夏祭りの惑星アクセサリー

新浜 星路

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惑星アクセサリー

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私はすっかり祭囃子の雰囲気に心酔しきっていた。
それぐらいに太鼓囃しや子供達がはしゃぐ声、屋台の人達の掛け声は
いい具合にミキシングされていた。
今日はお小遣いも500円ぐらいしか持ってきていないのでだいぶできる事が限定されてるのはわかってる。まあ、このBGMを聞くだけで元は取れてるんだろうけどね。
私が「これだ!」と思って気に留めた屋台は、<惑星玉、とれます>
という雑な看板が置かれた惑星玉釣り屋だった。
私はそこから3mくらい離れたお面屋で品定めをしてるフリして行くか行くまいか悩んでいると
屋台のおじさんは目線だけで私に語ってきた、実際は目を一瞬見られただけなんだけど。
<ネェチャン、オモシロイモノアルデ>
<おじさんのとっておき!みせたるで>
こんな台詞をわずかあの一瞬の目の挙動だけで伝えてきたおじさんは凄まじい。
あんな……肌は荒れてそうなおじさん(失礼)だったのに、目は黒光る鉄球かのような威厳があった。
「やってくかい、お嬢ちゃん」
くっ……やはり凄まじい眼光、あの鉄球はブラックホールか。私が気がついた時には、おっちゃんに代金を支払い、
なんだか頼りがないストローのようなものをもらった。
「おじさん、これで釣れるの?」
「あったぼうよ! この釣り針には引力があるんだぜ」
「引力? 釣り針なのに?」
「おう。ただこれは手で釣るのではなく口で咥えて釣るんだよ」
おじさんはそう言ってやってみせようとする。
おじさんが吸ったストローの先にはしっかりと惑星玉が張り付いていた。
おじさんの引き上げた惑星玉から、ぽたぽたと滴り落ちる水滴。それはまるで惑星が涙を流したかのように
光輝いており、私はますます惑星玉が欲しくなった。
よし品定めだ。子供用プールにぷかぷかとぷんと浮いてる青黒くも光る惑星玉に心が奪われる。
「お嬢ちゃん、オススメはこの惑星だ」
そう言っておじさんは指で惑星玉をつつく。つつかれた惑星玉は浮き沈みを繰り返しながら、玉内の緑色の光たちも
つられて揺れ動いていた。
私はそれをストローで吸い上げようと頑張った。
重い……だけどなんかこの玉の匂い……いい匂いだなあ。
私はなんとかそれを吸い上げることに成功した。
「おめでとう!お嬢ちゃん! それはプレゼントだよ。大切にしてな」
おじさんは大声で祝ったので皆が私を注目してちょっと恥ずかしかった。
その後は、お客さんが押し寄せる、押し寄せる。
惑星玉屋は10人くらいのお客さんに囲まれ、私は追い出された気分だった。
おじさんが目で一瞬だけこちらをニタッと見たあの表情を忘れられない。
なんだか、私は騙されたのかなあと思いつつも、自分の部屋で惑星玉を眺める。
それにしても綺麗だなあ。
惑星玉は、水星、金星、地球、火星、土星らしきものまでが星星の中に浮いているようだった。
だけど、地球には黒いゴマのようなものがついてる。うごい……てるのかな。
そういえば、あのおじさん、惑星玉の掃除の仕方とか教えてくれなかったな。
どうやってできてるんだろ、これ。
私は惑星玉に穴をあけて、地球をもっと近くで見てみたくなった。
だから、針を使って穴を開けた。
すると、シュオオという空気が抜ける音ではなく無音だった。

女の子は、惑星玉に穴を開けると、惑星玉内部の惑星たちは歪みながらも――玉から出ようとする。
外へ外へと行こうとする力に引っ張られた惑星達は今まで静止していた筈だった。
それと同時に地鳴りが起きる。
「え、なに? なんなの?」
女の子は自体を掌握しきれないようだ。
「どういうこと? この惑星玉はこの惑星そのものなの?」
惑星玉の容器にヒビが入る。それは中身が出る前兆なのだ。
惑星玉から宇宙がでてきたらどうなってしまうのだろう。
女の子は怯えながらも惑星玉が外に飛び出すのを見ることしかできなかった。
銀河が飛び出すその一瞬。
女の子は宇宙にいた。静かで、暗くて、だけど怖くはない。
気がついた時、女の子は知らない場所に寝ていた。
白い砂のベッドの上で。
それは、どこの宇宙の、どこの惑星なのか。
――分かるのはあの惑星玉釣りのおじさんがいるというだけ。
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