幻想抄

新浜 星路

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幻想抄

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私がこの星にやってきた時、そこは海と山しかなかった。
よくいえばそれは開拓のしがいがあるし、悪くいえば
手間はものすごくかかる。
でもそれはそれでいい。初めから作るという楽しさがあるからだ。
私はまず、地上に星を散りばめた。
なぜなら私は夜空を眺める事が好きだから。
地上でいつもそれを見ることができたなら、それはとてもいい事に感じる。
次に私は、重力を限りなく無くした。
それは重力という制限によって生物は自由を失っていたように感じたから。
これだけでも、世界は美しかった。
粒子が煌き、海水は分解して宙に浮くその様はとても幻想的だった。
そうだ、もっと幻想的にしよう。
私は次に水のルールを変えた。水に浮かぶものは常に月。
水という属性のものは、どんなに分解しても足しても常に月が見えるようにした。
これで世界が常に夜であったとしても水の中にある月が光を照らしてくれるだろう。
私はその世界で悠々と佇んだ。静かで、静かで、とてもいい。
だけど何か物足りない。動きが足りないんだ。
そう考えた私は、動きを作ろうと考えた。どんな動きをつけよう。
人間かな、昆虫かな、それともまた他のハチャメチャな物体かな。
そう考えると人間と昆虫を混ぜたほうがいいかな。
あ、もちろん綺麗な昆虫。
いつか前、昆虫神が言っていた蝶がいいかな。
綺麗な翅ってきっとこんな感じかな。
私はイメージしたものを実体化させる。胴体は確かこんな感じで……翅はこんな感じで夜光を浴びると
紫色に光る鱗粉がでるの。整えると、胴体は細長く、翅は蒼と……何がいいかな。
そうだ、ピンクにしよう。うん、なかなかお洒落な色になった。
その蝶は生成されると、私の頭上で生まれたことを喜ぶかのように鱗粉を撒き散らしどこかへ飛んでいった。
あの蝶はどこへいくのだろう。飛行方向や本能は決めなかったな。でもそれもいいか、蝶は蝶で自分が
やりたい事をすればいい。
蝶の次は何にしよう。可愛いものが作りたいなぁ。
他の連中は、とりあえず人間を作りたがるんだよね。
でも私はあえて、妖精にしようと思う。人間よりも小さくて、翅があって、だけど彼らよりも賢くて
それでいて彼らは宙で踊るの。
求愛行動は決まったわね。この夜空でどれだけ美しく舞えるのか。きっと、された本人は
涙で自分の翅が濡れてしまう程だわ。
あーでも、いますぐ妖精みたいな思考が優れた生物を出してしまうと、生態系がすぐ乱れてしまうわ。
これは最後にしよう。
じゃあ次は、緑を作らなきゃ。水や星が幻想的に宙を舞うのだから、緑は水から生まれるようにしよう。
水の一固まりが一定量以下に分裂した場合は、この「緑」が発生するという条件にしよう。
その緑は、後々、伸びていって茎と葉ができて花を咲かすの。
うん、とてもいいわ、我ながら名案。
私は水のルールと緑のルールを付け加えた。
ふぅ、疲れた。とりあえずここまでにして宇宙カフェにいこう。

宇宙カフェが何で出来てるか知ってる?
デブリとガスで出来てるんだ。とてもエコでしょ?
じゃあ店員さんは何かって?
勿論デブリだよねー。エコすぎるよね。
まあ、人間が捨てたゴミの量って途方もないから
何万光年離れていても漂ってきちゃうんだよね。
「マチューンさん、やっほ」
「お、テラスちゃんいらっしゃい。今日も流星スイープ割りにするの?」
「ううん、今日はコロナ割りのほうにして」
「熱辛いけど大丈夫?」
「今日はそんな気分なんだ」
「どう? 新しい惑星開発は」
「とても調子がいいよ。その惑星はねー、すべてが宙に浮くんだ。
それでいて、夜なのに星がいたるところにちらばっていて、蝶がひらひらと
光る鱗粉をまいて、水から緑がでてきてー」
「それは、とても幻想的だわねー」
「ねえねえ、どうして今日はマスター、いつもと喋り方違うの?」
「イメージチェンジってやつかしら」
「そういうのって人間はオネエ語っていうんでしょ」
「みたいね、私の古いデーターに入ってたからマネてみたのよ。
これも結構いいかんじだわ。バーのマスターはどうしてこんなかんじのが
多いのかしら」
「でも変わっていていいよね、私はなんかそのほうがカフェだなって感じがするよ」
「じゃあこの言語を固定しようかしら」
「それもいいかもね」
マチューンさんは、カクテルの容器をとりだし、しゃこしゃこという音を立てながら
流星とジュピター片を器用にシェイクする。
この動きを素早くやらないと氷が水に溶けて薄くなっちゃうんだって。
一瞬で何百往復させてるんだろ。
「はい、流星コロナ割り。なかなかいいでしょ」
そう言って、マチューンさんは、カウンターテーブルに「すすす」という音を立てながら出してきた。
色合いは、エメラルドグリーンに氷はブルーオーシャン色。見てるだけでも綺麗。
私はそれに口をつける。
口の中で、ビックバンが発生する。
「いまここにほしぼしが生まれたんじゃないかっておもうくらいだわ」
「いいね。俺もそこまで褒めてくれるとは光栄だよ」
「あれ、もう話し方変えるの?」
「やっぱりこっちのほうがあってるかなって。長くやってると愛着ってのが
沸くのかもしれない」
「ああ、なるほどねぇ」
マチューンさんはいきなり挙動不審になるや、機敏な動きで
何かのスイッチを押した。
「ごめんね、ブラックホール現象が起きるみたいだから。お店は緊急移動ね」
「はーい」
流星カフェは、彗星の移動エネルギーを使って、先ほどの場所から3光年程離れました。
「さすが、マチューンさん」
「当然だよ。これができないと俺のカフェはやっていけないからね」
なんとも頼もしい人です。私のファムファタールもいづれはこういう人を選びたい。
うんうん、と私は一人で自己完結する。
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