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番外編3
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大聖堂に響き渡る、荘厳なパイプオルガンの音色。私の目の前では、親友のレノアが、純白のウェディングドレスに身を包んで、幸せそうに微笑んでいた。
その隣に立つのは、ヴァレンティン公爵家のアンテル様。かつて「氷のようだ」と噂された彼の面影はなく、ただ愛しい人を見つめる、優しい眼差しだけがそこにあった。
「……うっ」
ダメだ。堪えようと思っても、涙が勝手に溢れてきてしまう。隣に座るご婦人が、ハンカチを差し出しながら「お気持ち、分かりますわ」と微笑んでくれた。
だって、この日をどれだけ待ち望んだことか。あの不器用で、意地っ張りで、最高に愛おしい親友が、本当の幸せを掴む瞬間を。
最初に、レノアの婚約相手がアンテル様に変更になったと聞いた時、私は正直、心配でならなかった。
「大丈夫よ、ソフィア。これは政略結婚だもの」
そう言って完璧な笑みを浮かべる彼女の横顔が、ひどく危うく見えたのを覚えている。感情を押し殺して、家のための務めを果たそうとする彼女が、いつか壊れてしまうのではないかと。
初めての夜会で、ぎこちなく踊る二人を見た時は、もう、やきもきして仕方がなかった。
(あー、もう!もっと近づいて!そこで微笑むのよ、アンテル様!)
心の中で、何度叫んだことか。けれど、遠巻きに見る二人は、なんだか不思議とお似合いだった。二人とも、不器用で、真面目で、どこか似た者同士。もしかしたら、と思った。この二人なら、うまくいくかもしれない、と。
その予感は、確信へと変わっていく。
「あなた、本当に今のままでいいの?」
私がそう問いかけるたび、彼女の瞳は揺れていた。アンテル様の話をする時の彼女は、いつもの冷静なレノアじゃない。頬を染め、戸惑い、そして、とても優しい顔をする。もう、答えは出ているようなものだった。
そして、あの日。私の部屋を訪ねてきた彼女が、初めて涙を見せた日。
「私、アンテル様のことが……好きなの」
そう言って泣きじゃくる親友を抱きしめながら、私は心の中でガッツポーズをした。
(やっと気づいたのね、このおたんこなす!)
口から出たのは、「馬鹿ね!あなたの気持ちなんて、とっくにお見通しだったわよ!」なんて、意地悪な言葉だったけれど。でも、本当に、自分のことのように嬉しかったのだ。
もちろん、恋の道は平坦ではなかった。あの夜会での、イザベラ様の策略。
取り巻きたちに囲まれ、侮辱されるレノアを見た時、私は思わず飛び出していきそうになった。けれど、できなかった。なぜなら、その時のレノアは、もう私が守る必要のないほど、強く、美しかったからだ。
「私は、アンテル様を信じています」
毅然と言い放った彼女の姿に、鳥肌が立った。ああ、この子はもう大丈夫だ。恋は、人をこんなにも強くするのだと、感動で胸が熱くなった。
そして、アンテル様の劇的な愛の告白。
彼がレノアの前に跪いた瞬間、私の涙腺は崩壊した。会場中の誰よりも早く、私は大粒の涙を流していた自信がある。周りのご婦人方に「まあ、感受性の豊かなお嬢さん」と囁かれていたけれど、そんなことはどうでもよかった。
ただ、二人が結ばれることが嬉しくて、たまらなかったのだ。
「……真心を尽くすことを誓いますか?」
「はい、誓います」
神父様の前で、力強く誓いの言葉を交わす二人。回想に浸っている間に、式はクライマックスを迎えていた。
誓いのキスを交わす二人を見て、私はもう一度、涙を拭う。
あの氷のように冷たかった公爵様が、あんなにも蕩けるような、甘い顔をするなんて。そして、いつも完璧な淑女の仮面を被っていたレノアが、少女のように無防備な顔で彼を見つめている。
本当に、恋の力ってすごいのね。
教会の扉が開かれ、まばゆい光の中に歩き出していく二人。その背中に、私は心の中で、精一杯の祝福を贈った。
レノア、本当におめでとう。
不器用なあなたを、ちゃんと見つけてくれる素敵な人が現れて、本当によかった。
世界で一番、幸せになってね。
あなたの親友より、愛を込めて。
その隣に立つのは、ヴァレンティン公爵家のアンテル様。かつて「氷のようだ」と噂された彼の面影はなく、ただ愛しい人を見つめる、優しい眼差しだけがそこにあった。
「……うっ」
ダメだ。堪えようと思っても、涙が勝手に溢れてきてしまう。隣に座るご婦人が、ハンカチを差し出しながら「お気持ち、分かりますわ」と微笑んでくれた。
だって、この日をどれだけ待ち望んだことか。あの不器用で、意地っ張りで、最高に愛おしい親友が、本当の幸せを掴む瞬間を。
最初に、レノアの婚約相手がアンテル様に変更になったと聞いた時、私は正直、心配でならなかった。
「大丈夫よ、ソフィア。これは政略結婚だもの」
そう言って完璧な笑みを浮かべる彼女の横顔が、ひどく危うく見えたのを覚えている。感情を押し殺して、家のための務めを果たそうとする彼女が、いつか壊れてしまうのではないかと。
初めての夜会で、ぎこちなく踊る二人を見た時は、もう、やきもきして仕方がなかった。
(あー、もう!もっと近づいて!そこで微笑むのよ、アンテル様!)
心の中で、何度叫んだことか。けれど、遠巻きに見る二人は、なんだか不思議とお似合いだった。二人とも、不器用で、真面目で、どこか似た者同士。もしかしたら、と思った。この二人なら、うまくいくかもしれない、と。
その予感は、確信へと変わっていく。
「あなた、本当に今のままでいいの?」
私がそう問いかけるたび、彼女の瞳は揺れていた。アンテル様の話をする時の彼女は、いつもの冷静なレノアじゃない。頬を染め、戸惑い、そして、とても優しい顔をする。もう、答えは出ているようなものだった。
そして、あの日。私の部屋を訪ねてきた彼女が、初めて涙を見せた日。
「私、アンテル様のことが……好きなの」
そう言って泣きじゃくる親友を抱きしめながら、私は心の中でガッツポーズをした。
(やっと気づいたのね、このおたんこなす!)
口から出たのは、「馬鹿ね!あなたの気持ちなんて、とっくにお見通しだったわよ!」なんて、意地悪な言葉だったけれど。でも、本当に、自分のことのように嬉しかったのだ。
もちろん、恋の道は平坦ではなかった。あの夜会での、イザベラ様の策略。
取り巻きたちに囲まれ、侮辱されるレノアを見た時、私は思わず飛び出していきそうになった。けれど、できなかった。なぜなら、その時のレノアは、もう私が守る必要のないほど、強く、美しかったからだ。
「私は、アンテル様を信じています」
毅然と言い放った彼女の姿に、鳥肌が立った。ああ、この子はもう大丈夫だ。恋は、人をこんなにも強くするのだと、感動で胸が熱くなった。
そして、アンテル様の劇的な愛の告白。
彼がレノアの前に跪いた瞬間、私の涙腺は崩壊した。会場中の誰よりも早く、私は大粒の涙を流していた自信がある。周りのご婦人方に「まあ、感受性の豊かなお嬢さん」と囁かれていたけれど、そんなことはどうでもよかった。
ただ、二人が結ばれることが嬉しくて、たまらなかったのだ。
「……真心を尽くすことを誓いますか?」
「はい、誓います」
神父様の前で、力強く誓いの言葉を交わす二人。回想に浸っている間に、式はクライマックスを迎えていた。
誓いのキスを交わす二人を見て、私はもう一度、涙を拭う。
あの氷のように冷たかった公爵様が、あんなにも蕩けるような、甘い顔をするなんて。そして、いつも完璧な淑女の仮面を被っていたレノアが、少女のように無防備な顔で彼を見つめている。
本当に、恋の力ってすごいのね。
教会の扉が開かれ、まばゆい光の中に歩き出していく二人。その背中に、私は心の中で、精一杯の祝福を贈った。
レノア、本当におめでとう。
不器用なあなたを、ちゃんと見つけてくれる素敵な人が現れて、本当によかった。
世界で一番、幸せになってね。
あなたの親友より、愛を込めて。
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