馬鹿でかわいい俺だけの魔族

桃瀬わさび

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10穴があったら 【リーノ】

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目が覚めると自分の部屋にいて、今までのは全部夢でした。
――なーんてことはさすがになく、見覚えのある部屋にいた。

身体をふっかりと包み込んでいるのは、ゼノに連れ込まれたあのベッドだ。
俺ん家のやっすいベッドとは違って、雲に寝ているような心地よさ。
さんざん汚したはずのシーツは綺麗なものに変わっているし、ぐちゃぐちゃになっていた下着もさらりと乾いている。
着ていた服はどこかに消えて、びっくりするほど柔らかな寝巻きを着せられていた。

――あれからどうなって、どんくらい寝てたんだろ……?

今がいつかはわからないけど、かなり寝たような感覚がある。
ずっと寝不足で頭が痛かったのに、今は不思議とそれもない。
もしかしたら、人のベッドで朝まで爆睡しちゃったのかもしれない。

「気がついた?」
「ゼノ……? 俺、どれくらい寝てた?」
「三日」
「え、三日!?」

びっくりして飛び起きかけたけど、すぐにふらふらと身体が傾いだ。
三日も寝こけてたなら当たり前か。
そういえばお腹もぺこぺこな気がする。

俺が倒れる前に抱きとめてくれたゼノは、もしかして俺が起きるまでずっと付き添ってくれていたんだろうか?
声にはなんだか張りがないし、心なしやつれたみたいだった。

きつく抱きしめられてる今の状態じゃ、もう一度確認することはできないけど。
もう支える必要はないのに、なんでまだゼノの腕に閉じ込められてるのかもわかんないけど。

「……もう、目覚めないのかと。それほどショックだったのかと」
「えーと……?」

そういえば、ゼノにしっぽを掴まれて扱きあげられて、先っぽにキスされて気絶したんだっけ。
ちょっとしっぽをいじられただけでイッたうえに気絶したとか、どうして俺は覚えてるんだ。
仕事のことはすぐ忘れるのに、なんで余計なことは忘れないんだ。
気絶したついでに記憶喪失になりたかった。

穴があったら入りこんで悶絶したい気分だけど、別にショックで気絶したわけでも、そのせいで三日寝込んでいたわけでもない。
自分で診断名をつけるなら、ただの過労。
これにつきる。

ほとんど眠れてなかったところに、いい感じの疲労とふかふかのベッド。
俺は本能に従って、全力で惰眠をむさぼっただけだ。
ゼノが心配するようなことは何もない。

「確実に過労だから気にすんな。前にも言ったけど魔王と勇者の戦いのせいで仕事がほんっと終わんなくて、飯も睡眠も削りまくってたからもうヘロッヘロで、そんなときにあんな激し――っとと、それは置いといて。そんなことより俺、腹減ってるんだけど」
「ああ、すぐに用意させよう」
「あとついでに、いろいろ聞きたいんだけど」

ゼノに聞きたいことは、そりゃもういっぱいある。
魔王様たちはあれからどうなったとか。そもそも勇者どこ行ったとか。
なんでゼノがさっきから、城の魔族に命令を下してるんだとか。
――俺とつがっちゃって大丈夫なのか、とか。

気絶する前のことはうっすらと思い出してきたけど、いまいちわからないことが多い。
「全部ほしい」とか「俺のつがい」とか言われたし「いますぐ押さえつけてしっぽを暴いてやりたい」とか怖いことも言っていた。
これについては実行もされた。

と、いうことで、俺とゼノはもうつがい・・・になったはずなんだけど……ゼノは果たして正気だろうか?
あのときは毒も熱もないって言ってたけど、本当に正気だったんだろうか?

人間が魔族とつがいになっても、何もいいことないと思うんだけど。
しかも相手が絶世の美女ならまだしも、平凡極まりない俺だし?
エリートでもなく、強くもなく、薄給のくせに過労でひどい隈をこさえていたような俺だし?
……自分で言ってて悲しくなってきた。

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