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4.変化
しおりを挟む日が高く上がり、爽やかな風が稲穂の間を吹き抜ける。今日もいつもどおり父とディケは農作業をしていた。12時ちょうど。お昼休憩を告げる鐘が鳴った。
「おい…おい!ディケ!」
聞き慣れた父の声と目の前でブンブンと振られる手に遠くに行っていたディケの意識が浮上する。
(あぁ、まただ。またあの神様のことを考えちゃってる。)
「ごめんお父さん。ちょっと考え事しちゃってた…。」
「今日のお前なんかおかしくないか?熱でもあるのか??無理はしなくていいからな。体調悪いとかあったらすぐ言えよ。」
心配そうに父がディケの顔を覗き込む。
それに対してディケは父を安心させようと微笑む。
「心配しなくても僕は大丈夫だよ。」
「……そうか。とりあえず、お昼ごはんの時間だ。家に戻ろう。」
「うん。」
ディケは朝目覚めてからずっとこの調子だった。夢で見たあの神様のことを忘れられず、ふとした時にあの美しさを思い出してしまう。そのたびに作業の手を止めてしまうので、いつもと違うその様子に父は心配していた。
二人は田んぼを抜け家に向かって歩き出す。
「ねぇ、お父さん。神様はいると思う?」
ふと、ディケは父に尋ねる。
「なんだ、いきなり。いるわけ無いだろ神なんて。」
「……そっか、そうだよね。ごめん変なこと聞いちゃって。」
「本当に今日どうしたんだ。何か変なものでも食べたのか?やっぱり体調悪いんじゃ…」
「違う、違うから!!大丈夫だよ、ほんとに。無理もしてないし、元気だよ。」
「本当か?それならいいんだが…。そうだ、今日はもう仕事終わってもいいぞ?いつもディケは頑張ってくれてるからな、今日くらいいいだろう。」
「いや、本当に僕は大丈夫だよ。午後からもお仕事手伝わせて?」
「…分かった。くれぐれも無理はするなよ?」
「うん、ありがとうお父さん。」
お昼休憩が終わり午後の仕事が始まった。父を心配させまいとディケは神のことを考える暇もないほど集中して仕事をした。それにより、午前より手を止める回数は減った。だが、数回手を止めてしまい、そのたびに父に心配されてしまった。
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