竜攘虎搏 Side Tiger

怜悧(サトシ)

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眞壁は驚いたように目を見開いて、軽く息をつくと灰皿をとってタバコを押し潰すように火を消した。
「……バカいってんなよ…………。セックスしてるから、オマエは勘違いしてるだけだぞ」
 掠れきった声が微かに震えていて、まるで彼自身に言い聞かせるように吐き出した言葉に、そうでなければいいといった響きを感じて胸が締め付けられる。
「勘違いじゃないし、そういうのとは……ちげえ……よ、とか、今更何言ったところで、アンタには信用されるわけねーけど」
 どう告げたら、この気持ちを信じて貰えるだろうか。
卑怯で酷いことをしまくっていたオレを、今更信じて欲しいだなんて言えるわけなどないのに。
「イライラして勢いで脅迫なんざしちまったけど……、オレはずっとアンタに憧れてて……。脅迫だってするつもりじゃなかった。なんていっても、信じられねえよ、な」
 言葉を繋げる度に言い訳がましくなってしまい、どうしていいか分からずに体を抱いている腕が震えてしまう。
このまま、オレを押しのけてこの腕を解くなんて、彼にとって容易なことだと考えると、しがみつくように強く抱き寄せる。
「だったら、一体、どうしてえの?勘違いじゃなかったらさあ。俺は、コレ以上続けるつもりなら、オマエに、一生責任とらせるぞ」
 オレの体を振りほどくでもなく、告げられた言葉はオレにとってはとても甘いものだった。
一生責任をとらせるだなんて、一生彼の傍らにいてもいいということだろうか。
 オレは眞壁の頭を抱き寄せて、その顔を真っすぐ見返した。
「わかった。一生責任とるから、オレとつきあってくれ」
 一生責任をとる。一生この人の傍にいられると思うと、声が震えて仕方がなかった。
 眞壁には好きなオンナがいて、そんなことを言っても嫌だと言われるのに違いないのに、オレはその言葉を飲み込むことはできなかったのだ。
「ったく、脅迫者から恋人にジョブチェンジしたいのかよ?」
 問い返す言葉は優しいもので、そこには拒絶など全くない。これは、期待してもいいのだろうか。それとも、これまでの腹いせに、期待して突き落とすような言葉を用意しているのだろうか。どちらにしろ、オレはただ眞壁の言葉を待つしかない。
「ああ。……ムシがいいのは分かってんだ、ケド……」
 どう告げれば、この気持ちを伝えられるだろうか。必死に考えをまとめようとしていると、ぐいっと腕を握られ、綺麗な眞壁の顔が近づいて唇をゆっくりと吸われる。
ずるっと舌先が唇の内側に入り込んで、儀式のように丹念に歯の裏を舐めて、そっと離れてじっと見返される。
「なあ、ドキドキしている?」
 あの時のように問いかけられて、オレは鼓動の速さに素直に頷くと、眞壁は緑の目を細めてふわりと笑う。
「しょーがねーな。マカベ神殿がオマエを恋人にジョブチェンジさせてやる」
 ちょっと照れたように笑みを浮かべた表情に、オレはぎゅうとその大きな体を抱き寄せて、万感の思いを告げた。
「…………士龍、好きだ、好きだ、好きだ」
なんだか泣けて泣けて仕方が無くて、抱きしめたまま泣いちまったオレを、眞壁は優しく背中を撫でてくれていた。
ようやく顔をあげると、眞壁はすっかり眠っちまったみたいで、すーすーと軽く寝息をたてている。
なんで、全部許してくれるんだろう。
そんでもって、こんな展開はありえねえだろ。
どう考えても、脅迫までした男と簡単に付き合うとか。
そりゃ、オレは嬉しすぎるんだけど、本気でそれでイイと考えてくれてるのか。

やっぱり、このヒトはなんか足りない。

それにつけこんでるってのも、自分でわかってはいる。つけこんでも、離したくはなかった。
オレの……モノだよな。
いまいち実感がとれないまま、その体を抱き締めなおしてオレはそのまま目を閉じた。

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