日常の怪

5 手跡の怪

私は、東京の大学に進学が決まったので、地方から東京の安いアパートで一人暮らしを始めた。その日、実家からの荷物を整理していて、気づくと床に一つの手跡がついているのを見つける。前にこの部屋に住んでいた人がつけたのだろうか？その手跡を拭いたが消すことが出来ない。しかし私は疲れていたため、次の日に回すことにして、すぐに寝ることにした。ベットはまだないので、トレーニングマットを敷いて寝た。ふと私は夜中に目が覚めてしまった。すると　ペタッペタッ　と裸足で歩いてるような音が聞こえた。リビングの方からだ。私はリビングの方に足を向けて寝ている。私は嫌な予感がした。もしかしたら玄関の鍵をかけ忘れて、部屋に強盗が入ってきたのかもしれない。それにしても裸足というのは、おかしい。体を丸くして怖さで体が震えた。私は怖い気持ちを振り切って起き上がるとリビングの方に行き、電気をつけた。しかし、リビングには誰もいなかった。私は気のせいかと思いホッとした。リビングの電気を消してマットで横になるとウトウトと眠くなっていくのを感じた。それから、しばらく眠っていたが気づくと、息が苦しい。首をしめつけられているような感じがした。目を開けると真っ黒い両腕が、私の首に向かって伸びてきていて、首に手がしっかり張り付いている感じがした。そして、ちょうどお腹にどっすりと誰かが乗っかっている。顔は、はっきり見えず分からない。私は、怖かったが首に向かって伸びてる両腕をつかみ、必死に引き剥がそうとした。だが、首をしめる手の力がますます強くなり、引き剥がせず意識が遠のいていくのを感じた。　目が覚めると、朝だった。体には誰も乗っかっていなかった。だけど、首が痛むのを感じて私は夢でなかったことを恐ろしく感じた。マットから上半身を起こして、私は悲鳴を上げた。リビングの方から、私が寝ていたマットまで、手跡が続いていた。さらに、服にまで手跡がびっしりついていた。私は、危機を感じてその日の内に友達の家へ泊まらせてもらうことにした。
　　　　　　　　　　　　　　　　　終