学園戦隊! 風林火山

貴様二太郎

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番外編3

追放された聖女さまは食べ歩きついでに世界を救う(’-’*)♪ 1

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「ひどぅい! 勝手に召喚しといて追い出すとかぁ、人としてありえなぁい!!」

 垂れ気味の大きな目を潤ませ憤慨する少女は、たった今追い出された城の門に文句を叩きつけていた。

「ふーんだ! いいもん、いいもん。そっちがその気なら、私だって好きにやらせてもらいますしぃ?」

 ゆるいパーマのかかったセンター分けのロングヘアを強気そうな仕草で後ろへ払うと、ふんと鼻息も荒く、豊かな胸をそらした。そしてスカートのポケットから生徒手帳を取り出すと、1ページ目、名前や所属学科が書いてあるページを開いた。
 
 界楽かいらく 天音あまね 16歳
 私立武田学園普通科1年
 スキル:媚薬・触手・※※※・※※※

 そこに書かれていたのは、この世界での彼女のステータス。

「何度確認しても、私のためにあるスキルだとしか思えないわ~。隠されてるとこには、どんなスキルがあるのかしら……うへ……うへへへへ」

 見た目愛人系フェロモン少女は生徒手帳を閉じると、異世界の爽やかな青空の下、うへうへとエロオヤジのような汚い笑みを浮かべた。

 ☆ ★ ☆ ★

 さて、この天音ヘンタイが異世界へと召喚されてしまった経緯だが……それを説明するには、少しばかり時間を遡る。

 日本の、とある地方都市にある、とある学園。

「ふんどしのおっさんはいやぁぁぁぁ! 女王様ぁぁぁぁぁせめて女の子でぇぇぇぇ」

 放課後――日課の自主的校内パトロールという名の女子生徒へのストーキングをしていた天音は、校内の秩序を守るために結成された自警団によって捕縛された。
 縄で縛られ、警備員のおっさんに引き渡され連行されていく天音。あわれ……ではない。完全なる自業自得。

「いやぁぁぁぁ、おっさんはいやぁぁぁぁ!」

 この変態、見た目は愛人系とはいえ美少女だというのに、中身は濁りきっていた。ちなみに彼女のポリシーは、「男はヤリ捨て、女は快楽調教」である。救えない。

「たーすけてぇぇぇぇ神様ぁぁぁぁ!!」

 泣き叫び、都合のいいときにだけ神に救いを求める子羊、もといメス豚。けれど、中には物好きな神様もいて――

「おのれ、どこへ消えた!?」

 誰もいない廊下に警備員のおっさんの声だけが響く。まるで煙のように消えてしまった天音。彼女がいた証しは、もぬけの殻になった縄だけになっていた。

 ☆ ★ ☆ ★

「ほげぇぇぇぇぇぇ!!」
「ちょっと! 人の顔みて第一声がそれって、アンタちょっと失礼すぎやしない?」

 ピンクと紫の洪水のような毒々しい空間の中、天音は1人の男と対峙していた。

「叫ぶわ! たぶん10人中8人は叫ぶわ!!」
「みんなアタシの美しさに思わず絶叫しちゃうのね」

 ピンクのきわどいベビードールを着た、ドラァグクイーンのような派手な化粧の、ボディビルダーのごとき見事な筋肉を惜しげもなくさらした男と。

「もう、なんなの! おっさんの次は化け物とか、私、かわいそうすぎない!?」
「誰が化け物だ、あぁ?」
「あんたしかいないでしょ! プリーズ、女子ぃぃぃ」
「ほんっと失礼しちゃう! せっかく助けてあげたってのに」

 化け物の言葉に天音が首をかしげる。

「そういえば、ここ、どこ?」
「アタシの神域」
「深イキ?」
「そ、神域。アタシぃ、アンタの世界とは違う世界の神様やってんだけどさぁ……ちょ~っとだけ、うちの世界が困ったことになっちゃっててねぇ」

 微妙な解釈違いはあったが、2人の会話はなんとか成り立っていた。

「でもうちにはちょうどいい人材がいなくてさぁ、困ってたのよぉ。それにアタシ、アレは直で触りたくないのよね……というわけで悪いんだけどさ、アンタに手伝ってほしいってワケ」
「え~……それ、私になんのメリットが?」
「異世界の女、食い放題」
「お引き受けいたします」

 条件も何も聞かず即答した色欲脳、界楽天音16歳。最低である。

 ☆ ★ ☆ ★

「聖女さま、どうか我らにご助力を!」
「お引き受けいたします」

 神を名乗る化け物は、どうせ断らないだろうと天音の返答を聞く前に彼女を異世界へと送りだしていた。効率第一。

「おお! さすがは救世の聖女さま!!」
「見知らぬ我らのために、しかも無理やり連れてこられたというのに……即答とは、なんと慈悲深いお方」

 魔法陣の上で立ち尽くす天音に、周囲の人々が一斉にひれ伏した。そんな人々の中から1人、赤髪の育ちの良さそうなイケメンが進み出て天音の前に跪く。

「聖女さま。どうか我らに力をお貸しください。復活した邪神からこの国……いえ、この世界を。どうかお守りください!」

 うぶな乙女ならば思わずクラっとしてしまいそうなイケメンの懇願に、しかし天音は死んだ魚のような目を向けていた。

「えぇ~……ナニコレェ。おにゃのこパラダイスって聞いてたのに、男ばっかなんですけどぉ」

 残念。変態はある年齢以上の男には興味がなかった。そして変態よ、神はそんなこと一言も言っていない。

 異世界人たちはそれはそれは大切に、天音を最上級の貴人として扱った。
 身の回りの世話は結婚前の乙女たち、教師は熟れた色気漂う未亡人から厳しいが品の良い老婦人まで、そして護身術の師匠は堅物の女騎士と、彼女の要求通りの人材を揃え、邪神を倒したあかつきには元の世界への帰還も約束して。

「聖女さま、これ以上はもう無理です。どうかお鎮まりください!」
「えぇ~……む・り!」
「では仕方ありません。このままでは国や世界の前に、我が国の女性たちの心がもちません。ですので、無理やりお呼び立てしてしまった聖女さまには大変申し訳ないのですが、お帰り願い――」
「ままま、待って待って! ナンデェ!?」

 天音のすっとぼけた反応に、赤髪のイケメン――この国の第一王子――の額に青筋が浮かんだ。

「ナンデェ!? じゃない! 貴女、うちの奉公人たちに何してくれてるんですか!! ……とか……とか、口にするのも憚られるような……」

 怒りとはまた別の理由で赤面する王子。

「みんなぁ、とぉ~ってもカワイカッタよ! うへ……うへへへへ……」

 対して天音は思い出し笑いなのか、ニヤニヤとだらしない顔をさらしていた。
 この変態、邪神に対抗する聖女とあって、あの化け物神から数々の能力を授かっていた。

 界楽かいらく 天音あまね 16歳
 私立武田学園普通科1年
 スキル:媚薬・触手・※※※・※※※

 ロクなスキルねぇ。なに考えたらこんなもんで邪神に対抗させるのかと、普通の人ならば神の頭を疑っただろう。だが残念。天音は変態だった。そしてこの世界にやって来たのも、世界を救うためなどという高尚なものでもなかった。

 異世界おにゃのこ食い放題バイキング

 それだけのために来たのだ。そんなやつが身の回りにたくさんの女性を侍らせたのならば、ヤルことは1つ……
 しかも変態におあつらえ向きなスキルまで積まれて、こいつがおとなしくなどしているはずがなかった。結果、城内の女はほぼ天音の手によって堕とされていた。そのせいで今この国は快楽堕ちした女たちが急増していて、集団女性に男性が手篭めにされるなど、エロ漫画もかくやという状態になっていた。

「聖女さま、聖女さま、どうかお戻りください!!」
「むーりー。お姉さんたちをもっとつまみ食……遊んでからじゃないと帰らない~」

 もはやこっくりさん扱いである。すっかり頬が痩けてしまってイケメン台無しな王子は涙目の懇願モードに入っていた。が、この性女、たちの悪いこっくりさんと同じで帰らない。

「くっ……できることなら穏便に済ませたかったのですが。仕方ない、やれ!」

 王子のかけ声で、彼の後ろに控えていた魔術師たちが一斉に天音へと術を行使した。

「一方的にお呼び立てしたことは本当に申し訳ありませんでした。ですが、これ以上はもう、貴女が邪神です、聖女さま!」
「やだやだ! 天音、まだ帰らない~~~」

 いくつもの魔法陣が天音を取り囲み、彼女を元の世界へ帰そうと働きかけてくる。そしてすべての魔法陣がひときわ強い光を放った瞬間――

「成功、したのか?」

 王子たちの目の前からは、先程までそこにいた性女の姿は消えていた。

 ――そして、冒頭へ戻る。

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