し掛けてくれないのか?」
「もう君が隣にいないのは考えられない」
無口不器用夫×優しい鈍感妻
すれ違いから始まる両片思いストーリー
【本編完結】笑顔で離縁してください 〜貴方に恋をしてました〜
桜夜
恋愛
「旦那様、私と離縁してください!」
私は今までに見せたことがないような笑顔で旦那様に離縁を申し出た……。
私はアルメニア王国の第三王女でした。私には二人のお姉様がいます。一番目のエリーお姉様は頭脳明晰でお優しく、何をするにも完璧なお姉様でした。二番目のウルルお姉様はとても美しく皆の憧れの的で、ご結婚をされた今では社交界の女性達をまとめております。では三番目の私は……。
王族では国が豊かになると噂される瞳の色を持った平凡な女でした…
そんな私の旦那様は騎士団長をしており女性からも人気のある公爵家の三男の方でした……。
平凡な私が彼の方の隣にいてもいいのでしょうか?
なので離縁させていただけませんか?
旦那様も離縁した方が嬉しいですよね?だって……。
*小説家になろう、カクヨムにも投稿しています
誰も愛してくれないと言ったのは、あなたでしょう?〜冷徹家臣と偽りの妻契約〜
山田空
恋愛
王国有数の名家に生まれたエルナは、
幼い頃から“家の役目”を果たすためだけに生きてきた。
父に褒められたことは一度もなく、
婚約者には「君に愛情などない」と言われ、
社交界では「冷たい令嬢」と噂され続けた。
——ある夜。
唯一の味方だった侍女が「あなたのせいで」と呟いて去っていく。
心が折れかけていたその時、
父の側近であり冷徹で有名な青年・レオンが
淡々と告げた。
「エルナ様、家を出ましょう。
あなたはもう、これ以上傷つく必要がない」
突然の“駆け落ち”に見える提案。
だがその実態は——
『他家からの縁談に対抗するための“偽装夫婦契約”。
期間は一年、互いに干渉しないこと』
はずだった。
しかし共に暮らし始めてすぐ、
レオンの態度は“契約の冷たさ”とは程遠くなる。
「……触れていいですか」
「無理をしないで。泣きたいなら泣きなさい」
「あなたを愛さないなど、できるはずがない」
彼の優しさは偽りか、それとも——。
一年後、契約の終わりが迫る頃、
エルナの前に姿を見せたのは
かつて彼女を切り捨てた婚約者だった。
「戻ってきてくれ。
本当に愛していたのは……君だ」
愛を知らずに生きてきた令嬢が人生で初めて“選ぶ”物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる