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【望月】群れなす影と一匹狼
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「人数が多すぎる。かと言って皆に頼る訳には……」
明星一狼は裂いた肩を抱きながら森の中を走る。息も絶え絶え。意識はもうろう。肩の再生に体力も使っているので戦うだけの体力が残っていない。振り返りながら視界で安全を確認し、視覚が信用を失わない為に嗅覚で相手の匂いを確認する。そして、聴覚で嗅覚を補いながら一狼は暗い森の中を進んでいく。自分の血の匂いがそこらに広がり焦るが足を動かしていることでその不安を和らげる。
「止まるな……止まるな……止めるな……動け、動かせ、できるだけ遠くに……」
そうつぶやきながら走るが木々が始める音が耳に入り、土が飛び散る。弾道、匂い、焦る頭の中を冷静に保ち予測、推理、計算する。そして、出た結論は…
上空からの奇襲。
二発目の弾丸が一狼の頬を掠める。いや、掠めたのではなく、わざと頬の横を通るように撃たれた。林に身を隠し、上空を見上げて静かに目を凝らす。星とは違う煌めきと怪しげな赤と緑の点。
「あいつらの仲間なのか?」
先程とは打って変わって戦略がまるで違う。同じチームの輪を乱すような攻撃手法。これは、別の刺客かと考えるも、弾丸が降り注いできたのでその場を離れる。だが、弾丸は一狼を正確に打ち抜くように迫ってくる。止まれば確実に打ち抜かれる。肩の負傷も完全に治りきっていないこの状況でさらに攻撃をもらうのは致命的である。
「止まるな……止めるな……止まるな……死ぬぞ……死ぬぞ……」
目が安定しない今、止まるのは文字通り死を意味する。だからこそ一狼は正存の為に走る。ジグザグに蛇行していると森がそこで終わっていた。勢いあまって一歩を踏もうとしたが、間一髪崖の縁で止まる。だが、弾丸の雨はゲームでもしているかのようにこちらへゆっくりと振ってくる。
苛立った一狼はその辺に落ちていた石を拾い、弾丸の雨の源へ投げようと大きく振りかぶると先ほどとは違う弾道で弾丸が一狼の脇腹を掠めた。これは、わざと外したわけではなく、完全に一狼の急所を狙っていた。
「さっきの奴らが来ているのか?」
三人のオオカミディウスがもう迫ってきたのかと焦ったが、武器を見るに銃は持っていなかったと記憶しており、これはまた別の刺客が現れたと冷静に分析しつつ焦る。
「一体、何人の刺客がいるんだ?皆セルを持っているのか?」
見えない恐怖に一狼は崖っぷちで五感を研ぎ澄ませる。
視覚はもちろん、聴覚、嗅覚、触覚、そして勘覚を全身に覚え込ませる。
上空に一人。
森に八人。
七人との距離は離れている……上空はすべて見ている。
一個、策を除き、詰みの状態である。
その一個の策を投じるしかないが、今はタイミングが合わない。
弾丸が迫る中、今できるだけの思考を巡らせる。
森の中からの銃声で一狼はこれをタイミングとして背中から落ちた。自由落下の最中、一狼はベルトの突起を押し込み拳を構える。
『EXECUTION』
赤く輝いた拳を地面にぶつかるすれすれでぶつけて大きな土煙を上げて落下速度を完全に殺して無事に着地した。その勢いのまま再び森の中を走るが、上空の弾丸はそれでも一狼に狙いを定めて振ってきている。
「これで、崖上の八人は巻けた。あとは空の狙撃手を……」
再び手に持っていた石を振りかぶったが、背後に殺気と違和感を感じ止まる。振り返りながら、持っていた石を投げ入れると石は細々と切れた。
「敵のトラップだ……」
いつもなら、人工物だと認識し気にせず歩いて行くのだが、このワイヤートラップは違う。いや、これはそもそもワイヤートラップなのかと疑問を抱き、試しに爪で触ってみる。糸に触れた瞬間、一狼の爪は豆腐のように斬れて再生しなかった。
「セルの力なのか……」
月夜に照らされる糸の輝き、その糸に立つ人影が一つ月明りと重なり、その影が一狼と重なる。木の皮を全身にくっつけたような見た目のディウス。そのディウスは無言で降りてくると、手に持っている糸を大きく振りかぶり一狼へ投げるように振り下ろす。先ほどの違和感を察知した一狼はそのリボンのような糸をかわす。一狼の予想通りその糸はゆっくりながら重い棒を勢いよく振り下ろした音が耳へ抜けていった。
「糸……クモか?」
一狼はつぶやくが、木の皮ディウスは無言で糸を振り回す。
クモよりも強靭な糸を持つ虫がいる。その虫は生活の一切をその糸に託し一生をその糸と共に過ごす……その虫の名は絶滅危惧Ⅰ類オオミノガである。オオミノガディウスはため息交じりに口を開く。
「クモとか言う下劣な生き物と一緒にしないでくれるかしら……」
オオミノガディウスは一狼へ思い切り糸をしならせて体の切断を試みる。一狼は糸の危険性をすでに本能的に分かっているため、糸の攻略を半分諦めて避けに思考を振りながら、オオミノガディウスが張った糸地帯の終わりを探るため森の中へ入り糸地帯を平行に走る。オオミノガディウスは一狼の素早い動きについていけなかったのか、一狼を追うのを途中で中止した。
「……作戦通りよ。あとは任せるわ。」
息切れを感じながら、オオミノガディウスは飛んできた槍を糸ではじく。目の前には投擲した格好を保ったオオカミディウス(辰巳沙也加)が一人で立っていた。その背後から弾丸をはじきながらサザレと戌亥オオカミディウスが走っていた。
「あなた達ね。幻々商会というのは……」
「そうよ。あたい達が幻々商会。そういうあんたは270の差し金ね?」
「お初にお目にかかるわ。270の仲間でまぁ、本名は言えないからオオミノガと覚えてくれたらありがたいわね。」
辰巳はオオミノガの紹介に質問をする。
「仲間はあと何人いるの?能力は?」
「……そうね、私を含めて6名。上空にコウモリディウス、林にカメレオンディウス。そして、この先にブタが三匹いるわ。」
「ブタ?そんな惨めなセルを引いた仲間がいるなんてかわいそうね~」
オオカミディウスはそんな辰巳を鼻で嗤う。
「何よ……」
「あの三人はブタに特殊能力があるなしに我々の中でも指折りのファイターよ。」
辰巳は首を傾げたままオオミノガを放って後ろの二人を引き連れて一狼の後を追った。そして、オオミノガは静かにつぶやく
「私たちの勝ちに決まってるでしょ……」
────────────
糸地帯が終わると一狼は横を通り過ぎ森の奥へと逃げ込む。空からの弾丸を巻いてやっと一息つけると止まるも突然地面が割れて衝撃波が一狼へ迫る。紙一重でその衝撃波を避けると巨漢が三人ゆっくりと歩いてきた。木々を邪魔そうにかき分けると太い幹の木は根元から折れて男たちの道を作った。
毛むくじゃらの体に特徴的な鼻。その横からは雄々しく伸びる牙が見える。
「イノシシ……」
一狼がつぶやくと、三人の巨漢は足に力を込めて走る用意をする。やはり、巨漢というのもあるのか、一狼にはその動きがとても遅くだが、驚異的に感じる。一狼は慌てず避けるタイミングを見計らう。三人の巨漢は足にためた力を一気に解放し一狼に向かって突進する。周りの木々をなぎ倒しながら三人は一狼へと迫る。それを闘牛士のようにひらりとかわす一狼。次の突進に備えて踵を返したが、三人はすでに一狼の目の前まで突進できていた。
「猪突猛進」という言葉がある。一つのことに向こう見ずで猛烈な勢いで突き進むという意味だ。「猪」の字が使われており、まるでイノシシが真っすぐ一直線に進む様子を表している。中国の古典「荘子」の豕突猛進、辟遮靣当が猪突猛進の語源である。この一節からイノシシは真っすぐにしか走れないと思われがちだが実際は違う。猟犬や猟銃を避けるためにジグザグに逃げたり、鋭角なターンもできる。障害物が行く手を阻めば、避けたり時には飛び越えたりもする。
そんな急カーブタックルを喰らった一狼はそのままイノシシディウスに押されて森の中をだんだんと押されていく。勢いと風圧で一狼は息もできずにそのまま壁にぶつけられた。声も上げることができずに一狼は前に出てきた一匹のイノシシディウスに持ち上げられてそのまま宙へ投げ飛ばされる。力なく宙を舞う一狼は視界の端にイノシシディウスの牙を見る。
「死んで……たまるか……」
ベルトの突起を押し込み、拳にエネルギーを充填する。赤く光り始めた拳を見たイノシシディウスは牙を構えるのをやめて、同じく拳を固める。
『いくら頑丈だからってEXに普通に固めた拳で勝てるわけないだろ……僕の自由のために死ね!』
そのまま落下の速度を合わせたEXがイノシシディウスの拳を重なると、銃声と共に一狼の背中に鋭い痛みが走った。目をそらしてみると見えたのは、赤と緑の点の光。
「忘れてた……空の狙撃手……!」
そのまま拳をイノシシディウスに振り下ろそうとしたが、痛みで力が抜けてしまいイノシシディウスとの張り合いに負けてもう一度宙を舞った。その間に追いついたのか地上からも弾丸が一狼を襲う。
上空からの狙撃。
地上からの狙撃。
下には屈強な肉体が三人。
これに加えてあと数人、近接とチームワークが取れた輩がいる。
詰みの詰み。
これ以上ないほどの詰み。
逃げようが隠れようが、動こうが、動かまいが、死。
死
死
完全に力の抜けた一狼は薄れる意識の中に白い羽ばたきを見た。それは鳥の羽ではなく、人間の髪だった。
朝日が昇る。その朝日と一狼が重なると、白い髪をなびかせた緋色の瞳の少年はゆっくりと一狼を抱きかかえて、舞い降りるように着地した。今まで見たことのない神々しい少年にその場にいた刺客たちは固まり、見惚れた。舞い降りた少年は、一狼を自分の背後に寝かせて、その場にいる全員をにらみつけて威圧した。そして、人数を数え始める。
「えーっと……ヒー、フ―、三―……見えない奴とか来てない奴を合わせて13人……か?お前ら、一対十三って頭おかしいにもほどがあるだろ。」
少年は首を鳴らすと、固まったままの者たちを動かすように虚空から剣を出した。そのまま剣を突き立て剣にもたれかかる。我に返った辰巳は槍を構えながらオオミノガに質問する。
「こいつ何?こんな奴聞いてない。」
「私だって、あの人からこんな人間がいるなんてことも聞いてない……何なのあなた……」
少年は、ため息をつきながら長考したのち、剣を構え口角を上げた。
「お前ら……”神様”が実在するって言ったら信じるか?」
続く。が、第一部はここで完結。
明星一狼は裂いた肩を抱きながら森の中を走る。息も絶え絶え。意識はもうろう。肩の再生に体力も使っているので戦うだけの体力が残っていない。振り返りながら視界で安全を確認し、視覚が信用を失わない為に嗅覚で相手の匂いを確認する。そして、聴覚で嗅覚を補いながら一狼は暗い森の中を進んでいく。自分の血の匂いがそこらに広がり焦るが足を動かしていることでその不安を和らげる。
「止まるな……止まるな……止めるな……動け、動かせ、できるだけ遠くに……」
そうつぶやきながら走るが木々が始める音が耳に入り、土が飛び散る。弾道、匂い、焦る頭の中を冷静に保ち予測、推理、計算する。そして、出た結論は…
上空からの奇襲。
二発目の弾丸が一狼の頬を掠める。いや、掠めたのではなく、わざと頬の横を通るように撃たれた。林に身を隠し、上空を見上げて静かに目を凝らす。星とは違う煌めきと怪しげな赤と緑の点。
「あいつらの仲間なのか?」
先程とは打って変わって戦略がまるで違う。同じチームの輪を乱すような攻撃手法。これは、別の刺客かと考えるも、弾丸が降り注いできたのでその場を離れる。だが、弾丸は一狼を正確に打ち抜くように迫ってくる。止まれば確実に打ち抜かれる。肩の負傷も完全に治りきっていないこの状況でさらに攻撃をもらうのは致命的である。
「止まるな……止めるな……止まるな……死ぬぞ……死ぬぞ……」
目が安定しない今、止まるのは文字通り死を意味する。だからこそ一狼は正存の為に走る。ジグザグに蛇行していると森がそこで終わっていた。勢いあまって一歩を踏もうとしたが、間一髪崖の縁で止まる。だが、弾丸の雨はゲームでもしているかのようにこちらへゆっくりと振ってくる。
苛立った一狼はその辺に落ちていた石を拾い、弾丸の雨の源へ投げようと大きく振りかぶると先ほどとは違う弾道で弾丸が一狼の脇腹を掠めた。これは、わざと外したわけではなく、完全に一狼の急所を狙っていた。
「さっきの奴らが来ているのか?」
三人のオオカミディウスがもう迫ってきたのかと焦ったが、武器を見るに銃は持っていなかったと記憶しており、これはまた別の刺客が現れたと冷静に分析しつつ焦る。
「一体、何人の刺客がいるんだ?皆セルを持っているのか?」
見えない恐怖に一狼は崖っぷちで五感を研ぎ澄ませる。
視覚はもちろん、聴覚、嗅覚、触覚、そして勘覚を全身に覚え込ませる。
上空に一人。
森に八人。
七人との距離は離れている……上空はすべて見ている。
一個、策を除き、詰みの状態である。
その一個の策を投じるしかないが、今はタイミングが合わない。
弾丸が迫る中、今できるだけの思考を巡らせる。
森の中からの銃声で一狼はこれをタイミングとして背中から落ちた。自由落下の最中、一狼はベルトの突起を押し込み拳を構える。
『EXECUTION』
赤く輝いた拳を地面にぶつかるすれすれでぶつけて大きな土煙を上げて落下速度を完全に殺して無事に着地した。その勢いのまま再び森の中を走るが、上空の弾丸はそれでも一狼に狙いを定めて振ってきている。
「これで、崖上の八人は巻けた。あとは空の狙撃手を……」
再び手に持っていた石を振りかぶったが、背後に殺気と違和感を感じ止まる。振り返りながら、持っていた石を投げ入れると石は細々と切れた。
「敵のトラップだ……」
いつもなら、人工物だと認識し気にせず歩いて行くのだが、このワイヤートラップは違う。いや、これはそもそもワイヤートラップなのかと疑問を抱き、試しに爪で触ってみる。糸に触れた瞬間、一狼の爪は豆腐のように斬れて再生しなかった。
「セルの力なのか……」
月夜に照らされる糸の輝き、その糸に立つ人影が一つ月明りと重なり、その影が一狼と重なる。木の皮を全身にくっつけたような見た目のディウス。そのディウスは無言で降りてくると、手に持っている糸を大きく振りかぶり一狼へ投げるように振り下ろす。先ほどの違和感を察知した一狼はそのリボンのような糸をかわす。一狼の予想通りその糸はゆっくりながら重い棒を勢いよく振り下ろした音が耳へ抜けていった。
「糸……クモか?」
一狼はつぶやくが、木の皮ディウスは無言で糸を振り回す。
クモよりも強靭な糸を持つ虫がいる。その虫は生活の一切をその糸に託し一生をその糸と共に過ごす……その虫の名は絶滅危惧Ⅰ類オオミノガである。オオミノガディウスはため息交じりに口を開く。
「クモとか言う下劣な生き物と一緒にしないでくれるかしら……」
オオミノガディウスは一狼へ思い切り糸をしならせて体の切断を試みる。一狼は糸の危険性をすでに本能的に分かっているため、糸の攻略を半分諦めて避けに思考を振りながら、オオミノガディウスが張った糸地帯の終わりを探るため森の中へ入り糸地帯を平行に走る。オオミノガディウスは一狼の素早い動きについていけなかったのか、一狼を追うのを途中で中止した。
「……作戦通りよ。あとは任せるわ。」
息切れを感じながら、オオミノガディウスは飛んできた槍を糸ではじく。目の前には投擲した格好を保ったオオカミディウス(辰巳沙也加)が一人で立っていた。その背後から弾丸をはじきながらサザレと戌亥オオカミディウスが走っていた。
「あなた達ね。幻々商会というのは……」
「そうよ。あたい達が幻々商会。そういうあんたは270の差し金ね?」
「お初にお目にかかるわ。270の仲間でまぁ、本名は言えないからオオミノガと覚えてくれたらありがたいわね。」
辰巳はオオミノガの紹介に質問をする。
「仲間はあと何人いるの?能力は?」
「……そうね、私を含めて6名。上空にコウモリディウス、林にカメレオンディウス。そして、この先にブタが三匹いるわ。」
「ブタ?そんな惨めなセルを引いた仲間がいるなんてかわいそうね~」
オオカミディウスはそんな辰巳を鼻で嗤う。
「何よ……」
「あの三人はブタに特殊能力があるなしに我々の中でも指折りのファイターよ。」
辰巳は首を傾げたままオオミノガを放って後ろの二人を引き連れて一狼の後を追った。そして、オオミノガは静かにつぶやく
「私たちの勝ちに決まってるでしょ……」
────────────
糸地帯が終わると一狼は横を通り過ぎ森の奥へと逃げ込む。空からの弾丸を巻いてやっと一息つけると止まるも突然地面が割れて衝撃波が一狼へ迫る。紙一重でその衝撃波を避けると巨漢が三人ゆっくりと歩いてきた。木々を邪魔そうにかき分けると太い幹の木は根元から折れて男たちの道を作った。
毛むくじゃらの体に特徴的な鼻。その横からは雄々しく伸びる牙が見える。
「イノシシ……」
一狼がつぶやくと、三人の巨漢は足に力を込めて走る用意をする。やはり、巨漢というのもあるのか、一狼にはその動きがとても遅くだが、驚異的に感じる。一狼は慌てず避けるタイミングを見計らう。三人の巨漢は足にためた力を一気に解放し一狼に向かって突進する。周りの木々をなぎ倒しながら三人は一狼へと迫る。それを闘牛士のようにひらりとかわす一狼。次の突進に備えて踵を返したが、三人はすでに一狼の目の前まで突進できていた。
「猪突猛進」という言葉がある。一つのことに向こう見ずで猛烈な勢いで突き進むという意味だ。「猪」の字が使われており、まるでイノシシが真っすぐ一直線に進む様子を表している。中国の古典「荘子」の豕突猛進、辟遮靣当が猪突猛進の語源である。この一節からイノシシは真っすぐにしか走れないと思われがちだが実際は違う。猟犬や猟銃を避けるためにジグザグに逃げたり、鋭角なターンもできる。障害物が行く手を阻めば、避けたり時には飛び越えたりもする。
そんな急カーブタックルを喰らった一狼はそのままイノシシディウスに押されて森の中をだんだんと押されていく。勢いと風圧で一狼は息もできずにそのまま壁にぶつけられた。声も上げることができずに一狼は前に出てきた一匹のイノシシディウスに持ち上げられてそのまま宙へ投げ飛ばされる。力なく宙を舞う一狼は視界の端にイノシシディウスの牙を見る。
「死んで……たまるか……」
ベルトの突起を押し込み、拳にエネルギーを充填する。赤く光り始めた拳を見たイノシシディウスは牙を構えるのをやめて、同じく拳を固める。
『いくら頑丈だからってEXに普通に固めた拳で勝てるわけないだろ……僕の自由のために死ね!』
そのまま落下の速度を合わせたEXがイノシシディウスの拳を重なると、銃声と共に一狼の背中に鋭い痛みが走った。目をそらしてみると見えたのは、赤と緑の点の光。
「忘れてた……空の狙撃手……!」
そのまま拳をイノシシディウスに振り下ろそうとしたが、痛みで力が抜けてしまいイノシシディウスとの張り合いに負けてもう一度宙を舞った。その間に追いついたのか地上からも弾丸が一狼を襲う。
上空からの狙撃。
地上からの狙撃。
下には屈強な肉体が三人。
これに加えてあと数人、近接とチームワークが取れた輩がいる。
詰みの詰み。
これ以上ないほどの詰み。
逃げようが隠れようが、動こうが、動かまいが、死。
死
死
完全に力の抜けた一狼は薄れる意識の中に白い羽ばたきを見た。それは鳥の羽ではなく、人間の髪だった。
朝日が昇る。その朝日と一狼が重なると、白い髪をなびかせた緋色の瞳の少年はゆっくりと一狼を抱きかかえて、舞い降りるように着地した。今まで見たことのない神々しい少年にその場にいた刺客たちは固まり、見惚れた。舞い降りた少年は、一狼を自分の背後に寝かせて、その場にいる全員をにらみつけて威圧した。そして、人数を数え始める。
「えーっと……ヒー、フ―、三―……見えない奴とか来てない奴を合わせて13人……か?お前ら、一対十三って頭おかしいにもほどがあるだろ。」
少年は首を鳴らすと、固まったままの者たちを動かすように虚空から剣を出した。そのまま剣を突き立て剣にもたれかかる。我に返った辰巳は槍を構えながらオオミノガに質問する。
「こいつ何?こんな奴聞いてない。」
「私だって、あの人からこんな人間がいるなんてことも聞いてない……何なのあなた……」
少年は、ため息をつきながら長考したのち、剣を構え口角を上げた。
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