望まれた家

新浜 星路

文字の大きさ
1 / 1

望まれた家

しおりを挟む
アルは目が覚めた時、知らない部屋にいた。
その時どこからともなくスピーカーで誰かが喋った。
「目覚めはどうだい、アル君」
「いいはずがない。ここはどこだ? お前がこんな事をしたのか」
「ああそうだ、出たければそこがどこか気づくことだな」
「俺が何をしたっていうんだ。俺は恨まれることなんてした覚えがないぞ」
アルはそう言うと近くにあった花瓶を足で蹴り飛ばす。
「まあまあ、そう怒らず。君だって望んでるだろ?」
「何をわけのわからないことを言っている。早くここから出してくれ」
「やだね、私も頼まれてやったことだ。好きなだけ満喫するといい、君好みの家だろうから」
そう言うとスピーカーはきれた。
「頼まれた? どういうことだ」
その後、小一時間考えても原因がわからなかった。
喉が渇いた彼は、ワインセラーに行くと驚きの声をあげた。
「どういうことだ、モーツァルトにジャックダニエルにシャトーマルゴー、俺の好きな酒ばかりじゃないか」
スピーカーからまた音声が聞こえてきた。
「気に入ってくれて幸いだよ、それは君へのプレゼントだ。もっと考えるといい」
アルは気に入ったお酒を飲まずにいられず飲みに飲む。
その時にアルは家がたまに揺れていることに気づいた。
「地震か、欠陥不動産か、さっきから軋んでるきがするぞ」
「そんな事はない。家が君を迎え入れて喜んでるんだろう、ハハハ」
「冗談はよせよ。俺に欠陥住宅のテスターをやらせてるのか?」
「冗談じゃないよ。それは息吹さ。この家の造り見覚えは?」
「ああ、最高だ。俺が思ったとおりにすべてできている。正直気持ち悪いぐらいに快適だ」
「ふふふ。そこがヒントだよ」
「まさか、俺の夢なのか、この家は?」
「ああそうだ、と言えたらよかったんだけどな」
「なあ、お前は誰なんだ?」
アルはスピーカーの相手に問う。
「この家は、ある特殊な電子で動く電気ハウスだ。そして君は……」
アルは遮る。
「おい、俺じゃないとすると……俺は怨恨も誰も愛する人すらいない……愛される事もだ。
だから勘違いじゃないのか?」
するとスピーカーの声は突然女性に変わった。
「いいえ、あなたでいいのよ」
その声は、艶っぽく悦の入った声だった。
「お、お前は誰だ?」
「私はずっと見ていたのよ。あなたのことをずっとずーっとね」
「お、おい。いい加減にしろ。俺はお前みたいなやつしらないぞ。早くここから出せ!」
「あなたをマンションの窓の外からずーっと見てたのよ」
「冗談だろ、俺が住んでるマンションは5階だぞ」
「そんなの私の愛情に比べたら大したことないわ」
スピーカーの声の主は語気を強めていうと同時に家は大きく揺れた。
アルはその声に恐怖を覚え身体が震える。
「ま、まさか……この家は……」
「そう、私そのものよ。あなたとずっと一緒にいるため、
あなたを私の中にずっといてほしいからなの。知り合いの博士に頼んで
私の脳内の電子信号をこの家に宿してもらって……。
あなたさえいれば私は身体もいらないわ。
それに内装もお酒もあなたに喜んでほしくて頑張っちゃった」
「い、いい加減にしてくれ」
「だーめ、私の意思でしか扉は開かないからね」
「う、うう」
アルは恐怖で涙が出てきた。
「喜んでもらえてよかったわ。これからずっとずっと一緒だからね。
私は永遠にあなたの住処なんだから」
しおりを挟む
感想 0

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

意味が分かると怖い話【短編集】

本田 壱好
ホラー
意味が分かると怖い話。 つまり、意味がわからなければ怖くない。 解釈は読者に委ねられる。 あなたはこの短編集をどのように読みますか?

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

いまさら謝罪など

あかね
ファンタジー
殿下。謝罪したところでもう遅いのです。

【完結】父が再婚。義母には連れ子がいて一つ下の妹になるそうですが……ちょうだい癖のある義妹に寮生活は無理なのでは?

つくも茄子
ファンタジー
父が再婚をしました。お相手は男爵夫人。 平民の我が家でいいのですか? 疑問に思うものの、よくよく聞けば、相手も再婚で、娘が一人いるとのこと。 義妹はそれは美しい少女でした。義母に似たのでしょう。父も実娘をそっちのけで義妹にメロメロです。ですが、この新しい義妹には悪癖があるようで、人の物を欲しがるのです。「お義姉様、ちょうだい!」が口癖。あまりに煩いので快く渡しています。何故かって?もうすぐ、学園での寮生活に入るからです。少しの間だけ我慢すれば済むこと。 学園では煩い家族がいない分、のびのびと過ごせていたのですが、義妹が入学してきました。 必ずしも入学しなければならない、というわけではありません。 勉強嫌いの義妹。 この学園は成績順だということを知らないのでは?思った通り、最下位クラスにいってしまった義妹。 両親に駄々をこねているようです。 私のところにも手紙を送ってくるのですから、相当です。 しかも、寮やクラスで揉め事を起こしては顰蹙を買っています。入学早々に学園中の女子を敵にまわしたのです!やりたい放題の義妹に、とうとう、ある処置を施され・・・。 なろう、カクヨム、にも公開中。

聖女を追放した国は、私が祈らなくなった理由を最後まで知りませんでした

藤原遊
ファンタジー
この国では、人の悪意や欲望、嘘が積み重なると 土地を蝕む邪気となって現れる。 それを祈りによって浄化してきたのが、聖女である私だった。 派手な奇跡は起こらない。 けれど、私が祈るたびに国は荒廃を免れてきた。 ――その役目を、誰一人として理解しないまま。 奇跡が少なくなった。 役に立たない聖女はいらない。 そう言われ、私は静かに国を追放された。 もう、祈る理由はない。 邪気を生み出す原因に目を向けず、 後始末だけを押し付ける国を守る理由も。 聖女がいなくなった国で、 少しずつ異変が起こり始める。 けれど彼らは、最後まで気づかなかった。 私がなぜ祈らなくなったのかを。

友人の結婚式で友人兄嫁がスピーチしてくれたのだけど修羅場だった

海林檎
恋愛
え·····こんな時代錯誤の家まだあったんだ····? 友人の家はまさに嫁は義実家の家政婦と言った風潮の生きた化石でガチで引いた上での修羅場展開になった話を書きます·····(((((´°ω°`*))))))

義務ですもの。

あんど もあ
ファンタジー
貴族令嬢の義務として親の決めた相手に嫁いだが、夫には愛する人がいた。夫にないがしろにされても、妻として母として嫁としての義務を果たして誠実に生きたヒロインの掴んだ、ちょっと歪んだ幸せとは。

冤罪で辺境に幽閉された第4王子

satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。 「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。 辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。

処理中です...