少年時代の思い出

ありひこ

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前編

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けんじ「んじゃ○○くん鬼な!よっしゃ隠れろー!」

けんじに鬼と言われた〇〇くんは、わかったと素直に受け入れ数を数え始めた。
いつもはじゃんけんしていたが、なぜかその時のけんじは〇〇くんを指定していた。
〇〇くんはじゃんけんしようとも言わず、すんなり受け入れていた。

〇〇「いーち、にー、さーん、しー…」

〇〇くんは公園にある滑り台の足に顔を隠し数え始めた。
みんな急いで隠れ始める。
けんじは公園に隣接している、自治会館の下にある秘密基地。
たかしは公園から下の道へと伸びている、獣道の途中を逸れた藪の中。
そして私は、けんじが隠れている自治会館の屋根にかかっている木の、さらに隣の木の枝の中。

〇〇「もーいーかーい?」

しばらく待っても、誰からも返答はなかった。
準備が出来たという合図だ。

〇〇「よし!全員見つけるよー!」

そう言って、探し始める〇〇くん。


私達がやっていたかくれんぼは、いわば地元ルールが強かった。
公園から出てもいいが、自治会館ちょっと過ぎた辺りまでとか、獣道は下の道に出る橋まで大丈夫だったり、公園挟んで自治会館の反対側にある、大きな畑まではOKだけど、公園向かいの道はダメだったり。
地元以外の子とやると公園から出ていいとかは知らない為、よく揉めていた。
しかし○○くんはすぐ公園の外へと出た。
当時は地元の子だと思っていた為、なんの疑問も思わなかったが…。


しばらくすると、下の方から声が聞こえる。

〇〇「けんじくんみっけー!」

〇〇くんが探し始めて、すぐけんじが発見される。
私は子供ながらに、秘密基地なんて分かりやすい場所にいるからだと思う。
だがしかし…

〇〇「あ、ありひこくんもみっけー!」
私「え!?」

下を見ると、自分がいる木を登っている〇〇くんがいた。
私はその時、凄く驚いたのを覚えている。
確かに木を登って、自治会館の屋根に隠れるのは定番だった。
しかし私が登ったのはその隣の木で、崖から生えていて危なく、そもそもが登りづらいという理由で、その木をまず登る子はほとんどいなかった。
しかし枝が密集してる場所があり、周囲から見え辛く、登ってしまえば見つかる事はほぼない隠れスポットだった。
私もその場所は、上級生の地元の子に教わったばかりだった。
しかし〇〇くんは、すぐ私の事を見つけた。
しかもさっき秘密基地のけんじを発見したばかりで、もう私の下にいる。
私はいくらなんでも早過ぎると思った。

私とけんじは合流して公園に戻る。

けんじ「〇〇くん探すのうまいなー。俺はまだしも、ありひこがこんな早く見つかるなんてなー。」

私「絶対大丈夫だと思ったんだけどなー…。というか、けんじ見つけてから早過ぎない?」

けんじ「確かに。まあでも、〇〇くんて木登り得意だし、登ってみたらとかじゃない?。」

私「そうだっけ?……ん?というか、そもそも〇〇くんと遊んだことあったっけ…?」

けんじ「え?よく遊んでるじゃん。えっと、ほらこの前も……あれ?いつ遊んだっけ?」

そうこうしていると、遠くからたかしくんみっけーという声が聞こえてきた。
けんじと私はいつ遊んだか思い出せず、あれー?となっていたが、たかしがすぐ見つかったため、そちらに驚きその思考は一旦流れてしまった。

たかし「まさかこんなすぐ見つかるなんて―!くそー!」

たかしと〇〇くんは獣道から、二人で歩いて登ってきた。
〇〇くんはニコニコとしていたが、たかしは大変悔しそうだった。
どうやらたかしは普段だったら揉めそうな獣道の終わりにある、橋近くの藪に隠れていたらしい。
その辺は明確に決まってるわけではないが、あまりにもギリギリな位置だとよく揉めたりしていた。
しかし、〇〇くんは揉める必要もない早さで見つけていた。


私「〇〇くん凄っ…。今までで一番早いんじゃない?」

〇〇「そっかなー?たまたまだよー。」

〇〇くんは少し照れたように笑い、頭をかきながらそう答えた。
けんじ、たかしもその早さに驚き、凄い凄いと褒めていた。
すると〇〇くんの顔が赤くなり、ほんとたまたまだって!としっかり照れていた。

〇〇「そ…そんなことよりね!またやろ!!ね!!」

誤魔化す様に、〇〇くんは言った。

けんじ「あーそうか、今度は俺が鬼かー!」

けんじは嫌そうにそう言うと、滑り台へと向かう。
そうして、またかくれんぼが始まった。
その後数回かくれんぼをした。
〇〇くんが言ったように本当にたまたまだったのか、そこからは特別に早いという事もなく、普通のかくれんぼだった。

そして数回したかくれんぼに飽きてきた頃、四人で何するかという相談をしていた。
するとたかしが、宿題あるから帰ろっかなーという。
その一言を皮切りに、なんとなく今日はお開きになりそうな流れになっていた。
当時の担任は怖かった為、私もやらないとだめだよなーと思いその流れには賛成だった。
しかし突然、〇〇くんが真顔になりちょっといい?と言ってきた。
三人の視線が、〇〇くんへと集まる。

〇〇「みんな人食いドーベルマンの館って知ってる?」
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