【完結】冷酷公爵の執愛は甘すぎる ~逃げた私を100日で堕とすそうです~

22時完結

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裏切りの兆し

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暗く静かな夜の中、紗耶とエドモンドは森の中を慎重に進んでいた。背後にはわずかな明かりが揺れ、遠くに小さな村が見え隠れしている。村に到着するまでの道中、二人は一言も口を聞かずに歩いていた。今、彼らの目の前にはどれほどの試練が待ち受けているのか、それを考える余裕もなかった。

「エドモンド、私……本当にこの道を選んで良かったのかな。」

紗耶はふと、歩みを止めて呟いた。彼女の声は、かすかな不安を隠しきれずに震えていた。

エドモンドは、歩みを止めることなく少しだけ顔を向けて答える。

「お前が選んだ道だ。どんな結果になろうとも、責任を持って進むしかない。」

「でも……もし私が間違っていたら、どうしよう。」

「間違っているかどうかは、結果が出てからわかることだ。」

エドモンドの言葉は静かで、しかし確信に満ちていた。彼がどんなに冷徹に見えようと、その言葉には彼なりの信念が感じられた。

「結果を恐れていては、何もできない。」

紗耶はその言葉を胸に秘め、再び歩き出した。

***

村の中心に到着したとき、すでにアラジオが待っていた。彼の後ろには、数人の顔見知りの騎士たちが静かに立っている。

「エドモンド、公爵閣下、そして……紗耶様。」

アラジオは少し驚いた顔で二人を迎えた。

「ようこそ、久しぶりだな。」

「ありがとう、アラジオ。」

エドモンドは軽く頷き、アラジオの元へ歩み寄った。

「これからの行動について話がある。」

「もちろんだ。」

アラジオは、深くうなずき、二人を屋敷の中へと招き入れた。

屋敷の中は静まり返り、わずかな光が蝋燭の上で揺れている。室内には、数人の騎士たちが集まり、それぞれが険しい顔をしていた。

「何かあったのか?」

エドモンドが問いかけると、アラジオはため息をついて答えた。

「……クラウスが動き出した。」

その言葉に、紗耶は胸が締め付けられるのを感じた。

「動き出した? どういうこと?」

「お前のことが広まりつつある。」

アラジオは少しの間黙ってから、重い口調で続けた。

「クラウスは、いまや王国中に手を回して、お前の存在を利用しようと必死だ。」

「どうして?」

「お前が王家の血を引く者だと知れば、彼はそれを隠し通すわけにはいかない。お前の存在が公になれば、貴族たちが動く。そして、クラウスの権力は崩れる。」

紗耶はその言葉に驚きとともに深い理解を示した。

「つまり、私が名乗り出たら……クラウスは逆に自分の立場を失ってしまう、というわけね。」

「その通りだ。」

アラジオは少し間を置いてから、続けた。

「だが、それを分かっていながらクラウスはあえてお前を利用しようとしている。」

「どうして?」

エドモンドの声が低くなる。

「クラウスはお前をただの“道具”として利用したいだけだ。」

その言葉に、紗耶の心は一瞬で凍りつく。

「道具?」

「そうだ。王家の血を引く者として、権力を握るためにお前を“操り人形”にしようとしている。」

紗耶の胸に、嫌悪感が湧き上がる。

「それを許せない。」

「だが、今はまだお前を公にする時ではない。」

アラジオの表情が険しくなる。

「クラウスはお前を隠しておくことで、権力を支配し続けようとしている。しかし、その隙に動く者がいる。クラウスが自分の座を守りたいがために、裏で手を回していることは確かだ。」

その言葉に、紗耶はさらに不安を感じる。

「私たちは、まずクラウスの動きを抑えるための証拠をつかまなければならない。」

エドモンドが強い口調で言う。

「クラウスは、どんな手を使ってくるか分からない。だが、今は彼の裏をかいて動くしかない。」

「どうするつもりだ?」

アラジオはエドモンドを見つめた。

「まずは、王国にいる貴族たちに手を回す。その中で、クラウスに味方する者を炙り出す。」

「どうやって?」

「信頼できる使者を使って、お前の名前を公にする。そして、その動きに反応した者を見つける。」

アラジオはその方法に納得し、うなずいた。

「分かった。それで進めよう。」

エドモンドとアラジオの会話が続く中、紗耶は自分の未来について考えていた。

――私は、果たして本当に戦えるのだろうか。

そんな不安が、胸を締めつける。

しかし、その時――

「裏切り者がいる。」

アラジオの突然の言葉に、紗耶は息を呑んだ。

「裏切り者?」

「クラウスの側近の中に、お前を裏切ってクラウスに通じている者がいる。」

その言葉に、室内の空気が一変した。

***

その夜、アラジオが密かに伝えた情報は、紗耶にとって衝撃的だった。

裏切り者がいる。それも、クラウスの側近の中に。

その者が紗耶を助けるふりをして、実はクラウスに通じていたのだとしたら――

紗耶は目の前の現実が信じられなかった。

「信じていた者が、裏切り者だと?」

エドモンドは無言で頷き、暗い目を向けた。

「裏切り者が誰なのかを早急に突き止めなければならない。」

紗耶は深く息を吸い込み、決意を固める。

「誰が裏切り者か分からない。だが、私たちは今こそ進むしかない。」

エドモンドは、紗耶の決意を見届け、静かにうなずいた。

「その通りだ。裏切り者を見つけ出し、クラウスの計画を止める。」

暗闇の中、二人の心が一つに固まった。
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