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工房に差し込む午後の日差しは、穏やかで、満ち足りていた。フィアは、クラウスが持ってきてくれた新しい茶葉を淹れ、二人でテラスの椅子に腰掛けていた。リナが引き起こした肌荒れ騒動も、フィアの軟膏によって完全に沈静化し、王宮には平穏が戻っていた。
「それにしても、見事な手際だった」
クラウスが、心からの賞賛を込めて言う。
「君の薬がなければ、騒ぎはもっと長引いていただろう。王宮の者たちも、皆感謝していた」
「いいえ。わたくしは、ただ目の前にあった問題を解決しただけですわ。それに、貴重な臨床データも得られましたし」
フィアははにかむように微笑んだ。この穏やかで、知的な探求心に満ちた時間が、二人にとっては何よりも代えがたいものになりつつあった。
その、平和な空気を乱暴に引き裂くように、それは突然やってきた。
「フィア! フィア・ランチェスターはいるか!」
尊大な、そして聞き覚えのある声。次いで、許可もなく工房の扉が乱暴に開け放たれた。そこに立っていたのは、フィアの元婚約者、エリアス第二王子その人だった。
「エリアス殿下……」
フィアは驚きに目を見開く。その隣で、クラウスは即座に立ち上がり、まるで盾になるかのように、フィアの前に一歩足を踏み出した。その氷色の瞳には、あからさまな警戒と敵意が宿っている。
「何の御用でしょうか。このような場所に、王子自らお越しになるとは」
クラウスの低い声には、明確な非難が込められていた。しかし、エリアスはそんなクラウスのことなど意にも介さず、侮蔑するような視線をフィアに注いだ。
「ふん。久しぶりだな、フィア。領地に引きこもって、みすぼらしい趣味に没頭していると聞いていたが、思ったよりは元気そうで何よりだ」
その恩着せがましい物言いに、フィアはただ黙って、この男が何を言いに来たのかを見極めようとしていた。
「君の噂は、私の耳にも入っている。噴水の一件、侍女たちの肌荒れ……。なかなか、面白い余興を楽しんでいるようではないか」
エリアスは、さも寛大な主君が、家臣の働きを褒めてやる、というかのような口ぶりで言った。そして、彼は信じられないような言葉を続けたのだ。
「それで、だ。私も、君のそのささやかな活動を、少しばかり支援してやろうと思ってな」
「……支援、ですって?」
フィアが訝しげに聞き返すと、エリアスは尊大に胸を張った。
「そうだ。私が、君の魔法薬作りの、公式な後援者となってやろう、と言っているのだ。考えてもみろ。そもそも、君がこうして自由に趣味に打ち込めるのは、誰のおかげだ? この私が、君との婚約を破棄して、自由の身にしてやったからではないか」
あまりにも身勝手な、捻じ曲げられた論理。フィアもクラウスも、呆れて言葉が出ない。
「つまり、君の功績は、ある意味では私の功績でもある、ということだ。私が君に与えた自由という土壌があってこそ、咲いた花なのだからな。どうだ、光栄だろう?」
エリアスは、心底そう信じ込んでいるようだった。自分の評判を落とすフィアの活躍を、自分の手柄として上書きしてしまえばいい。そうすれば、失墜した自分とリナの名誉も回復できる。そんな、浅はかな考えが透けて見えた。
「ついては、君が作った薬は、王家の紋章を付けて、私の名で売り出すことにしよう。もちろん、君の働きには、相応の褒美をやらんこともないぞ」
そこまで聞いた時、それまで沈黙を守っていたクラウスの堪忍袋の緒が、ついに切れた。
「―――殿下」
地を這うような低い声。それは、戦場で敵を威圧する時の、氷の騎士団長の声だった。
「……それは、詭弁というものです。フィア嬢の功績は、全て彼女自身の類まれなる才能と、血の滲むような努力の賜物。あなたの『許可』などという、存在しないもののおかげでは断じてない」
「なっ……! クラウス! 貴様、王子である私に意見する気か! これは、私と、私の『元』婚約者との間の話だ! 貴様が口を挟むことではない!」
エリアスが激昂して叫ぶ。しかし、クラウスは一歩も引かなかった。
その時、二人の間に、凛としたフィアの声が響いた。
「おやめください、クラウス様」
彼女は静かに立ち上がると、エリアスの前に進み出た。その瞳は、怒りでも、悲しみでもなく、ただ、ひたすらに冷静な光を宿していた。
「エリアス殿下。申し上げます」
フィアは、完璧なカーテシーを一つしてみせると、はっきりと告げた。
「殿下の『許可』など、わたくしは一度も求めたことはございませんし、必要としたこともございません。婚約の解消は、殿下がわたくしにくださった『自由』などではなく、わたくしが望む生き方をする上での『障害』が、一つ取り除かれたというだけのこと」
あまりにも直接的な、容赦のない言葉。エリアスの顔が、みるみるうちに引きつっていく。
「わたくしの研究と、あなたがたは、一切無関係です。後援など、迷惑千万。金輪際、わたくしの作るものに、あなた方の名前を重ねようなどとは、お考えになりませんように」
それは、反論の余地すら与えない、完璧な拒絶だった。
エリアスは、わなわなと唇を震わせ、顔を真っ赤に染め上げた。自分がコントロールできるはずの、惨めな捨て駒だと思っていた女に、満場の前で、完膚なきまでに論破され、プライドをずたずたに引き裂かれたのだ。
「き……貴様ぁっ!」
何かを叫ぼうとしたが、クラントとフィアの、二人分の冷え切った視線に射抜かれ、彼は言葉を失う。
「……覚えていろ!」
それだけを絞り出すのが精一杯だった。エリアスは、憎悪に満ちた目で二人を睨みつけると、乱暴に踵を返し、嵐のように去っていった。
後に残されたのは、気まずい沈黙と、ハーブティーの冷たい香り。
フィアは、ほう、と一つため息をついた。
「……これで、敵対は決定的になりましたわね」
その呟きは、しかし、不思議と晴れやかな響きを持っていた。隣に立つ、頼もしい騎士の存在を感じながら、フィアは、これから来るであろう嵐に、静かに立ち向かう覚悟を決めるのだった。
「それにしても、見事な手際だった」
クラウスが、心からの賞賛を込めて言う。
「君の薬がなければ、騒ぎはもっと長引いていただろう。王宮の者たちも、皆感謝していた」
「いいえ。わたくしは、ただ目の前にあった問題を解決しただけですわ。それに、貴重な臨床データも得られましたし」
フィアははにかむように微笑んだ。この穏やかで、知的な探求心に満ちた時間が、二人にとっては何よりも代えがたいものになりつつあった。
その、平和な空気を乱暴に引き裂くように、それは突然やってきた。
「フィア! フィア・ランチェスターはいるか!」
尊大な、そして聞き覚えのある声。次いで、許可もなく工房の扉が乱暴に開け放たれた。そこに立っていたのは、フィアの元婚約者、エリアス第二王子その人だった。
「エリアス殿下……」
フィアは驚きに目を見開く。その隣で、クラウスは即座に立ち上がり、まるで盾になるかのように、フィアの前に一歩足を踏み出した。その氷色の瞳には、あからさまな警戒と敵意が宿っている。
「何の御用でしょうか。このような場所に、王子自らお越しになるとは」
クラウスの低い声には、明確な非難が込められていた。しかし、エリアスはそんなクラウスのことなど意にも介さず、侮蔑するような視線をフィアに注いだ。
「ふん。久しぶりだな、フィア。領地に引きこもって、みすぼらしい趣味に没頭していると聞いていたが、思ったよりは元気そうで何よりだ」
その恩着せがましい物言いに、フィアはただ黙って、この男が何を言いに来たのかを見極めようとしていた。
「君の噂は、私の耳にも入っている。噴水の一件、侍女たちの肌荒れ……。なかなか、面白い余興を楽しんでいるようではないか」
エリアスは、さも寛大な主君が、家臣の働きを褒めてやる、というかのような口ぶりで言った。そして、彼は信じられないような言葉を続けたのだ。
「それで、だ。私も、君のそのささやかな活動を、少しばかり支援してやろうと思ってな」
「……支援、ですって?」
フィアが訝しげに聞き返すと、エリアスは尊大に胸を張った。
「そうだ。私が、君の魔法薬作りの、公式な後援者となってやろう、と言っているのだ。考えてもみろ。そもそも、君がこうして自由に趣味に打ち込めるのは、誰のおかげだ? この私が、君との婚約を破棄して、自由の身にしてやったからではないか」
あまりにも身勝手な、捻じ曲げられた論理。フィアもクラウスも、呆れて言葉が出ない。
「つまり、君の功績は、ある意味では私の功績でもある、ということだ。私が君に与えた自由という土壌があってこそ、咲いた花なのだからな。どうだ、光栄だろう?」
エリアスは、心底そう信じ込んでいるようだった。自分の評判を落とすフィアの活躍を、自分の手柄として上書きしてしまえばいい。そうすれば、失墜した自分とリナの名誉も回復できる。そんな、浅はかな考えが透けて見えた。
「ついては、君が作った薬は、王家の紋章を付けて、私の名で売り出すことにしよう。もちろん、君の働きには、相応の褒美をやらんこともないぞ」
そこまで聞いた時、それまで沈黙を守っていたクラウスの堪忍袋の緒が、ついに切れた。
「―――殿下」
地を這うような低い声。それは、戦場で敵を威圧する時の、氷の騎士団長の声だった。
「……それは、詭弁というものです。フィア嬢の功績は、全て彼女自身の類まれなる才能と、血の滲むような努力の賜物。あなたの『許可』などという、存在しないもののおかげでは断じてない」
「なっ……! クラウス! 貴様、王子である私に意見する気か! これは、私と、私の『元』婚約者との間の話だ! 貴様が口を挟むことではない!」
エリアスが激昂して叫ぶ。しかし、クラウスは一歩も引かなかった。
その時、二人の間に、凛としたフィアの声が響いた。
「おやめください、クラウス様」
彼女は静かに立ち上がると、エリアスの前に進み出た。その瞳は、怒りでも、悲しみでもなく、ただ、ひたすらに冷静な光を宿していた。
「エリアス殿下。申し上げます」
フィアは、完璧なカーテシーを一つしてみせると、はっきりと告げた。
「殿下の『許可』など、わたくしは一度も求めたことはございませんし、必要としたこともございません。婚約の解消は、殿下がわたくしにくださった『自由』などではなく、わたくしが望む生き方をする上での『障害』が、一つ取り除かれたというだけのこと」
あまりにも直接的な、容赦のない言葉。エリアスの顔が、みるみるうちに引きつっていく。
「わたくしの研究と、あなたがたは、一切無関係です。後援など、迷惑千万。金輪際、わたくしの作るものに、あなた方の名前を重ねようなどとは、お考えになりませんように」
それは、反論の余地すら与えない、完璧な拒絶だった。
エリアスは、わなわなと唇を震わせ、顔を真っ赤に染め上げた。自分がコントロールできるはずの、惨めな捨て駒だと思っていた女に、満場の前で、完膚なきまでに論破され、プライドをずたずたに引き裂かれたのだ。
「き……貴様ぁっ!」
何かを叫ぼうとしたが、クラントとフィアの、二人分の冷え切った視線に射抜かれ、彼は言葉を失う。
「……覚えていろ!」
それだけを絞り出すのが精一杯だった。エリアスは、憎悪に満ちた目で二人を睨みつけると、乱暴に踵を返し、嵐のように去っていった。
後に残されたのは、気まずい沈黙と、ハーブティーの冷たい香り。
フィアは、ほう、と一つため息をついた。
「……これで、敵対は決定的になりましたわね」
その呟きは、しかし、不思議と晴れやかな響きを持っていた。隣に立つ、頼もしい騎士の存在を感じながら、フィアは、これから来るであろう嵐に、静かに立ち向かう覚悟を決めるのだった。
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