№4

河鹿 虫圭

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EMG14:怨みと陰口と渇望と

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彼岸花は怨みの証。

誰も僕を助けてくれなかった。

誰も見向きもせず、ただただ僕が壊れていくのを見ているだけだった。

それならいっそ壊れてしまおう。

壊れて、壊れて、壊れて壊れて壊れて壊れて、壊れても、僕はうまく壊れることができなかった。

最後に見た彼岸花は綺麗だった。


地蔵に陰口。

耳に口を充てて嫌いなあの人の陰口を言った。

あの人は本当は悪い人で、近所で猫を殺して回っている。

あの人は気分屋で八方美人。

あの人は嘘つきでみんなに嘘をついている。

でも、皆に好かれる。

でも、皆に受け入れられる。

でも、皆、笑顔になる。

清く正しく、何事にも一生懸命な俺が報われないのは、皆の輪に入れないのは、受け入れられないのは、おかしい。

だから、俺は地獄に落ちた。


価値が欲しい。勝ちが欲しい。

勝ち以外に価値はない。

敗北の文字など私の辞書にない。

ただ、ただ、価値が勝ちが欲しい。

勝ち上がれば価値があるのだ私の存在に。

だから、どんな手段を使っても、どんなことをしても私は勝つ。

私はムカデをその身の刻む。

勝利の虫。

勝利に一直線の虫。

虫を喰らう。

蟲。

────────────────────

復興が進んでいる街中のカフェにて、この時期には熱いであろう、タキシードに、冠婚葬祭の場ではないのに白無垢の男女3人がテラスでカフェオレを楽しんでいる。真っ赤な口紅にドウランのように白い肌のタキシードの男性が口を開く。

「で?今年も山のあいつを起こすの?」

顔を隠した白無垢の女性がパンケーキを顔に突っ込み租借して喉を鳴らす。

「アレのおかげで我々の同志が増えているんですもの。やるに決まってますわ。ね?怨マ?」

成人男性のこぶし大の大きな耳たぶのタキシードの怨マと呼ばれる男性がうっすらと目を開けて微笑ながらお茶で唇を潤す。

「もちろんすでに起こすための細工はしていますとも。何せ、自殺志願者が集まる森なので、怨み、妬み、嫉み、憤り……様々な陰鬱な気が寄ってくることでしょう……」

「良き良き。これで仲間が増えるね。」

「ケプッ……そうですわね……さて、そろそろお暇しましょうか……ここにいると私たちのせいで死人が出ます。」

「……もう少しお茶を堪能していたかったのに……」

三人は立ち上がり、店の中へ入り虚ろな目をした店員へお金を払う。店員はそのままお金を受け取ると今にも死にそうな声を絞り出して精一杯の笑顔を三人に向けた。

「丁度ですね~ありがとうございました~」

「えぇ、また来ますわ。」

「ここのお茶おいしかったのでまた来ます。」

「かふぇおれ?とか言うやつがおいしかった。またくる。」

三人は元気にその言葉を残すと店内は一気に明るく活気にあふれ始める。店員もなぜ今まで元気がなかったのだろうと考えて先ほど受け取ったお金をレジの中へ入れようとしたが、手に持っているものを見て青ざめた。

「これ……なに……?」

店員の手に握られていたのはあの世で使われるお金、冥銭だった。店員はそのお金のようなものに強烈な違和感と悪寒に襲われて短く悲鳴を上げて冥銭を落としてしまった。店内はその悲鳴に静まり返るが、店員はその視線に会釈して謝って冥銭を拾った。

三人はにぎわい始めた店内を見てそれぞれが変身していった。真っ赤な口紅の男は彼岸花の頭の異形頭、白無垢の女性はとぐろを巻いたムカデの頭の異形頭へ、福耳の男は視線の歪んだ地蔵頭の男へ変身した。

「人間ってもろいね。心も体も。」

「そこがいいところなんですわ。でも今の人間は気に入らない。」

「全くもって同意ですね……人間は素晴らしいが、その中にも汚い人間がいる。それたちは気に入りません。」

三人はお互いの意見を認め合うように静かに頷く。そして、地蔵頭こと怨マは富士山の方角を指す。

「では、皆さん。行きましょう。我々の同志を迎えに。」

彼岸花男と白無垢ムカデは静かに頷き富士山の方へと飛んでいった。

──────────────────

富士山周辺の中腹。怨嗟と嗚咽が入り交じるうめき声が響く。赤い眼が光ると苦しそうな声を上げて起きる。

『いやだ。起きたくない。もう、こんな声は聞きたくない。』

怨嗟と憤怒で山の怪獣「№2」が目覚めた。

EMG14:怨みと陰口と渇望と

次回 MEG15:№2
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