竜攘虎搏 Side Dragon

怜悧(サトシ)

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愛裸武勇

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 関節の痛みと酷い熱に身体が重くて、どうにかこうにか瞼をあけると、ぼんやりとした視界の中で最近やっと見慣れた天井が見える。
 あ、虎王のマンション、か。
 …………病院じゃなくてか。
 ぼんやりした頭の中で不思議に思うが、そういやトイレで軽く拭いただけで、身体も汚れたまんまだったな。
 あのまま、病院にはいけねえ、か、
 それにしても、身体が熱いし、のど、かわいた……な。
 起き上がろうとしたが、身体に力がまったく入らなくて、指1本動かすのもつらい。
 なんとか水を取りに行こうと、左腕に力を入れてみじろぐと、タイミングよくギイと扉があいて虎王が入ってくる。
「…………っ、たけお……、み、ずっ……」
 水をくれと言おうと思ったが、ガラガラで擦れて声が割れて引き攣れて痛い。
「…………士龍、起きたのか?」
 慌てて駆け寄ってきた虎王は、ベッドヘッドからペットボトルを手にして蓋をひねると、俺の手に握らせようとする。
 そんな近くに、あったのか。灯台もと暗しだ。
 指を開いて掴もうとしたが、腕に力が入らずにズルッとシーツにボトルが落ちる。
 虎王はそれを見て軽く眉をあげて俺からボトルを奪うと、蓋を開け唇に液体を含み口移しで流しこんでくる。
 虎王の変わらない優しさに、喉を鳴らして水を飲み込みながら目頭が熱くなる。
やべえ、…………泣く。
 何とか涙を止めようと思ったが、止まらない。
 なんでなのだか、自分でもよく分からない。
「士龍、ど、どうした?おい、どっか痛ぇのか?」
 心配そうに覗きこまれると、余計に苦しくて胸が痛くなる。
「…………いたく、ねーけど…………なんか、いてえよー」
 力が全然入らず、腕をなんとか伸ばして虎王の背中に回して、抱いてほしくて目を閉じる。
 辛いとか、痛いとか、そんなんはまったくねえのに。
「………どこが痛えんだよ。熱下がらねえからかな」
 そっと優しい手つきで抱き込まれて、背中をさすられると、安心したからなのか、ずっとずっしりきてた重さみたいなものがふっと軽くなっていく。                
 原因もわからないのに、涙が出て仕方がない。
 虎王は、俺の顔を見つめて濡れたタオルを目元にあてながらオロオロしている。
 ごめんな。こんなにも好きで仕方がないんだ。あんなことあって、虎王は俺をイヤになったかもしれないのに。
 身体が熱いし、頭もぼっーとしてきて脳みそもぐちゃぐちゃだ。
「心配しねえでも、オレはあんたを離さないからな」
 虎王の言葉が聞こえた気がするが、また頭の中が朦朧としてきて意識が遠くなる。
 裏切った俺は、彼に許されるはずがないと心は必死にその優しさを否定しつづけていた。

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