日常の怪

21 マスクの怪

今、東京で未知のウイルスが流行っている。死者も出ていた。そして、周りの人達はマスクをしている。俺もウイルスが怖いからマスクをした。それから一年が経った。まだウイルスは東京で流行っていた。治療薬や予防注射は開発されてない。いつしか、マスクが顔から取れなくなっていた。俺は最初は戸惑ったものの、周りの人達を見習った。まず、食事の時はストローをマスクの下から通して、全ての栄養が整った飲み物で済ましている。そして、俺は自分のマスクの下の顔を忘れた。そもそも口という分厚いピンク色をしたものなどあったのだろうか？今では、マスクをしていても食事は出来る。マスクが口になっていた。このまま日常に支障が出る事無く、時は過ぎていった。治療薬や予防注射が開発されて、ウイルスはいつしか完全に無くなってしまった。俺は、ウイルスが無くなった事に、安堵した。いつものように、マスクの下から、ストローを通して食事をする。街中を歩くと、周りの人達もマスクをしていた。
　　　　　　　　　　　　　　　　　終