竜攘虎搏 Side Tiger

怜悧(サトシ)

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士龍が入院して三日が経った。昨日手術が成功して、朝なら面会してもいいと父親から連絡がきた。
士龍の病室へ見舞いに行ったが、まだ薬が効いているとかで半覚醒のような様子で、少ししゃべった後に遅刻して学校へ向かった。
教室に入ると、なにやら様子がおかしい。
授業は始まっているが教室には、パラパラとしか生徒がいない。
オレはカバンを机に置くと、教室を出て隣の教室の扉を開いた。
オレのクラスと同じように生徒がまばらにしかいない。
スマホを取り出すが、誰からもメールも何もきてない。
何かがおかしい。
あたりを見回して廊下に出るが、いつもの空気ではない。
「なんかお探し物ですかあ、キャハ」
耳もとで歌うように囁かれ、思わず身体を飛びのかせて声のした方向へと拳をたたきつける。
「おっとお。あっぶなーい。さっすが武闘派だよね、キャハ」
顔を上げると糸目にニコニコと張り付けた嘘くさい笑顔で三年の峰さんが立っている。
この人はいつ見ても胡散臭い笑顔でかなり苦手だ。
峰さんがってことは、小倉派が動いている?
どういうことだ。
「なんですか、峰さん。ここは二年の校舎っすよ」
オレは少し身構えて視線を外さないように、じっと見返す。
隙を見せたら最後、何をされるか分からない人だ。
「オマエのトコのガキども、金崎んとこと体育館裏で小競り合いしてんぜ。俺は優しい先輩だから教えてあげにきたんだ」
優しい先輩とか、まったく信用に値しない言葉。
「それはそれは、ありがとうございます」
社交辞令の何の意味もない礼を告げる。
「ああ、それと機密情報だけど、ウチの二年は今後金崎につくことになったから」
オレに言ってる時点で機密でもなんでもない。
峰さんはにやっと笑い、オレの反応と出方を伺っているようだ。
二年の半分は眞壁派だが、残りの半分はオレと金崎と内添と小倉さんのとこと殆ど人数は変わらなかった。
今、この時点で二年の四分の一がいま、金崎派ということになる。
士龍がオレにつくとは言っているから、オレの方に分はあるが、士龍は入院しているので、援軍を頼むのは筋じゃない。
いきなり襲われて、倍の人数じゃあさすがに対抗できないな。
「峰ちゃあん、それは抜け駆けじゃなーい?」
ノリの軽い言葉に後ろを振り返ると、オールバックに撫で付けた髪に顎鬚姿で、少しカッコつけた歩き方で村澤さんがオレに向かって歩いてくる。
「将兵?なんだ、士龍ちゃんだけでなく、テメェまでこの坊やにつくのか?」
「そりゃね。ウチの大将の大事なイロだからねェ。コイツになんかあったら、どうせ大将がイノシシみたいに突っ込んでいくだろうし。まあ、コイツのとこのヤツらは元々ウチの離反組だしな」
イロとかまるでヤクザみたいな言い草だなと思っていると、村澤さんはひょいと峰さんとオレ間に入り込み、峰さんの胸元に軽く腕をかける。
「富田、仲間助けてこい。峰は俺が止めとく」
真面目な声で耳もとで囁かれ、オレは峰さんの相手を村澤さんに任せてすぐに走り出した。




体育館裏まで全力疾走で駆けつけると、オレの仲間たちがうずくまったり、倒れたりしていた。
武闘派と呼ばれている仲間達が、ここまでやられてるとは。
数が問題なのか、金崎のとこに強い奴がいたか?
金崎のヤツらは引いたのか、あたりに見あたらない。
「おいッミヤ!……カズ!?」
幹部の二人は集中的にかなり酷くヤラれているようで、倒れている制服が泥だらけで、血が飛び散っている。
三門の方はまだ自力で立ち上がろうとしてたので、オレは慌てて屈むと元宮を抱き起こした。
「大丈夫か!救急車呼んで、病院行くか!?」
元宮は朦朧とした表情でオレを見上げると、首を左右に振って目を見開くと必死に声をあげて叫ぶ。
「タケちゃ、……にげろ、ま、ま、まだ、隠れて、から!」
オレの胸板を叩く元宮に、目をあげると、総勢三十人くらいのヤツらが金属バットをもって背後から襲いかかってくる。
引いてない。
すぐに元宮を降ろして立ち上がりざまに、二、三人を一気に殴るが体勢を崩したままだったのが災いして、身体の動きが鈍くなる。
「死ねや、富田」
途端にぐあんと頭の上に釘バットがめり込み、腕で払うが、血がダラダラと額から落ちてくる。
「く……ッ、不意打ちとか卑怯くねーか?」
回し蹴りを食らわせ、クラクラする頭を押さえながら周囲を見回す。どこかに隙はないだろうか。
「あらあら、髪の毛どころか顔面まで真っ赤にしちゃって、かわいーねぇ。知ってる?富田。世の中卑怯だろうがなんだろうが、勝った方が正しいんだよ」
釘バットを担いで、集団の先頭に立っているのは小倉さんだ。
さっき峰さんが出てきた時に、気がつけば良かった。
小倉さんの狙いは明らかにオレだ。
明らかに八つ当たり。オレはまた仲間を巻き込んでしまった。
血が目に入ってよく見えねェけど、アッチの二十五人ほどの兵隊はまだピンピンしてやかる。
「とーみた君、どうする?ねえ、キミさあ、この人数相手に一人でヤれんの?」
ニヤニヤと面白がるように笑う小倉さんの笑顔は、明らかに勝ちを確信した笑み。 
だけど、このまま引くわけにはいかない。
「これ以上、仲間に手はださせねェ」
倒した奴が落としたバットを拾うと、オレは小倉さんの胸元に飛び込む。
小倉さんは士龍よりは強くはないが、それでもトップを張れるだけの力はある。
手負いの上、オレには正常な判断は……できない。
どうにか活路を見出そうとバットを振り上げ、小倉さんの頭の上へと振り降ろす。
すっと背後から気配がして、口と鼻がタオルで塞がれる。

甘ったるい匂いと共に視界が狭くなって、目を開けてようと見開くが瞼が重くなり、真っ暗な中に放り出された。

 卑怯だろうが、勝った方が……正しい……。
そりゃあ真理だろうけど、こんな卑怯なクズにこのまま負けてしまうのが、悔しかった。


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