学園戦隊! 風林火山

貴様二太郎

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山の章

この物語はラブコメの提供でお送りします

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 文化祭も終わり、日が落ちるのもだいぶ早くなってきた晩秋ばんしゅう――11月。

「だーかーらー! 風峯かざみねの家は反対方向じゃん。毎日毎日送ってくれなくていいから!」
「彼氏たるもの、暗い道を彼女ひとりで歩かせるわけにはいかないだろう」
「とても紳士的でいい考えだと思うけど、私は彼女になった覚えはないのでお引き取りください」
「残念、返品不可だ」
「消費者センターに相談すんぞ」

 ここ最近、日課と化している私と風峯のやり取り。

「いいからほら、さっさと行くぞ」
「仕切んな! だからいいってば。そもそも寮すぐそこなんだし」
「その油断が取り返しのつかないことになるかもしれないだろ」
「私の通学路は何が潜んでんの!?」

 風峯のヤツ、何をそんなに警戒してるんだろう。うちの寮、学校から歩いて5分だよ? 人通りだって多くはないけどあるし、街灯だってちゃんとある。大きな公園を突っ切るとかもないんだから、危険なんてそうそうないと思うんだけど。
 なんて思ってたら……

「山田さん、好きです! つきあってください!!」

 電柱の影からなんか出てきた! スライディング土下座で。

「断る!!」
「ちょっ、て、おい!」

 待て。なんで風峯オマエが返事をする。

「さすが風峯くん、なんてガードの堅さ。まあいいや。で、山田さん。返事は?」

 期待に満ちたキラキラした目でこっちを見上げてきた見知らぬ男子。
 ふんわりとしたセンター分け茶髪にくっきり二重に通った鼻筋。イケメン、だと思う。思うけど。いきなり土下座で出てきて一方的に言いたいこと言って、風峯の存在を気にすることなく私の返事を求められるその鋼の精神……

「ごめんなさい」

 一択だった。ヤバい気配しかしない。この学園に入って磨かれた私の変態感知センサーがダメだって言ってる。

「それと立って。今すぐ。一刻も早く」

 そもそも通学路でスライディング土下座告白とかありえないんですけど。さっきから通行人の視線が痛すぎて心が死にそう。これ、明日にはクラスで絶対ネタにされるやつじゃん。

「そして帰れ。お前にれいはやれん」
「アンタは私の父親か」

 しっしと手を振り、心底嫌そうな顔で土下座くんを追い払う風峯。けど土下座くんはそんな風峯の嫌悪を一切気にすることなく、膝の汚れを払うと私に爽やかな笑顔を向けてきた。

「じゃあ、今日のところはこれで。俺、隣のクラスの金古かねこっていいます。これからよろしく」
「いや、よろしくしないです」
「するわけないだろう。さっさと消えろ」

 告白を断られたっていうのに、悲壮感なんて一切ないやりきったぞって笑顔で去っていった土下座イケメン――金古くん。
 これからよろしくって……嫌な予感しかしない。かっこいい男の子に告白されたっていうのに、ときめきがかけらもないんですけど。嫌なドキドキしかない。青春の甘酸っぱさってどこに落ちてるの? 私ここに来てから、ほぼ変態と変人にしか出会ってないんだけど。

「ほれ見ろ。その油断が取り返しのつかないことになっただろ」
「いや……うん、まあ」

 風峯、もしかして金古くんのこと警戒してた? 金古くん、風峯のこと知ってるみたいだったし。……もしかして同好の士、とか? 変態は変態と引き合うみたいな。あれ、違ったっけ? ま、いっか。

「さっさと帰るぞ」
「うん」

 さすがにもうあんなのはないと思うけど、ここは素直に風峯に送ってもらうことにした。
 しかし、この学校にはなんでやたら個性の強い人が多いんだろう。季節ごとに巡りあう変態のせいで、最近はうららちゃん先輩や風峯なんかは私の中で普通の人枠に入ってしまってる。あ、はやしくんは不動の変態枠です。ゆかり先輩はヤバい人枠。

 隣を歩く風峯はきっちり車道側を陣取り、小柄な私に歩く速さも合わせてくれてる。顔もいいし、頭もいいし、言動はちょっとアレなこと多々あるけど、たぶん普通なら私には手が出ない高嶺の花。

「なんだ、じっと見て。さては俺のあまりのすばらしさに惚れ直したな」
「まず惚れてないし。そもそも風峯は私が好きとかじゃなくて、私の体型が好きなんでしょ」

 そう、こんな高嶺の花が私に付きまとってる理由。それはひとえに私の体型がやつの好みど真ん中だったからだ。だからきっと、これから奇跡的に私に成長期が訪れて体型が変わったら……こいつは私に興味を失うんだと思う。

「体型も好き、だ。よく言うじゃないか、人間第一印象は胸だって」
「聞いたことないわ!! それを言うなら顔だから!」
「どっちでもいいだろ。あ、夜は出歩くなよ。じゃあ、また明日」
「出歩かないよ。優等生の私が規則破るわけないし。……送ってくれてありがとう」

 私の「ありがとう」にちょっとだけ意地の悪そうな笑顔を浮かべると、風峯はそのまま今来た道を引き返していった。


 ※ ※ ※ ※


「山田さん、おはよ――」

 さっそく校門前で待ち構えてた金古くんだったけど、おはようを言い終わる前に風峯によって回収されてった。どこへ運ばれるかわからないけど、がんばれ。

「山田さん、お昼一緒に――」

 教室の扉を元気よく開けた金古くん、またもや全部言い終わる前に風峯に回収されていった。どうやら無事だったらしい。朝と変わらない笑顔で消えていった。たとえヤバい人だったとしても、今度もいちおう無事を祈ってるね。

「あれ、隣のクラスの金古じゃなかった? 玲、アイツと知り合いだったんだ」
「あー、昨日までは全然知らなかったんだけどね」

 向かいに座って豪勢なお弁当を食べてた六花りっかの問いに言葉を濁す。けどそんな私の雰囲気で何かを察したのか、隣に座って購買部のパンをほおばってたはなちゃんと斜め向かいでかわいい手作り弁当をつついていたかなでくんがにやりと笑った。乙女おとめちゃんは我関せずで、こっちに気を取られた奏くんの隙をついてお弁当のおかずを盗み食いしてた。

つかさが関わってるってことは」
「んふ、痴情のもつれね!」

 びしっと私を指さしたふたりの顔はめちゃくちゃ得意顔で。なんかちょっと腹立つな。

「ちょっと、聞いてないわよ! なにアイツ、うちのかわいい玲に手を出そうなんて許さないわよ」
「六花さんや。あなたは私のお母さんか」

 なんかこのやり取り、つい最近もしたな。

「山ちゃん、金古アイツは気を付けた方がいいっスよ~」

 唐突に背後に現れたのは、全裸忍者こと乙女ちゃんの騎士のたまきちだった。今日も上下のピンクのアフロと肌色が目の毒なんですけど。いい加減、体育の授業以外でも服を着るということを覚えて欲しい。なんでもいいから。切実に。

「たまきち、金古くんのこと知ってんの?」
「知ってるっス。アイツ、1学期の頃は姫に付きまとってたんで」

 まさかの接点。まあ乙女ちゃんなら、かわいいからわかるけど。でもそうなると、風峯の同好の士って可能性はなくなるのか。

「え、私知らないんだけど」
「そりゃそっスよ。姫に接触する前に俺っちが排除してたんで」
「グッジョブよ、たま。アイツ、全然好みじゃないもの」
「そっスよね~。姫の好みはニッチっスもんね~」

 あ、乙女ちゃんの好みが少数派だってのはたまきちも認識してたんだ。

「で、たまちゃん。あのイケメンくんの何に気を付けなきゃなんないワケ?」
「見た感じ、ごくごく普通のちょっと押しが強そうな人にしか見えなかったけど」

 奏くんと華ちゃんが不思議そうに首をかしげる。たしかに金古くん、ここにいるメンバーに比べたら普通にしか見えないもんね。

「いやぁ、なんていうっスかねぇ……アイツ、なーんか気持ち悪いんスよ」

 あのスライディング土下座とか、たしかに普通じゃなかったもんなぁ。なんかヤバいのは私も感じた。

「俺っちは毎回瞬殺してたんで、そこまで関り深いわけじゃなかったんスけど。ただ毎回、アイツ追いかけてるとき、すっげぇ背中がゾクゾクしてたっス」
「こんな変態をゾクゾクさせるなんて……金古、モブっぽいくせにやるわね」

 六花が妙なところで感心している。しかしモブっぽいって……あんなイケメンくんをモブって言うなら、私なんてスーパーモブなんですけど。
 結局、金古くんのことについてはほとんどわからなかった。でも、あのたまきちに嫌そうな顔をさせてたってことは、たぶん金古くんもなんかあるんだろうと思う。よかった、告白断っておいて。

「で、肝心の玲ちゃんと金古の関係は? 司との三角関係?」
「やん、私のために争わないでってやつね。玲ちゃん、詳しく!」

 あ、話戻っちゃった。華ちゃんと奏くん、恋愛関係の話とか好きだもんなぁ。うーん、これは言わないと解放してもらえない感じか。それに昨日のスライディング土下座告白の噂に尾ひれが着いてみんなの耳に入るより、今ここで正直に話しちゃった方がマシか。
 そんなこんなで本日の私の昼休みは、昨日のロマンチックや青春の甘酸っぱさのかけらもない告白劇の説明で終わった。
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