竜攘虎搏 Side Tiger

怜悧(サトシ)

文字の大きさ
54 / 77

54

しおりを挟む

 その後、多分3Rは楽しんだ。流石に人の家だし、汚したままもまずいなと思って、気絶した士龍をそのままに部屋の片づけをして、眠ったのは明け方近くだったかと思う。
 目が覚めると、ベッドには既に士龍がおらず焦って寝室を出ると、美味しそうな朝食の匂いが漂ってきた。
 また無理しやがってるなあと呆れてリビングに行くと、案の定士龍はキッチンに立っていた。
「撃たれたとこ、痛まないのか。痛いの嫌いだろ」
 嫌いだって言う割にはよく怪我してるなと思う。
「おはよう。たけお。そんなに痛くはないから、平気だよ」
 にこにことキラキラする笑顔を向けて、朝ごはんできたから座って食べてねと言われると、奥さんってこういうもんだよなとか思ってしまう。
「銃で撃たれて痛くねえわけねえだろ。ほんとアンタってうすら馬鹿。いいから、皿とかはオレが出すから動くな」
「へへへ。じゃあ、そうする。なんか、たけお、カッコイイ」
 でれっとした顔でそう言われるとなんだか浮足だって仕方がない。
「拉致られて助けられてるのはカッコイイっていわねえんだよ」
 皿や箸を出して、用意してくれたおかずを盛り付けて並べていくと、士龍がにこにこしながらこちらを見てくるので居心地が悪い。
「いいの。俺だけがたけおをカッコイイって思ってるから」
「おい、オレは他にはカッコいいって思われないような奴なのかよ」
 椅子に座って手の込んだ朝飯を口に含む。コンビニでは味わえないようなうまさである。
「他?あっても、耳に入れるなよ。オマエには俺だけでいいでしょう。満足させてあげるからさ」
 胸を張ってそう告げられると、今すぐその体を抱き締めたい衝動にかられる。
 まあ、昨日の今日だし少しは我慢しねえといけねえけどなあ。





「視界が黄色い」
かなりグロッキーな様子で、ハセガワは帰ってくるなりオレらの目の前のソファーにぐったり寝そべった。
全く予想もしていなかったがもしかして、ハセガワがネコなのだろうか。このカップルは。
一体SMホテルとやらで何をされたんだろう。
あの、オレのパンチすら全く効いていなかったハセガワが、ほぼ瀕死の状況である。
「ヤッちゃん、ホドホドにしないと。そりゃあ、トール君は頑丈だろうけど」
 士龍が咎めるように部屋に入ってきた日高に言うと、日高はふふふと意味深に笑う。
「ん、可愛くてね。ついついヤリ過ぎかなって思ってもガッついちゃうんだよね」
綺麗な顔でしれっと言ってのける男は、意味を考えるだけで寒気がするほど恐ろしい。
金崎の奴は、よくこんなおそろしいモノに手を出したもんだ。
女装姿は、本当にくらくらするくらいの美女だったんだけどな。
「シロたちも、オモチャで楽しんだ?」
「んー、久しぶりだったし、俺はオモチャよりたけおのちんこが欲しかったからなあ」
士龍は馬鹿正直に答えると、日高が出してくれたコーヒーを飲んでチョコをつまんでいる。
ほんとに羞恥心はどちらに出かけているんだろうか。
まあ、幼馴染だから気を許しているのかもしれない。
また日高が出してくるアイテムが、いちいちオシャレなのも似合い過ぎていてため息がでる。
流石、市内でイケメン王子と呼ばれる有名人なだけある。
噂だと狙っている芸能スカウトがいっぱいいるが、いつもぴったりとハセガワが張り付いていて声をかけられないらしい。
まあ、こんだけの美人だったら普通に一般人だってことのほうがレアだよなあ。
「そんなにイイの?えっとタケオ君の持ち物は」
ちらっと興味深そうに綺麗な顔の日高に視線を向けられて、思わずオレは顔を赤らめちまう。
なんだか、この男にそんなことを聞かれるのは恥ずかしいんだが。これは新手の羞恥プレイだろうか。
「ん。オンナの子とするよりヤミツキになっちゃうかな。めんどくさくもないしねえ。いつもオンナの子には、色々言われてめんどうになっちゃうからね」
チョコを口に放り込んで、士龍は相変わらず羞恥心をお散歩させているのか、可愛らしいことを言っている。
金色に光る髪と、甘い顔立ちと鼻や耳にジャラジャラしたピアスをした、いいガタイをした持ち主。
けして抱かれるタイプには、とても見えないだろう。
そして、あっちもだな。
目の前のソファーに寝そべって瀕死の形相でグッタリしている、無駄にデカイ身体を眺める。
「でも、たけおは可愛イイんだよな。弟だったのはビックリだけど、ほら、俺はとーちゃん似だし、たけおはたけおのかーちゃんに似てるから血が引き合ったのかもな」
「それはあるかも。トールのオヤジさんは、俺の母さんに片想いしてたし、俺は母さんにそっくりだし」
納得したような顔をして、自分の綺麗な顔を指差す。
「この顔に生まれたのは感謝だね」
ふと笑い、日高はハセガワを意味深に見つめる。
まあ、そんだけイケメンに生まれれば、親や神様に感謝もしたくなるだろうけどな。
「さて、送っていくよ。バイクにする?」
「ヤス、車だして。しばらく、バイク乗りたくねえ」
ソファーで転がっているハセガワから、覇気のない声がする。
「昨日は乗馬しすぎたからかな」
日高はハセガワの頭を軽く撫でて微笑む。
バイクにタンデムだと士龍がどっちかにくっつくし、それも気に入らない。別に何があるわけでもないが、士龍をタンデムに乗せるのはオレだけがよかったので、車と聞いて安心した。
「ヤッちゃん。オレ、とーちゃんの病院寄ってくわ。怪我の細かいところ診てもらう。かーちゃんに転んだと言い訳してもらいたいし」
いつも怪我するたびにそうしてきたのか。警察沙汰も、きっと父親からうまく言ってもらってたんだろう。
「了解。トール、いくよ」
だるそうにだがハセガワは身体を起こして、腰をあげる。
「大丈夫か?トール君は休んでたら?」
「…………ヤスを一人にはしねーよ、二度と」
ハセガワはちょっと苦い顔をして、日高の言葉に肩を竦ませた。
 確か別行動をしている時に金崎が日高を拉致したと聞いた。
それは確実に、彼にとってはトラウマになっているのかもしれない。
 オレはなんとなく、少しでも目を離したくないという気持ちが分かった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

オッサン課長のくせに、無自覚に色気がありすぎる~ヨレヨレ上司とエリート部下、恋は仕事の延長ですか?

中岡 始
BL
「新しい営業課長は、超敏腕らしい」 そんな噂を聞いて、期待していた橘陽翔(28)。 しかし、本社に異動してきた榊圭吾(42)は―― ヨレヨレのスーツ、だるそうな関西弁、ネクタイはゆるゆる。 (……いやいや、これがウワサの敏腕課長⁉ 絶対ハズレ上司だろ) ところが、初めての商談でその評価は一変する。 榊は巧みな話術と冷静な判断で、取引先をあっさり落としにかかる。 (仕事できる……! でも、普段がズボラすぎるんだよな) ネクタイを締め直したり、書類のコーヒー染みを指摘したり―― なぜか陽翔は、榊の世話を焼くようになっていく。 そして気づく。 「この人、仕事中はめちゃくちゃデキるのに……なんでこんなに色気ダダ漏れなんだ?」 煙草をくゆらせる仕草。 ネクタイを緩める無防備な姿。 そのたびに、陽翔の理性は削られていく。 「俺、もう待てないんで……」 ついに陽翔は榊を追い詰めるが―― 「……お前、ほんまに俺のこと好きなんか?」 攻めるエリート部下 × 無自覚な色気ダダ漏れのオッサン上司。 じわじわ迫る恋の攻防戦、始まります。 【最新話:主任補佐のくせに、年下部下に見透かされている(気がする)ー関西弁とミルクティーと、春のすこし前に恋が始まった話】 主任補佐として、ちゃんとせなあかん── そう思っていたのに、君はなぜか、俺の“弱いとこ”ばっかり見抜いてくる。 春のすこし手前、まだ肌寒い季節。 新卒配属された年下部下・瀬戸 悠貴は、無表情で口数も少ないけれど、妙に人の感情に鋭い。 風邪気味で声がかすれた朝、佐倉 奏太は、彼にそっと差し出された「ミルクティー」に言葉を失う。 何も言わないのに、なぜか伝わってしまう。 拒むでも、求めるでもなく、ただそばにいようとするその距離感に──佐倉の心は少しずつ、ほどけていく。 年上なのに、守られるみたいで、悔しいけどうれしい。 これはまだ、恋になる“少し前”の物語。 関西弁とミルクティーに包まれた、ふたりだけの静かな始まり。 (5月14日より連載開始)

BL 男達の性事情

蔵屋
BL
 漁師の仕事は、海や川で魚介類を獲ることである。 漁獲だけでなく、養殖業に携わる漁師もいる。  漁師の仕事は多岐にわたる。 例えば漁船の操縦や漁具の準備や漁獲物の処理等。  陸上での魚の選別や船や漁具の手入れなど、 多彩だ。  漁師の日常は毎日漁に出て魚介類を獲るのが主な業務だ。  漁獲とは海や川で魚介類を獲ること。  養殖の場合は魚介類を育ててから出荷する養殖業もある。  陸上作業の場合は獲った魚の選別、船や漁具の手入れを行うことだ。  漁業の種類と言われる仕事がある。 漁師の仕事だ。  仕事の内容は漁を行う場所や方法によって多様である。  沿岸漁業と言われる比較的に浜から近い漁場で行われ、日帰りが基本。  日本の漁師の多くがこの形態なのだ。  沖合(近海)漁業という仕事もある。 沿岸漁業よりも遠い漁場で行われる。  遠洋漁業は数ヶ月以上漁船で生活することになる。  内水面漁業というのは川や湖で行われる漁業のことだ。  漁師の働き方は、さまざま。 漁業の種類や狙う魚によって異なるのだ。  出漁時間は早朝や深夜に出漁し、市場が開くまでに港に戻り魚の選別を終えるという仕事が日常である。  休日でも釣りをしたり、漁具の手入れをしたりと、海を愛する男達が多い。  個人事業主になれば漁船や漁具を自分で用意し、漁業権などの資格も必要になってくる。  漁師には、豊富な知識と経験が必要だ。  専門知識は魚類の生態や漁場に関する知識、漁法の技術と言えるだろう。  資格は小型船舶操縦士免許、海上特殊無線技士免許、潜水士免許などの資格があれば役に立つ。  漁師の仕事は、自然を相手にする厳しさもあるが大きなやりがいがある。  食の提供は人々の毎日の食卓に新鮮な海の幸を届ける重要な役割を担っているのだ。  地域との連携も必要である。 沿岸漁業では地域社会との結びつきが強く、地元のイベントにも関わってくる。  この物語の主人公は極楽翔太。18歳。 翔太は来年4月から地元で漁師となり働くことが決まっている。  もう一人の主人公は木下英二。28歳。 地元で料理旅館を経営するオーナー。  翔太がアルバイトしている地元のガソリンスタンドで英二と偶然あったのだ。 この物語の始まりである。  この物語はフィクションです。 この物語に出てくる団体名や個人名など同じであってもまったく関係ありません。

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

先輩、可愛がってください

ゆもたに
BL
棒アイスを頬張ってる先輩を見て、「あー……ち◯ぽぶち込みてぇ」とつい言ってしまった天然な後輩の話

鬼上司と秘密の同居

なの
BL
恋人に裏切られ弱っていた会社員の小沢 海斗(おざわ かいと)25歳 幼馴染の悠人に助けられ馴染みのBARへ… そのまま酔い潰れて目が覚めたら鬼上司と呼ばれている浅井 透(あさい とおる)32歳の部屋にいた… いったい?…どうして?…こうなった? 「お前は俺のそばに居ろ。黙って愛されてればいい」 スパダリ、イケメン鬼上司×裏切られた傷心海斗は幸せを掴むことができるのか… 性描写には※を付けております。

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

Take On Me

マン太
BL
 親父の借金を返済するため、ヤクザの若頭、岳(たける)の元でハウスキーパーとして働く事になった大和(やまと)。  初めは乗り気でなかったが、持ち前の前向きな性格により、次第に力を発揮していく。  岳とも次第に打ち解ける様になり…。    軽いノリのお話しを目指しています。  ※BLに分類していますが軽めです。  ※他サイトへも掲載しています。

灰かぶりの少年

うどん
BL
大きなお屋敷に仕える一人の少年。 とても美しい美貌の持ち主だが忌み嫌われ毎日被虐的な扱いをされるのであった・・・。

処理中です...