悪役令嬢の華麗なる敗北宣言!

パリパリかぷちーの

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「報告します! ランカスター王国が……とうとう『国家破産』を宣言するようです!」

翌朝の事務室。
私の元に飛び込んできたのは、そんな衝撃的(でも予想通り)なニュースだった。

「……そうですか。思ったより持ちましたね。あと三日は粘るかと思っていましたが」

私はモーニングコーヒー(ブラック)を飲みながら、淡々と新聞を広げた。

一面トップには『王国、デフォルト(債務不履行)寸前!』『レイド王子、王家の宝物庫を空にする』という見出しが躍っている。

「教官! そんなに落ち着いていていいんですか!? ご実家があるでしょう!」

「実家は先週、私の助言で『資産の海外逃避』を完了しています。父は今頃、南の島でトロピカルジュースを飲んでいるはずです」

「……相変わらず抜かりないですね」

部下が引きつった笑みを浮かべる。

「で、どうするのですか? 隣国が破綻すれば、難民が押し寄せてきます。我が国の経済にも影響が出ますが」

「そうですね。国境を封鎖し、難民キャンプの設営予算を組まなければ……」

私が電卓を叩き始めた、その時だった。

「ごめんください~! 郵便でーす!」

やけに陽気な声と共に、王国の使者が現れた。
しかし、その使者の格好がおかしい。
ピエロのような派手な衣装を着ている。

「……何ですか、その格好は。サーカス団の勧誘なら間に合っていますが」

「イエッサー! レイド王子からの『最後通牒』をお持ちしましたー! ハッピー!」

ピエロは一枚の豪奢な招待状を私のデスクに置いた。
そこには、毒々しい金文字でこう書かれていた。

『世紀の大勝負! ~愛と欲望のラスト・ギャンブル~』

「……タイトルだけで頭痛がします」

私は嫌な予感しかしなかったが、封を開けた。
中には、レイド殿下の筆跡で、震える文字が並んでいた。

***

【挑戦状】

シルビア、そして野蛮人ルーカスへ。

僕は諦めない。
国が傾こうと、国民が暴動を起こそうと、僕の愛は消えない!

そこで、最後のチャンスを提案する。

明後日の正午、国境の『中立地帯カジノ』にて、一対一の勝負を申し込む!

種目は『ポーカー』。
運と実力が試される、紳士のゲームだ。

賭けるものは以下の通り。

僕が勝ったら → シルビアの返還。および帝国の国家予算の半分を譲渡。
僕が負けたら → 王家に伝わる『伝説の秘宝・星の涙(スター・ティア)』を譲渡する。

逃げるなよ。
もし逃げれば、僕は毎日国境でマリアに歌わせる!

レイドより



「……最低の脅迫文ですね」

私は手紙を握りつぶした。

「マリア様の歌を毎日? それは国際条約で禁止されている『拷問』に該当します」

「おい、シルビア。なんだその手紙は」

そこへ、ルーカス殿下がやってきた。
手には巨大な斧を持っている(なぜ?)。

「殿下、またレイド殿下からバカな誘いが来ました。無視しましょう」

私は手紙をシュレッダーにかけようとした。

「待て。『秘宝』と言ったか?」

殿下の耳がピクリと動いた。

「はい。『星の涙』とかいう……」

「なんと! 『星の涙』だと!?」

殿下が血相を変えて食いついてきた。

「ご存じなのですか?」

「当たり前だ! それは古代魔法文明の遺産! 握り拳大の超巨大ダイヤモンドにして、無限の魔力を秘めた魔石だ! 市場価格にすれば……国家予算の十年分は下らんぞ!」

「十年分……!?」

私の目の色が変わった(金貨の形になった)。

「ほ、本当ですか? あの貧乏な王国に、そんな隠し資産が?」

「初代国王が『国が滅びる時以外は使うな』と封印していたはずだ。……まさか、あいつ、それを持ち出す気か」

「……あのバカ王子、とうとう家の柱まで売り払う気ですね」

私は素早く計算した。

帝国の予算半分(リスク) vs 国家予算十年分のダイヤ(リターン)。
期待値は圧倒的にプラスだ。

それに、ここで勝負を受けなければ、マリア嬢の騒音公害が続くことになる。

「……受けましょう、殿下」

私はキリッと言った。

「そのダイヤがあれば、帝国の下水道整備も、道路工事も、殿下の壊した壁の修理も、全部お釣りが来ます」

「やる気だな、シルビア。だが、賭けの対象はお前だぞ? 『人身売買』にならないか?」

「なりません。私が商品になるのではありません。私が『プレイヤー』として参加し、勝利をもぎ取るのです」

「ほう?」

「レイド殿下は『運と実力』と言いましたね? 甘いです。ポーカーは『確率と心理戦』です」

私は不敵に微笑んだ。

「あの単純単細胞な王子に、私の計算が破れるはずがありません。身ぐるみ剥いで、ダイヤを回収し、ついでに借用書の一枚でも書かせてやりましょう」

「ククク……恐ろしい女だ」

殿下は楽しそうに笑った。

「いいだろう。俺も付き合う。万が一、あいつがイカサマをしたら……その場で斧を叩き込んでやる」

「暴力は最終手段にしてくださいね。カジノの床が汚れますから」

私はすぐさま返信を書いた。

『挑戦、受けて立ちます。
ただし、レートの確認を。
私一人の価値と、そのダイヤが等価であるとは思い上がりも甚だしいですが……今回は特別にオマケして差し上げます。

追伸:
当日は現物(ダイヤ)を必ず持参すること。
忘れた場合は、不戦勝とし、違約金として貴方の腎臓を頂きます』

「よし、送信!」

ピエロに手紙を突き返すと、彼は「ヒェッ!」と悲鳴を上げて逃げ帰っていった。

「さて、殿下。ポーカーの特訓をしますよ」

「俺はルールを知らん。全部燃やせば勝ちか?」

「違います。まずはトランプの数字を覚えるところからです」

決戦は明後日。

場所は、国境の巨大カジノ船。

これは、愛を取り戻したい元婚約者と、金を取りたい悪役令嬢による、仁義なきギャンブル対決の幕開けだった。

「待っていなさい、レイド殿下。貴方の『運命』とやらが、私の『確率論』に勝てるものなら、勝ってみなさい」

私は万年筆をカチリと鳴らした。
その音は、銃の撃鉄を起こす音に似ていた。
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