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「……はぁ。なんて素晴らしい光景なのかしら」
私は宰相執務室の窓辺で、優雅に紅茶を啜りながら、扇の陰でニヤニヤしていた。
執務室は王城の中でも高い位置にあり、窓からは中庭が一望できる。
そしてその中庭では今、エリック殿下とルーカス様が、汗だくになりながら騎士団の合同訓練を行っているのだ。
(ああ、見て。あの殿下の熱い眼差し! ルーカス様が少しでも危険な動きをすると、すぐに飛び出して庇おうとする! これは『無意識下の独占欲』! そしてルーカス様は、それを承知で殿下の背中を預けるという、絶対的な『信頼の証』!)
「訓練中の激しい視線プレイ……いいわ。この緊張感、最高に熟れてるわ!」
私は手のひらサイズのメモ帳に、今日の妄想ポイントをサラサラと書きつけていく。
まさか、婚約破棄された後の人生が、こんなにも推し活特等席に恵まれるとは。キース閣下には感謝しかない。
「アイビー」
背後から、冷蔵庫のような冷たい声がした。
「はい、閣下!」
私はハッと背筋を伸ばし、慌ててメモ帳をポケットに隠した。
キース閣下は巨大な執務机の前に座り、眉間に皺を寄せながら書類の山と格闘している。
「一時間ほど、王太子の動向を観察させていたが、何か特筆すべき『異常な関係性』は見つかったか?」
「え、異常な関係性……」
(異常な関係性しかないけど、それをそのまま報告したら地下牢行きね)
私は頭をフル回転させ、妄想を「諜報活動の報告」という名のオブラートで包んだ。
「恐れながら報告いたします、閣下。観察結果、殿下のルーカス様への『精神的依存度の高まり』が確認されました」
「ほう?」
閣下が眼鏡越しに私を鋭く見つめる。
「具体的に説明しろ」
「はい。先程の訓練中、殿下は他の騎士との模擬戦では余裕を見せていましたが、ルーカス様との組手になった途端、『無防備な背中』を晒す頻度が増しました」
私は扇子で口元を隠し、続けた。
「これは、殿下が『私の背中は騎士が守ってくれる』と、主従愛を超えた『絶対的な信頼』を置いている証拠です。同時に、騎士様もまた、その『無意識下の庇護欲』を満たすことで、殿下への『無言の契約』を成立させているものと分析されます」
「無言の契約……」
閣下は顎に手を当て、深く考え込むような仕草をした。
(よし、分かったフリしてる! 「依存」「契約」という言葉が、宰相の琴線に触れたのね!)
「つまり、彼らの間の結束は、一般的な主従関係の範疇を超え、国の未来にとって予測不能な……」
「盤石、ということか」
閣下が私の言葉を遮った。
「結束の強固さは良い。しかし、『無防備な背中』か。……エリックは昔から詰めが甘いと思っていたが。お前のその『危機管理能力』、評価する」
「あ、ありがとうございます!」
(危機管理能力じゃない、萌え管理能力です!)
「引き続き、その『異常なまでの洞察力』で、王太子の心の隙を洗い出せ。国の安全は、お前の能力にかかっている」
「へへーっ! お任せください!」
私は胸を張って答えた。こんなに推し活を褒められたのは初めてだ。
その時、執務室のドアが控えめにノックされた。
「兄上、いるかい? 少し相談が……」
エリック殿下が入室してきた。
彼は書類を持っていたが、アイビーの姿を認めると動きが止まった。
「アイビー!? 君、なぜ兄上の執務室に?」
「私は閣下の新しい補佐官になりましたの、殿下」
「補佐官? へえ。……兄上、アイビーの趣味が移ったの? 面白い人を囲い込むのは」
「何を馬鹿なことを」
キース閣下は即座に否定した。
「彼女は私の部下だ。貴様のような生ぬるい男に、才能を無駄にさせるわけにはいかん」
「……生ぬるい、か」
殿下は少し不満そうな顔をしたが、すぐに笑顔に戻った。
「まあいいや。でもアイビーがいるなら丁度いい。僕の新しい休日の過ごし方について、君の『斬新なアイデア』を聞かせてくれないか?」
「お任せを! ルーカス様と二人きりでできる、心ときめく過ごし方を……」
私が前のめりになった瞬間、キース閣下の手が、私の頭を押さえつけた。
「静かにしろ、補佐官。貴様は私のもとで、公務に徹するのだ」
殿下とミシェル嬢の間に挟まれ、そして今、キース閣下の手の中にいる。
(ああ……私をめぐる三つ巴の戦い! これも尊い!)
私は脳内で激しく興奮したが、体はキース閣下に押さえつけられたままだ。
「……話は以上だ、エリック。相談は後だ」
キース閣下は殿下を追い払い、ドアが閉まる音を確認してから、私から手を離した。
「まったく。王太子の軽率な接触にいちいち動揺するな。貴様は私の命令にのみ従え」
「承知いたしました」
私は平静を装ったが、頭上から降ってきた閣下の体温と匂いに、内心ドキドキが止まらなかった。
「さて、アイビー。早速だが、次の任務だ」
閣下は一枚の書類を私に差し出した。
「来週、王族は避暑地で一週間の休暇に入る。エリックはルーカスを伴うだろう。貴様も同行しろ」
「避暑地……!?」
私は目を見開いた。
水着!海!夜の砂浜!
「そこで、王太子の行動を『徹底的に分析』し、報告書を提出せよ。これは私の個人的な命令だ」
閣下の瞳が、私を射抜く。
「……拒否権はない。貴様は私の『お気に入り』の部下になったのだからな」
「喜んで!」
私は即座に返事をした。
(このイベントは、推しカプ観察における最大のビッグイベント!)
「閣下……! この任務、命に代えても成功させます!」
私は熱意を持って宣言し、妄想に意識を奪われるのだった。
私は宰相執務室の窓辺で、優雅に紅茶を啜りながら、扇の陰でニヤニヤしていた。
執務室は王城の中でも高い位置にあり、窓からは中庭が一望できる。
そしてその中庭では今、エリック殿下とルーカス様が、汗だくになりながら騎士団の合同訓練を行っているのだ。
(ああ、見て。あの殿下の熱い眼差し! ルーカス様が少しでも危険な動きをすると、すぐに飛び出して庇おうとする! これは『無意識下の独占欲』! そしてルーカス様は、それを承知で殿下の背中を預けるという、絶対的な『信頼の証』!)
「訓練中の激しい視線プレイ……いいわ。この緊張感、最高に熟れてるわ!」
私は手のひらサイズのメモ帳に、今日の妄想ポイントをサラサラと書きつけていく。
まさか、婚約破棄された後の人生が、こんなにも推し活特等席に恵まれるとは。キース閣下には感謝しかない。
「アイビー」
背後から、冷蔵庫のような冷たい声がした。
「はい、閣下!」
私はハッと背筋を伸ばし、慌ててメモ帳をポケットに隠した。
キース閣下は巨大な執務机の前に座り、眉間に皺を寄せながら書類の山と格闘している。
「一時間ほど、王太子の動向を観察させていたが、何か特筆すべき『異常な関係性』は見つかったか?」
「え、異常な関係性……」
(異常な関係性しかないけど、それをそのまま報告したら地下牢行きね)
私は頭をフル回転させ、妄想を「諜報活動の報告」という名のオブラートで包んだ。
「恐れながら報告いたします、閣下。観察結果、殿下のルーカス様への『精神的依存度の高まり』が確認されました」
「ほう?」
閣下が眼鏡越しに私を鋭く見つめる。
「具体的に説明しろ」
「はい。先程の訓練中、殿下は他の騎士との模擬戦では余裕を見せていましたが、ルーカス様との組手になった途端、『無防備な背中』を晒す頻度が増しました」
私は扇子で口元を隠し、続けた。
「これは、殿下が『私の背中は騎士が守ってくれる』と、主従愛を超えた『絶対的な信頼』を置いている証拠です。同時に、騎士様もまた、その『無意識下の庇護欲』を満たすことで、殿下への『無言の契約』を成立させているものと分析されます」
「無言の契約……」
閣下は顎に手を当て、深く考え込むような仕草をした。
(よし、分かったフリしてる! 「依存」「契約」という言葉が、宰相の琴線に触れたのね!)
「つまり、彼らの間の結束は、一般的な主従関係の範疇を超え、国の未来にとって予測不能な……」
「盤石、ということか」
閣下が私の言葉を遮った。
「結束の強固さは良い。しかし、『無防備な背中』か。……エリックは昔から詰めが甘いと思っていたが。お前のその『危機管理能力』、評価する」
「あ、ありがとうございます!」
(危機管理能力じゃない、萌え管理能力です!)
「引き続き、その『異常なまでの洞察力』で、王太子の心の隙を洗い出せ。国の安全は、お前の能力にかかっている」
「へへーっ! お任せください!」
私は胸を張って答えた。こんなに推し活を褒められたのは初めてだ。
その時、執務室のドアが控えめにノックされた。
「兄上、いるかい? 少し相談が……」
エリック殿下が入室してきた。
彼は書類を持っていたが、アイビーの姿を認めると動きが止まった。
「アイビー!? 君、なぜ兄上の執務室に?」
「私は閣下の新しい補佐官になりましたの、殿下」
「補佐官? へえ。……兄上、アイビーの趣味が移ったの? 面白い人を囲い込むのは」
「何を馬鹿なことを」
キース閣下は即座に否定した。
「彼女は私の部下だ。貴様のような生ぬるい男に、才能を無駄にさせるわけにはいかん」
「……生ぬるい、か」
殿下は少し不満そうな顔をしたが、すぐに笑顔に戻った。
「まあいいや。でもアイビーがいるなら丁度いい。僕の新しい休日の過ごし方について、君の『斬新なアイデア』を聞かせてくれないか?」
「お任せを! ルーカス様と二人きりでできる、心ときめく過ごし方を……」
私が前のめりになった瞬間、キース閣下の手が、私の頭を押さえつけた。
「静かにしろ、補佐官。貴様は私のもとで、公務に徹するのだ」
殿下とミシェル嬢の間に挟まれ、そして今、キース閣下の手の中にいる。
(ああ……私をめぐる三つ巴の戦い! これも尊い!)
私は脳内で激しく興奮したが、体はキース閣下に押さえつけられたままだ。
「……話は以上だ、エリック。相談は後だ」
キース閣下は殿下を追い払い、ドアが閉まる音を確認してから、私から手を離した。
「まったく。王太子の軽率な接触にいちいち動揺するな。貴様は私の命令にのみ従え」
「承知いたしました」
私は平静を装ったが、頭上から降ってきた閣下の体温と匂いに、内心ドキドキが止まらなかった。
「さて、アイビー。早速だが、次の任務だ」
閣下は一枚の書類を私に差し出した。
「来週、王族は避暑地で一週間の休暇に入る。エリックはルーカスを伴うだろう。貴様も同行しろ」
「避暑地……!?」
私は目を見開いた。
水着!海!夜の砂浜!
「そこで、王太子の行動を『徹底的に分析』し、報告書を提出せよ。これは私の個人的な命令だ」
閣下の瞳が、私を射抜く。
「……拒否権はない。貴様は私の『お気に入り』の部下になったのだからな」
「喜んで!」
私は即座に返事をした。
(このイベントは、推しカプ観察における最大のビッグイベント!)
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私は熱意を持って宣言し、妄想に意識を奪われるのだった。
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