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番外編
記念撮影 〚マティアス〛
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それを持ち出した理由は単純だった。
この男に貸しをひとつ作りたい。ただそれだけ。
いつだって余裕綽々な態度を崩さず、うっすらとした笑みを口元に浮かべた腹黒執事。
ヤツの弱点を探そうと思えば逆に負かされ、口で言い返せば逆手に取られてやり返される。
結果、全敗。そうなると、こちらも面白くはない。
意地でも何かで勝ちを見たくなってくる。
そこで、思いついたんだ。
あの腹黒が絶対に断ることを言い出して、断られたら貸し一にしよう。
そして、何かあったらそれを持ち出して相殺してやろう。
「記念写真、ですか?」
「ああ。魔術で風景を写す機械があったのを思い出してな。せっかくだから撮らないか?」
「おや、マティアス様が私の写真を欲しがるとは。珍しいこともあるものですね」
「別にお前の写真が欲しいわけでは…!い、いや、そうだ、気が向いたんだ」
危ない、危うくこいつのペースにのせられるところだったと冷や汗をかく。
ぎこちなく笑みを浮かべて何度も頷けば、ケヴィンが少しだけ瞳を細めた。
嫌な目だ。うさぎを見る獅子の目とでも言うべきか。舌なめずりしながら観察されている気がする。
「いいですよ」
「―――は?」
「いいですよ、と言ったんです。では早速準備しましょうか」
にっこり、と胡散臭く微笑まれて、背中にたらりと冷や汗が伝う。
なんで断らない!?裏社会の人間が写真なんて残していいのか!?だめだろう!
け、けど、大丈夫だ。何かあったときに危険のない提案を考えて考えて写真にしたのだし。
ここで下手に狼狽えたほうが怪しまれる。
「任せる」
そう頷いたことを後悔するとは、全く思ってもみなかった。
✢
写真を撮るなら、と衣装部屋で考え込む。
ケヴィンは黒の正装だろうから、俺も黒で揃えるべきか?
しかしそれだと絵面が真っ黒になってしまう。
だがどうせなら黒はどこかに使ったほうがそれらしいだろう。
写真を撮るのは一瞬とはいかない。微動だにせず立ったまま数分。そこで動いてしまうと仕上がった写真がブレてしまうから、楽な服装を選ぶのが通例だ。
女性の場合、コルセットを締めすぎて辛くなって動いてしまった、という失敗談もよく聞くほどだ。
「こちらにいらしたんですね。湯浴みの準備が出来ております」
「すぐ行く」
結局グレーの正装に小物で黒をあしらうことにして、それらを渡して浴場へ向かった。
さっぱりと汗を流し、身なりを手早く整える。
シャツを着て、スラックスがないことに気づいたけれどアイロンでも掛けなおしているんだろう。
先にタイをつけ、上着を羽織って、それでも来ないスラックスに焦れて部屋に向かった。
「おい、下は―――っ!?」
扉を開けた途端、羽交い締めにされて口を塞がれた。
いったいなんの悪ふざけだ、と思っている内に瀟洒な椅子に座らされ、上半身に縄が掛かる。
指先しか動かせないほどの本気の拘束に、縄の感触に、ぞくぞくとしたものが駆け抜けていく。
「……本当に、縄がお好きですね?」
「っ、うるさいっ!」
ゆるく勃ち上がった性器を軽く撫でられたと同時、下着がすっぱりと切り落とされた。
敏感なところが外気に触れて、思わずびくりと震えてしまう。
革手袋が脚にかかった。両脚を広げられ、折りたたまれ、そのまま肘掛けに固定される。
これでは、ぜんぶ、丸見えに―――そう考えると、頭にカッと血が上った。
「っ、なにをするっ!」
「何って、マティアス様が仰ったではありませんか。記念撮影がしたいと」
「――――っ、まさか……!」
まさか、こんな格好で撮るというのか?
そう思って見渡せば確かに、反射板や撮影機の準備まで済んでいる。そしてそれはもちろん、全身が写る位置に設置されている。
くつくつと笑ったケヴィンが、脇から何かを持ってきた。
鋏や剃刀、なんらかのクリームのようなもの。それから、たくさんの張り型。
この先を想像させるような小物の数々に、顔面から血の気が引くのがよくわかった。
✢
動かないでくださいね。
そんな前置きとともに、まずは鋏が当てられた。
元々少ない飾り毛がしゃきしゃきと切られていき、下腹がだんだん冷えていく。
音がする度に震えてしまうと、ケヴィンがぴんと性器を弾いた。
「クリームがなくても、蜜ですでにしとしとですね」
「っん、く、……ぅ、るさ、」
「それは失礼。ああ、そういえば張り型も忘れていましたね。マティアス様には物足りないでしょうが」
どうでしょう?と見せる張り型は、通常よりも細くはあった。
だが、その長さが只事ではない。こぶのような塊もいくつもついていて、さらには取手部分に繊細な飾りが施されている。
明らかに、挿入されたところを見る者を愉しませるつくりだ。
「―――悪趣味なヤツ」
「今日はずいぶんと可愛らしいですね。余程虐めてほしいと見える」
なんで、そうなる!?
言い返そうと開いた口から、「ひぃっ」と悲鳴が漏れた。
前触れもなく奥まで張り型が突きこまれ、そのままぴゅくぴゅくと白濁が散る。
乱雑にそれを抜き差しされて、的確にいいところを擦りあげられ、ただひたすらに悲鳴を漏らす。
やがてそれから手を離されたときには、反抗の気力は潰えていた。
温かいクリームを塗りたくられても、慎重に剃刀が当てられても、くったりと力を抜いたまま。
時折張り型をいじくられて、性器を痛いほどに握り込まれて、その都度悲鳴を上げるだけ。
「ああ、いいですね。では撮影を始めましょうか」
ケヴィンがそう言った時には、目を覆いたくなるような姿が出来上がっていた。
正装は胸元までがはだけられて、ケヴィンの印がよく見える。両方の乳首は唾液のあとでてらてらと光り、腹には自分の白濁が転々と飛ぶ。
無毛になった股間に反り返る性器は、これ以上達しないよう黒のリボンで括られて、蜜をたらたらこぼしている。
そして、本来誰にも見せないはずの蕾に至っては、太く透明な張り型で、中まで見えるように拡げられてしまっている。
―――こんな、こんな姿を、撮られたら
ぞくぞくとした快感が奔り、性器が浅ましくびくりと跳ねた。
後ろでくつくつとケヴィンが笑い、機械を遠隔で起動する。
「動かなかったら、ご褒美です」
吹き込まれた吐息に身体を震わせて、唇を噛んで性感に耐える。
長い苦悶のときの始まりだった。
この男に貸しをひとつ作りたい。ただそれだけ。
いつだって余裕綽々な態度を崩さず、うっすらとした笑みを口元に浮かべた腹黒執事。
ヤツの弱点を探そうと思えば逆に負かされ、口で言い返せば逆手に取られてやり返される。
結果、全敗。そうなると、こちらも面白くはない。
意地でも何かで勝ちを見たくなってくる。
そこで、思いついたんだ。
あの腹黒が絶対に断ることを言い出して、断られたら貸し一にしよう。
そして、何かあったらそれを持ち出して相殺してやろう。
「記念写真、ですか?」
「ああ。魔術で風景を写す機械があったのを思い出してな。せっかくだから撮らないか?」
「おや、マティアス様が私の写真を欲しがるとは。珍しいこともあるものですね」
「別にお前の写真が欲しいわけでは…!い、いや、そうだ、気が向いたんだ」
危ない、危うくこいつのペースにのせられるところだったと冷や汗をかく。
ぎこちなく笑みを浮かべて何度も頷けば、ケヴィンが少しだけ瞳を細めた。
嫌な目だ。うさぎを見る獅子の目とでも言うべきか。舌なめずりしながら観察されている気がする。
「いいですよ」
「―――は?」
「いいですよ、と言ったんです。では早速準備しましょうか」
にっこり、と胡散臭く微笑まれて、背中にたらりと冷や汗が伝う。
なんで断らない!?裏社会の人間が写真なんて残していいのか!?だめだろう!
け、けど、大丈夫だ。何かあったときに危険のない提案を考えて考えて写真にしたのだし。
ここで下手に狼狽えたほうが怪しまれる。
「任せる」
そう頷いたことを後悔するとは、全く思ってもみなかった。
✢
写真を撮るなら、と衣装部屋で考え込む。
ケヴィンは黒の正装だろうから、俺も黒で揃えるべきか?
しかしそれだと絵面が真っ黒になってしまう。
だがどうせなら黒はどこかに使ったほうがそれらしいだろう。
写真を撮るのは一瞬とはいかない。微動だにせず立ったまま数分。そこで動いてしまうと仕上がった写真がブレてしまうから、楽な服装を選ぶのが通例だ。
女性の場合、コルセットを締めすぎて辛くなって動いてしまった、という失敗談もよく聞くほどだ。
「こちらにいらしたんですね。湯浴みの準備が出来ております」
「すぐ行く」
結局グレーの正装に小物で黒をあしらうことにして、それらを渡して浴場へ向かった。
さっぱりと汗を流し、身なりを手早く整える。
シャツを着て、スラックスがないことに気づいたけれどアイロンでも掛けなおしているんだろう。
先にタイをつけ、上着を羽織って、それでも来ないスラックスに焦れて部屋に向かった。
「おい、下は―――っ!?」
扉を開けた途端、羽交い締めにされて口を塞がれた。
いったいなんの悪ふざけだ、と思っている内に瀟洒な椅子に座らされ、上半身に縄が掛かる。
指先しか動かせないほどの本気の拘束に、縄の感触に、ぞくぞくとしたものが駆け抜けていく。
「……本当に、縄がお好きですね?」
「っ、うるさいっ!」
ゆるく勃ち上がった性器を軽く撫でられたと同時、下着がすっぱりと切り落とされた。
敏感なところが外気に触れて、思わずびくりと震えてしまう。
革手袋が脚にかかった。両脚を広げられ、折りたたまれ、そのまま肘掛けに固定される。
これでは、ぜんぶ、丸見えに―――そう考えると、頭にカッと血が上った。
「っ、なにをするっ!」
「何って、マティアス様が仰ったではありませんか。記念撮影がしたいと」
「――――っ、まさか……!」
まさか、こんな格好で撮るというのか?
そう思って見渡せば確かに、反射板や撮影機の準備まで済んでいる。そしてそれはもちろん、全身が写る位置に設置されている。
くつくつと笑ったケヴィンが、脇から何かを持ってきた。
鋏や剃刀、なんらかのクリームのようなもの。それから、たくさんの張り型。
この先を想像させるような小物の数々に、顔面から血の気が引くのがよくわかった。
✢
動かないでくださいね。
そんな前置きとともに、まずは鋏が当てられた。
元々少ない飾り毛がしゃきしゃきと切られていき、下腹がだんだん冷えていく。
音がする度に震えてしまうと、ケヴィンがぴんと性器を弾いた。
「クリームがなくても、蜜ですでにしとしとですね」
「っん、く、……ぅ、るさ、」
「それは失礼。ああ、そういえば張り型も忘れていましたね。マティアス様には物足りないでしょうが」
どうでしょう?と見せる張り型は、通常よりも細くはあった。
だが、その長さが只事ではない。こぶのような塊もいくつもついていて、さらには取手部分に繊細な飾りが施されている。
明らかに、挿入されたところを見る者を愉しませるつくりだ。
「―――悪趣味なヤツ」
「今日はずいぶんと可愛らしいですね。余程虐めてほしいと見える」
なんで、そうなる!?
言い返そうと開いた口から、「ひぃっ」と悲鳴が漏れた。
前触れもなく奥まで張り型が突きこまれ、そのままぴゅくぴゅくと白濁が散る。
乱雑にそれを抜き差しされて、的確にいいところを擦りあげられ、ただひたすらに悲鳴を漏らす。
やがてそれから手を離されたときには、反抗の気力は潰えていた。
温かいクリームを塗りたくられても、慎重に剃刀が当てられても、くったりと力を抜いたまま。
時折張り型をいじくられて、性器を痛いほどに握り込まれて、その都度悲鳴を上げるだけ。
「ああ、いいですね。では撮影を始めましょうか」
ケヴィンがそう言った時には、目を覆いたくなるような姿が出来上がっていた。
正装は胸元までがはだけられて、ケヴィンの印がよく見える。両方の乳首は唾液のあとでてらてらと光り、腹には自分の白濁が転々と飛ぶ。
無毛になった股間に反り返る性器は、これ以上達しないよう黒のリボンで括られて、蜜をたらたらこぼしている。
そして、本来誰にも見せないはずの蕾に至っては、太く透明な張り型で、中まで見えるように拡げられてしまっている。
―――こんな、こんな姿を、撮られたら
ぞくぞくとした快感が奔り、性器が浅ましくびくりと跳ねた。
後ろでくつくつとケヴィンが笑い、機械を遠隔で起動する。
「動かなかったら、ご褒美です」
吹き込まれた吐息に身体を震わせて、唇を噛んで性感に耐える。
長い苦悶のときの始まりだった。
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凄い1年近くタイムラグがあって申し訳ないんですがめちゃくちゃ面白かったです!
あまりの面白さについつい何周も読んでしまい、沢山言いたいことがあるんですがまとめきれないです!
ただ一言言うなら最高でした!!
毎日、楽しみに読ませてもらっています。
丁寧な言葉遣いでSなケヴィンにドキドキです!両思いなのに「好き」って言葉が出てこない!でも、そこもいい〜(。>﹏<。)
展開が気になります!
マティアスは両思いに気づいているのかな?
応援してます📣
いつも楽しく読ませてもらっています❗
これからも頑張ってください❗❗