悪役令嬢の華麗なる敗北宣言!

パリパリかぷちーの

文字の大きさ
19 / 28

19

しおりを挟む
「報告します! ランカスター王国が……とうとう『国家破産』を宣言するようです!」

翌朝の事務室。
私の元に飛び込んできたのは、そんな衝撃的(でも予想通り)なニュースだった。

「……そうですか。思ったより持ちましたね。あと三日は粘るかと思っていましたが」

私はモーニングコーヒー(ブラック)を飲みながら、淡々と新聞を広げた。

一面トップには『王国、デフォルト(債務不履行)寸前!』『レイド王子、王家の宝物庫を空にする』という見出しが躍っている。

「教官! そんなに落ち着いていていいんですか!? ご実家があるでしょう!」

「実家は先週、私の助言で『資産の海外逃避』を完了しています。父は今頃、南の島でトロピカルジュースを飲んでいるはずです」

「……相変わらず抜かりないですね」

部下が引きつった笑みを浮かべる。

「で、どうするのですか? 隣国が破綻すれば、難民が押し寄せてきます。我が国の経済にも影響が出ますが」

「そうですね。国境を封鎖し、難民キャンプの設営予算を組まなければ……」

私が電卓を叩き始めた、その時だった。

「ごめんください~! 郵便でーす!」

やけに陽気な声と共に、王国の使者が現れた。
しかし、その使者の格好がおかしい。
ピエロのような派手な衣装を着ている。

「……何ですか、その格好は。サーカス団の勧誘なら間に合っていますが」

「イエッサー! レイド王子からの『最後通牒』をお持ちしましたー! ハッピー!」

ピエロは一枚の豪奢な招待状を私のデスクに置いた。
そこには、毒々しい金文字でこう書かれていた。

『世紀の大勝負! ~愛と欲望のラスト・ギャンブル~』

「……タイトルだけで頭痛がします」

私は嫌な予感しかしなかったが、封を開けた。
中には、レイド殿下の筆跡で、震える文字が並んでいた。

***

【挑戦状】

シルビア、そして野蛮人ルーカスへ。

僕は諦めない。
国が傾こうと、国民が暴動を起こそうと、僕の愛は消えない!

そこで、最後のチャンスを提案する。

明後日の正午、国境の『中立地帯カジノ』にて、一対一の勝負を申し込む!

種目は『ポーカー』。
運と実力が試される、紳士のゲームだ。

賭けるものは以下の通り。

僕が勝ったら → シルビアの返還。および帝国の国家予算の半分を譲渡。
僕が負けたら → 王家に伝わる『伝説の秘宝・星の涙(スター・ティア)』を譲渡する。

逃げるなよ。
もし逃げれば、僕は毎日国境でマリアに歌わせる!

レイドより



「……最低の脅迫文ですね」

私は手紙を握りつぶした。

「マリア様の歌を毎日? それは国際条約で禁止されている『拷問』に該当します」

「おい、シルビア。なんだその手紙は」

そこへ、ルーカス殿下がやってきた。
手には巨大な斧を持っている(なぜ?)。

「殿下、またレイド殿下からバカな誘いが来ました。無視しましょう」

私は手紙をシュレッダーにかけようとした。

「待て。『秘宝』と言ったか?」

殿下の耳がピクリと動いた。

「はい。『星の涙』とかいう……」

「なんと! 『星の涙』だと!?」

殿下が血相を変えて食いついてきた。

「ご存じなのですか?」

「当たり前だ! それは古代魔法文明の遺産! 握り拳大の超巨大ダイヤモンドにして、無限の魔力を秘めた魔石だ! 市場価格にすれば……国家予算の十年分は下らんぞ!」

「十年分……!?」

私の目の色が変わった(金貨の形になった)。

「ほ、本当ですか? あの貧乏な王国に、そんな隠し資産が?」

「初代国王が『国が滅びる時以外は使うな』と封印していたはずだ。……まさか、あいつ、それを持ち出す気か」

「……あのバカ王子、とうとう家の柱まで売り払う気ですね」

私は素早く計算した。

帝国の予算半分(リスク) vs 国家予算十年分のダイヤ(リターン)。
期待値は圧倒的にプラスだ。

それに、ここで勝負を受けなければ、マリア嬢の騒音公害が続くことになる。

「……受けましょう、殿下」

私はキリッと言った。

「そのダイヤがあれば、帝国の下水道整備も、道路工事も、殿下の壊した壁の修理も、全部お釣りが来ます」

「やる気だな、シルビア。だが、賭けの対象はお前だぞ? 『人身売買』にならないか?」

「なりません。私が商品になるのではありません。私が『プレイヤー』として参加し、勝利をもぎ取るのです」

「ほう?」

「レイド殿下は『運と実力』と言いましたね? 甘いです。ポーカーは『確率と心理戦』です」

私は不敵に微笑んだ。

「あの単純単細胞な王子に、私の計算が破れるはずがありません。身ぐるみ剥いで、ダイヤを回収し、ついでに借用書の一枚でも書かせてやりましょう」

「ククク……恐ろしい女だ」

殿下は楽しそうに笑った。

「いいだろう。俺も付き合う。万が一、あいつがイカサマをしたら……その場で斧を叩き込んでやる」

「暴力は最終手段にしてくださいね。カジノの床が汚れますから」

私はすぐさま返信を書いた。

『挑戦、受けて立ちます。
ただし、レートの確認を。
私一人の価値と、そのダイヤが等価であるとは思い上がりも甚だしいですが……今回は特別にオマケして差し上げます。

追伸:
当日は現物(ダイヤ)を必ず持参すること。
忘れた場合は、不戦勝とし、違約金として貴方の腎臓を頂きます』

「よし、送信!」

ピエロに手紙を突き返すと、彼は「ヒェッ!」と悲鳴を上げて逃げ帰っていった。

「さて、殿下。ポーカーの特訓をしますよ」

「俺はルールを知らん。全部燃やせば勝ちか?」

「違います。まずはトランプの数字を覚えるところからです」

決戦は明後日。

場所は、国境の巨大カジノ船。

これは、愛を取り戻したい元婚約者と、金を取りたい悪役令嬢による、仁義なきギャンブル対決の幕開けだった。

「待っていなさい、レイド殿下。貴方の『運命』とやらが、私の『確率論』に勝てるものなら、勝ってみなさい」

私は万年筆をカチリと鳴らした。
その音は、銃の撃鉄を起こす音に似ていた。
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

処刑された悪役令嬢、二周目は「ぼっち」を卒業して最強チームを作ります!

みかぼう。
恋愛
地方を救おうとして『反逆者』に仕立て上げられ、断頭台で散ったエリアナ・ヴァルドレイン。 彼女の失敗は、有能すぎるがゆえに「独りで背負いすぎたこと」だった。 ループから始まった二周目。 彼女はこれまで周囲との間に引いていた「線」を、踏み越えることを決意した。 「お父様、私に『線を引け』と教えた貴方に、処刑台から見た真実をお話しします」 「殿下、私が貴方の『目』となります。王国に張り巡らされた謀略の糸を、共に断ち切りましょう」 淑女の仮面を脱ぎ捨て、父と王太子を「共闘者」へと変貌させる政争の道。 未来知識という『目』を使い、一歩ずつ確実に、破滅への先手を取っていく。 これは、独りで戦い、独りで死んだ令嬢が、信頼と連帯によって王国の未来を塗り替える――緻密かつ大胆なリベンジ政争劇。 「私を神輿にするのなら、覚悟してくださいませ。……その行き先は、貴方の破滅ですわ」 (※カクヨムにも掲載中です。)

「君は完璧だから、放っておいても大丈夫」と笑った夫。~王宮から私が去ったあと「愛していた」と泣きついても、もう手遅れです~

水上
恋愛
「君は完璧だから、放っておいても大丈夫だ」 夫である王太子はそう笑い、泣き真似が得意な見習い令嬢ばかりを優先した。 王太子妃セシリアは、怒り狂うこともなく、静かに心を閉ざす。 「左様でございますか」 彼女は夫への期待というノイズを遮断し、離縁の準備を始めた。

【完結】婚約破棄された令嬢の毒はいかがでしょうか

まさかの
恋愛
皇太子の未来の王妃だったカナリアは突如として、父親の罪によって婚約破棄をされてしまった。 己の命が助かる方法は、友好国の悪評のある第二王子と婚約すること。 カナリアはその提案をのんだが、最初の夜会で毒を盛られてしまった。 誰も味方がいない状況で心がすり減っていくが、婚約者のシリウスだけは他の者たちとは違った。 ある時、シリウスの悪評の原因に気付いたカナリアの手でシリウスは穏やかな性格を取り戻したのだった。 シリウスはカナリアへ愛を囁き、カナリアもまた少しずつ彼の愛を受け入れていく。 そんな時に、義姉のヒルダがカナリアへ多くの嫌がらせを行い、女の戦いが始まる。 嫁いできただけの女と甘く見ている者たちに分からせよう。 カナリア・ノートメアシュトラーセがどんな女かを──。 小説家になろう、エブリスタ、アルファポリス、カクヨムで投稿しています。

とある令嬢の優雅な別れ方 〜婚約破棄されたので、笑顔で地獄へお送りいたします〜

入多麗夜
恋愛
【完結まで執筆済!】 社交界を賑わせた婚約披露の茶会。 令嬢セリーヌ・リュミエールは、婚約者から突きつけられる。 「真実の愛を見つけたんだ」 それは、信じた誠実も、築いてきた未来も踏みにじる裏切りだった。だが、彼女は微笑んだ。 愛よりも冷たく、そして美しく。 笑顔で地獄へお送りいたします――

10年間の結婚生活を忘れました ~ドーラとレクス~

緑谷めい
恋愛
 ドーラは金で買われたも同然の妻だった――  レクスとの結婚が決まった際「ドーラ、すまない。本当にすまない。不甲斐ない父を許せとは言わん。だが、我が家を助けると思ってゼーマン伯爵家に嫁いでくれ。頼む。この通りだ」と自分に頭を下げた実父の姿を見て、ドーラは自分の人生を諦めた。齢17歳にしてだ。 ※ 全10話完結予定

婚約破棄されましたが、私はもう必要ありませんので

ふわふわ
恋愛
「婚約破棄? ……そうですか。では、私の役目は終わりですね」 王太子ロイド・ヴァルシュタインの婚約者として、 国と王宮を“滞りなく回す存在”であり続けてきた令嬢 マルグリット・フォン・ルーヴェン。 感情を表に出さず、 功績を誇らず、 ただ淡々と、最善だけを積み重ねてきた彼女に突きつけられたのは―― 偽りの奇跡を振りかざす“聖女”による、突然の婚約破棄だった。 だが、マルグリットは嘆かない。 怒りもしない。 復讐すら、望まない。 彼女が選んだのは、 すべてを「仕組み」と「基準」に引き渡し、静かに前線から降りること。 彼女がいなくなっても、領地は回る。 判断は滞らず、人々は困らない。 それこそが、彼女が築いた“完成形”だった。 一方で、 彼女を切り捨てた王太子と偽聖女は、 「彼女がいない世界」で初めて、自分たちの無力さと向き合うことになる。 ――必要とされない価値。 ――前に出ない強さ。 ――名前を呼ばれない完成。 これは、 騒がず、縋らず、静かに去った令嬢が、 最後にすべてを置き去りにして手に入れる“自由”の物語。 ざまぁは静かに、 恋は後半に、 そして物語は、凛と終わる。 アルファポリス女子読者向け 「大人の婚約破棄ざまぁ恋愛」、ここに完結。

【完結】断頭台で処刑された悪役王妃の生き直し

有栖多于佳
恋愛
近代ヨーロッパの、ようなある大陸のある帝国王女の物語。 30才で断頭台にかけられた王妃が、次の瞬間3才の自分に戻った。 1度目の世界では盲目的に母を立派な女帝だと思っていたが、よくよく思い起こせば、兄妹間で格差をつけて、お気に入りの子だけ依怙贔屓する毒親だと気づいた。 だいたい帝国は男子継承と決まっていたのをねじ曲げて強欲にも女帝になり、初恋の父との恋も成就させた結果、継承戦争起こし帝国は二つに割ってしまう。王配になった父は人の良いだけで頼りなく、全く人を見る目のないので軍の幹部に登用した者は役に立たない。 そんな両親と早い段階で決別し今度こそ幸せな人生を過ごすのだと、決意を胸に生き直すマリアンナ。 史実に良く似た出来事もあるかもしれませんが、この物語はフィクションです。 世界史の人物と同名が出てきますが、別人です。 全くのフィクションですので、歴史考察はありません。 *あくまでも異世界ヒューマンドラマであり、恋愛あり、残業ありの娯楽小説です。

【完】出来損ない令嬢は、双子の娘を持つ公爵様と契約結婚する~いつの間にか公爵様と7歳のかわいい双子たちに、めいっぱい溺愛されていました~

夏芽空
恋愛
子爵令嬢のエレナは、常に優秀な妹と比較され家族からひどい扱いを受けてきた。 しかし彼女は7歳の双子の娘を持つ公爵――ジオルトと契約結婚したことで、最低な家族の元を離れることができた。 しかも、条件は最高。公の場で妻を演じる以外は自由に過ごしていい上に、さらには給料までも出してくてれるという。 夢のような生活を手に入れた――と、思ったのもつかの間。 いきなり事件が発生してしまう。 結婚したその翌日に、双子の姉が令嬢教育の教育係をやめさせてしまった。 しかもジオルトは仕事で出かけていて、帰ってくるのはなんと一週間後だ。 (こうなったら、私がなんとかするしかないわ!) 腹をくくったエレナは、おもいきった行動を起こす。 それがきっかけとなり、ちょっと癖のある美少女双子義娘と、彼女たちよりもさらに癖の強いジオルトとの距離が縮まっていくのだった――。

処理中です...