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第十三話 ジルヴァイン家の栄光なる道
しおりを挟む「ようこそ、ジルヴァイン家の生贄となる諸君!」
豪華絢爛なる闘技場に、自身を高貴だと認識する人間の声が響く。
ダンジョン内でクトウを待ち構えていたのは、ランバージャック・ジルヴァインと選ばれし五人『セレクション・ファイブ』であった。
ランバージャックの思想を理解し、共鳴した五名の使用人。
茶色の髪を端正に整えたランバージャックは、下等生物に優しく話しかけるように会話を続ける。
「選別に生き残ったことは、大変喜ばしい。さて、我々の腕試しに付き合ってくれたまえ!」
ランバージャックは両手を広げ、天を仰ぐ。
ダンジョンの支配者になったことにより、ステータスとスキルが強化されたランバージャック達は、腕試しの相手を探していた。
そこに、選別に生き残った半端者が、ダンジョン内を奥まで進んできたのだ。
世界に選ばれし、ジルヴァイン家の生贄となるために。
ただの人間では、人類の域を超えたジルヴァイン家には敵わない。
「まずは、我が使用人の五名と戦ってもらおうか。もちろん、君たちに拒否権はない」
世界の全てが自分の思い通りに動くことを確信した声で、ランバージャックが指示を続ける。
「何名でもいいぞ。全員で戦うかね?」
弱者に慈悲を与える抑揚で、ランバージャックが提案をする。
傲慢ではない。
天まで震える邪悪なる魔力を、ランバージャック達全員が放出していた。
人類の敵であると、ひと目でわかる圧迫感。
「あいつらは、俺達が相手する」
白波の五人が、名乗りを上げる。
「本命はお前たちに譲るぜ」
そうして、白波の五人と、セレクション・ファイブの五人が闘技場内で相対する。
執事服を着た五人は、それぞれが身につけた革手袋を丁寧に整えると、武器を取った。
美しくも、優雅な所作。
その手に持つのは、毒々しくも鋭利な刃物たち。
ダンジョンの能力によって製作されたそれらは、通常の人間が作れる品質を超えている。
そして、ニヤリと笑うセレクション・ファイブと、白波との戦闘が開始される。
決着は一瞬だった。
勝利したのはもちろん、人外の域にはみ出した者。
白波である。
ただの力自慢の素人集団。
迎え撃ったのは、戦闘のプロであった。
「ちっ、使えぬ奴らだ」
しかし、ランバージャックは狼狽えない。
彼は、使用人たちを遥かに超える力を持っている。
下僕が死んだことなど、高貴を自称するランバージャックにとっては、どうでもよかった。
自身の身の回りの世話をさせる家来を失ったことに、少しイライラさせられる程度だ。
「前座での勝利は君たちに譲ろう。まあ、君たちが死ぬ未来は確定しているがね」
余裕を崩すことなく、ランバージャックは次のメンバーを紹介する。
「彼は最近死んだみたいなのだが。死体をダンジョンに取り込むことで、蘇生させることに成功したのだよ」
出てくるのは、黒髪黒目の男。
血走った瞳で、クトウを睨みつけている。
「それなりに強いみたいだから、ダンジョンのメンバーとして勧誘したのさ。彼が唯一の選別の合格者だ」
次に紹介されたのは、冒険者ギルドでクトウと一悶着を起こし、命を落とした彼であった。
「レオン、君の力を見せてあげなさい」
「はい。では、ランバージャック様、能力の制限を解除していただけますか? このままでは、負けてしまいます」
冒険者ギルドでクトウに見せた態度とは真逆。
丁寧な態度で、レオンはランバージャックに話しかけている。
「ジルヴァイン家に忠誠を誓えるかね?」
「永遠の忠誠を誓います」
恭しく跪き、レオンはランバージャックに永遠の忠誠を誓う。
使用人の五人を失ったばかりのランバージャックは少し考えると、レオンにかけているスキル制限を解除した。
貴族政治の世界で曲がりなりにも生存してきた今までのランバージャックなら、絶対に見せることのなかった隙。
手に入れた圧倒的な能力による全能感の中、ランバージャックはレオンのスキル制限を解除する。
歯向かってきたら殺せば良い。
腕試しとスリルを味わう軽い気持ちで。
それが、人類史の中で、最も人間の死因となった心理的理由。
スキル制限が解除された瞬間、レオンはランバージャックの首を握りしめ、一気に持ち上げてしまう。
「キキキ! これで声を出せねーよな! 強奪スキルを封印したダンジョンの力も使えねー!」
レオンに首を絞められ、宙吊りの状態で泡を吹いているランバージャック。
ステータスでは圧倒的に勝っているはずなのに、不意打ちと強奪スキルの効果に対応できていない。
そのまま、ランバージャックの体は、みるみるうちに干からびていった。
「あははは! なんだこれ! 十万人以上のスキルとステータスが強奪できたぜ!」
ゴミとなったランバージャックの遺体が、コロシアム内に投げ捨てられる。
その場に佇むのは、数十万人すらを一人で殺せるほどの戦闘能力を手に入れた男。
殺人愛好家。
「クキキキキ! さーて、復讐の時間だ! テメーをなぶり殺しにしてやるぜ!」
ダンジョン全域が、レオンの放つ魔力で揺れ、鳴いている。
その魔力波は大陸中に届き、世界を混乱させた。
強力すぎる魔力波の観測により、ダンジョンから三つ向こうの国ですら、自国内に強力な魔物が出現したと国家緊急事態宣言を発動したほどである。
新興ダンジョンの最奥にて。
人外どもが修羅の刻。
レオンの恐るべき敵対心は、全てがクトウに向かっていた。
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