14 / 20
EMG14:怨みと陰口と渇望と
しおりを挟む
彼岸花は怨みの証。
誰も僕を助けてくれなかった。
誰も見向きもせず、ただただ僕が壊れていくのを見ているだけだった。
それならいっそ壊れてしまおう。
壊れて、壊れて、壊れて壊れて壊れて壊れて、壊れても、僕はうまく壊れることができなかった。
最後に見た彼岸花は綺麗だった。
地蔵に陰口。
耳に口を充てて嫌いなあの人の陰口を言った。
あの人は本当は悪い人で、近所で猫を殺して回っている。
あの人は気分屋で八方美人。
あの人は嘘つきでみんなに嘘をついている。
でも、皆に好かれる。
でも、皆に受け入れられる。
でも、皆、笑顔になる。
清く正しく、何事にも一生懸命な俺が報われないのは、皆の輪に入れないのは、受け入れられないのは、おかしい。
だから、俺は地獄に落ちた。
価値が欲しい。勝ちが欲しい。
勝ち以外に価値はない。
敗北の文字など私の辞書にない。
ただ、ただ、価値が勝ちが欲しい。
勝ち上がれば価値があるのだ私の存在に。
だから、どんな手段を使っても、どんなことをしても私は勝つ。
私はムカデをその身の刻む。
勝利の虫。
勝利に一直線の虫。
虫を喰らう。
蟲。
────────────────────
復興が進んでいる街中のカフェにて、この時期には熱いであろう、タキシードに、冠婚葬祭の場ではないのに白無垢の男女3人がテラスでカフェオレを楽しんでいる。真っ赤な口紅にドウランのように白い肌のタキシードの男性が口を開く。
「で?今年も山のあいつを起こすの?」
顔を隠した白無垢の女性がパンケーキを顔に突っ込み租借して喉を鳴らす。
「アレのおかげで我々の同志が増えているんですもの。やるに決まってますわ。ね?怨マ?」
成人男性のこぶし大の大きな耳たぶのタキシードの怨マと呼ばれる男性がうっすらと目を開けて微笑ながらお茶で唇を潤す。
「もちろんすでに起こすための細工はしていますとも。何せ、自殺志願者が集まる森なので、怨み、妬み、嫉み、憤り……様々な陰鬱な気が寄ってくることでしょう……」
「良き良き。これで仲間が増えるね。」
「ケプッ……そうですわね……さて、そろそろお暇しましょうか……ここにいると私たちのせいで死人が出ます。」
「……もう少しお茶を堪能していたかったのに……」
三人は立ち上がり、店の中へ入り虚ろな目をした店員へお金を払う。店員はそのままお金を受け取ると今にも死にそうな声を絞り出して精一杯の笑顔を三人に向けた。
「丁度ですね~ありがとうございました~」
「えぇ、また来ますわ。」
「ここのお茶おいしかったのでまた来ます。」
「かふぇおれ?とか言うやつがおいしかった。またくる。」
三人は元気にその言葉を残すと店内は一気に明るく活気にあふれ始める。店員もなぜ今まで元気がなかったのだろうと考えて先ほど受け取ったお金をレジの中へ入れようとしたが、手に持っているものを見て青ざめた。
「これ……なに……?」
店員の手に握られていたのはあの世で使われるお金、冥銭だった。店員はそのお金のようなものに強烈な違和感と悪寒に襲われて短く悲鳴を上げて冥銭を落としてしまった。店内はその悲鳴に静まり返るが、店員はその視線に会釈して謝って冥銭を拾った。
三人はにぎわい始めた店内を見てそれぞれが変身していった。真っ赤な口紅の男は彼岸花の頭の異形頭、白無垢の女性はとぐろを巻いたムカデの頭の異形頭へ、福耳の男は視線の歪んだ地蔵頭の男へ変身した。
「人間ってもろいね。心も体も。」
「そこがいいところなんですわ。でも今の人間は気に入らない。」
「全くもって同意ですね……人間は素晴らしいが、その中にも汚い人間がいる。それたちは気に入りません。」
三人はお互いの意見を認め合うように静かに頷く。そして、地蔵頭こと怨マは富士山の方角を指す。
「では、皆さん。行きましょう。我々の同志を迎えに。」
彼岸花男と白無垢ムカデは静かに頷き富士山の方へと飛んでいった。
──────────────────
富士山周辺の中腹。怨嗟と嗚咽が入り交じるうめき声が響く。赤い眼が光ると苦しそうな声を上げて起きる。
『いやだ。起きたくない。もう、こんな声は聞きたくない。』
怨嗟と憤怒で山の怪獣「№2」が目覚めた。
EMG14:怨みと陰口と渇望と
次回 MEG15:№2
誰も僕を助けてくれなかった。
誰も見向きもせず、ただただ僕が壊れていくのを見ているだけだった。
それならいっそ壊れてしまおう。
壊れて、壊れて、壊れて壊れて壊れて壊れて、壊れても、僕はうまく壊れることができなかった。
最後に見た彼岸花は綺麗だった。
地蔵に陰口。
耳に口を充てて嫌いなあの人の陰口を言った。
あの人は本当は悪い人で、近所で猫を殺して回っている。
あの人は気分屋で八方美人。
あの人は嘘つきでみんなに嘘をついている。
でも、皆に好かれる。
でも、皆に受け入れられる。
でも、皆、笑顔になる。
清く正しく、何事にも一生懸命な俺が報われないのは、皆の輪に入れないのは、受け入れられないのは、おかしい。
だから、俺は地獄に落ちた。
価値が欲しい。勝ちが欲しい。
勝ち以外に価値はない。
敗北の文字など私の辞書にない。
ただ、ただ、価値が勝ちが欲しい。
勝ち上がれば価値があるのだ私の存在に。
だから、どんな手段を使っても、どんなことをしても私は勝つ。
私はムカデをその身の刻む。
勝利の虫。
勝利に一直線の虫。
虫を喰らう。
蟲。
────────────────────
復興が進んでいる街中のカフェにて、この時期には熱いであろう、タキシードに、冠婚葬祭の場ではないのに白無垢の男女3人がテラスでカフェオレを楽しんでいる。真っ赤な口紅にドウランのように白い肌のタキシードの男性が口を開く。
「で?今年も山のあいつを起こすの?」
顔を隠した白無垢の女性がパンケーキを顔に突っ込み租借して喉を鳴らす。
「アレのおかげで我々の同志が増えているんですもの。やるに決まってますわ。ね?怨マ?」
成人男性のこぶし大の大きな耳たぶのタキシードの怨マと呼ばれる男性がうっすらと目を開けて微笑ながらお茶で唇を潤す。
「もちろんすでに起こすための細工はしていますとも。何せ、自殺志願者が集まる森なので、怨み、妬み、嫉み、憤り……様々な陰鬱な気が寄ってくることでしょう……」
「良き良き。これで仲間が増えるね。」
「ケプッ……そうですわね……さて、そろそろお暇しましょうか……ここにいると私たちのせいで死人が出ます。」
「……もう少しお茶を堪能していたかったのに……」
三人は立ち上がり、店の中へ入り虚ろな目をした店員へお金を払う。店員はそのままお金を受け取ると今にも死にそうな声を絞り出して精一杯の笑顔を三人に向けた。
「丁度ですね~ありがとうございました~」
「えぇ、また来ますわ。」
「ここのお茶おいしかったのでまた来ます。」
「かふぇおれ?とか言うやつがおいしかった。またくる。」
三人は元気にその言葉を残すと店内は一気に明るく活気にあふれ始める。店員もなぜ今まで元気がなかったのだろうと考えて先ほど受け取ったお金をレジの中へ入れようとしたが、手に持っているものを見て青ざめた。
「これ……なに……?」
店員の手に握られていたのはあの世で使われるお金、冥銭だった。店員はそのお金のようなものに強烈な違和感と悪寒に襲われて短く悲鳴を上げて冥銭を落としてしまった。店内はその悲鳴に静まり返るが、店員はその視線に会釈して謝って冥銭を拾った。
三人はにぎわい始めた店内を見てそれぞれが変身していった。真っ赤な口紅の男は彼岸花の頭の異形頭、白無垢の女性はとぐろを巻いたムカデの頭の異形頭へ、福耳の男は視線の歪んだ地蔵頭の男へ変身した。
「人間ってもろいね。心も体も。」
「そこがいいところなんですわ。でも今の人間は気に入らない。」
「全くもって同意ですね……人間は素晴らしいが、その中にも汚い人間がいる。それたちは気に入りません。」
三人はお互いの意見を認め合うように静かに頷く。そして、地蔵頭こと怨マは富士山の方角を指す。
「では、皆さん。行きましょう。我々の同志を迎えに。」
彼岸花男と白無垢ムカデは静かに頷き富士山の方へと飛んでいった。
──────────────────
富士山周辺の中腹。怨嗟と嗚咽が入り交じるうめき声が響く。赤い眼が光ると苦しそうな声を上げて起きる。
『いやだ。起きたくない。もう、こんな声は聞きたくない。』
怨嗟と憤怒で山の怪獣「№2」が目覚めた。
EMG14:怨みと陰口と渇望と
次回 MEG15:№2
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
むっつり金持ち高校生、巨乳美少女たちに囲まれて学園ハーレム
ピコサイクス
青春
顔は普通、性格も地味。
けれど実は金持ちな高校一年生――俺、朝倉健斗。
学校では埋もれキャラのはずなのに、なぜか周りは巨乳美女ばかり!?
大学生の家庭教師、年上メイド、同級生ギャルに清楚系美少女……。
真面目な御曹司を演じつつ、内心はむっつりスケベ。
春の雨はあたたかいー家出JKがオッサンの嫁になって女子大生になるまでのお話
登夢
恋愛
春の雨の夜に出会った訳あり家出JKと真面目な独身サラリーマンの1年間の同居生活を綴ったラブストーリーです。私は家出JKで春の雨の日の夜に駅前にいたところオッサンに拾われて家に連れ帰ってもらった。家出の訳を聞いたオッサンは、自分と同じに境遇に同情して私を同居させてくれた。同居の代わりに私は家事を引き受けることにしたが、真面目なオッサンは私を抱こうとしなかった。18歳になったときオッサンにプロポーズされる。
母の下着 タンスと洗濯籠の秘密
MisakiNonagase
青春
この物語は、思春期という複雑で繊細な時期を生きる少年の内面と、彼を取り巻く家族の静かなる絆を描いた作品です。
颯真(そうま)という一人の高校生の、ある「秘密」を通して、私たちは成長の過程で誰もが抱くかもしれない戸惑い、罪悪感、そしてそれらを包み込む家族の無言の理解に触れます。
物語は、現在の颯真と恋人・彩花との関係から、中学時代にさかのぼる形で展開されます。そこで明らかになるのは、彼がかつて母親の下着に対して抱いた抑えがたい好奇心と、それに伴う一連の行為です。それは彼自身が「歪んだ」と感じる過去の断片であり、深い恥ずかしさと自己嫌悪を伴う記憶です。
しかし、この物語の核心は、単なる過去の告白にはありません。むしろ、その行為に「気づいていたはず」の母親が、なぜ一言も問い詰めず、誰にも告げず、ただ静かに見守り続けたのか——という問いにこそあります。そこには、親子という関係を超えた、深い人間理解と、言葉にされない優しさが横たわっています。
センシティブな題材を、露骨な描写や扇情的な表現に頼ることなく、あくまで颯真の内省的な視点から丁寧に紡ぎ出しています。読者は、主人公の痛みと恥ずかしさを共有しながら、同時に、彼を破綻から救った「沈黙の救済」の重みと温かさを感じ取ることでしょう。
これは、一つの過ちと、その赦しについての物語です。また、成長とは時に恥ずかしい過去を背負いながら、他者の無償の寛容さによって初めて前を向けるようになる過程であること、そして家族の愛が最も深く現れるのは、時に何も言わない瞬間であることを、静かにしかし確かに伝える物語です。
どうか、登場人物たちの静かなる心の襞に寄り添いながら、ページをめくってください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる