ゆけゆけ!スペース☆ハンター

怜悧(サトシ)

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Misson 2 未開惑星の罠

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『発射可能。エド母艦の操縦室に確認をとれ』
満足げに頷いているカートに視線をやり、エドは操縦桿のハッチを開けた。
「了解。デルファ、重力システムの強化を頼む」
『諾』
無感情な応答にもだいぶ慣れてきたと、エドは思う。
彼の昔を記憶しているからこそ、苦しくもなる。
昔の姿を思い出さなければ、切なさも消えるというのに。
だけど、忘れてしまうのは……忘れたくないと足掻いているのはオレの弱さだな。
「発射準備に入る。リョク、惑星との距離と位置関係をロードしたか」
『処理済よ。気を付けてね、無茶だけはしちゃ駄目よ……貴方は無理をしがちだもの』
優しく気遣いのあるリョクの声がスピーカーから流れてくる。
「俺様が無茶しようにも……無茶苦茶な奴が一緒だからな」
すべての安全ロックを確認してから、エドは操縦桿を握り込んだ。
「五秒後に発射準備に入る。カウント頼む」
『フロントロック解除、発進口確保。進行方向座標に異物なし』
無機質なデルファの感情のない声が響く。
「発射」
発射時の爆発的な音と振動が体を揺さぶり、小型艇が母艦から宇宙空間へと吐き出された。
カートは操縦桿の前に座るエドをちらっと見返して、表情を暗くしたまま問いかける。
「ドクターが作らされていたマシンって……人を殺す道具?」
「そうだね。……彼はマッドサイエンティストと呼ばれるようになったよ。一般的に元々狂っている科学者をそう呼ぶのにな。アイツは優しいやつだった……だから、自分の作ったマシンで大量虐殺が行われるのに正気でなんかいられなかったんだ」
静かな声で語るエドの様子にカートは眉根を寄せた。
"バトラーは、情を忘れないと苦しむぜ"
戦いの前にはすべて消え失せる。
それがわかっていたから、あんなにも互いをいたわりあえた。
罪悪感などなくさなければ、自分が死ぬしか道はない。
「なんか、ドクターの気持ち、俺分かる気がする」
眼前のスクリーンに迫ってくる緑色の未開惑星を眺めて、カートは呟くように漏らした。
「……分かってないね。お前とアイツは違う」
カートの言葉を否定するようにエドは口を挟んだ。
その言葉に言い返そうと、カートが言葉を探すのを遮るように手をあげて、首を横に振った。
「もう、アイツには組織に捕まる以前の記憶も何もかもないんだ。正気だけじゃなく、何もかもないんだ。アイツの気持ちなんて何もないんだ。消されたのか、自分で消したのか……物の善悪なんて、もうアイツには判断できない」
カートの考えをすべて打ち消して、エドは肩を軽く落とした。
善悪。
善悪なんてありすぎるほどあた。仲間を一人殺すたびに、引き裂かれそうな気持ちでいっぱいだった。
すべて忘れてしまいたいとも思った。
だけど、だれも殺さなかったころの自分には戻れなかった。
イゼルを殺したその瞬間に、すべて……全部書き換えられた。
「なんだよ……。それ、まるで俺は救いようがねえみたいじゃねえか……。そうだよ、俺は善悪なんかわかってて人を殺して生き残ってきたよ。アンタはそれを知ってて、どうして……俺を助けたんだよ」
コロシアムから瀕死で逃げてきた自分を、エドが救わなければ、そこで死んでいた。
カートは縋るようにエドを見上げた。
たとえ、縋ったとしても、この男が自分に手を差し伸べるような性格ではないことは十分承知していたけれども。
「……俺様はただの医者だ。残念だが、人を裁く神じゃない。死にかけた人間らしいものを、放置できなかっただけだ」
「……誰も……殺したくなんかなかった」
ギャンブルの駒でも良かった。
自分の手を汚すまでは。
早く自由の身になって、攫われた姉を早く救い出したいとばかり考えていた。
人を殺しても、手に入れられたものなんて……何一つなかった。
自分一人の自由もなにも、なかった。
カートは顔面を手で覆うと、ギリッと奥歯が砕けるほど噛み締めた。
「……だからさ、お前の方がデルファより可哀想だ。善悪があって、ちゃんと感情もあって……人として生きた記憶があるんだからさ」
ぽんっとカートの真っ赤な頭の上に、エドの掌が慰めるかのように置かれる。
慰めてくれているのかと聞いたら、きっと鼻で笑って丁度いい肘置きがあっただけなどと言いそうだ。
結局のところ、記憶も感情もなにもないドクターの気持ちなどは、カートには理解などできるはずもないと言っているのだ。
また、エド自身もその気持ちなど到底わからないのだろう。
エドは以前カートにドクターのことを幼馴染だと紹介した。
昔のことをなにも覚えていないというのだから、きっとドクターはエドのことも忘れてしまったのだろう。
少し寂しそうに語ったエドをカートはちらっと見上げて、口を開く。
「なあ……ドクターのことで、一番傷ついているのはアンタだろ」
「傷ねえ?なあ、お前は俺様がそんなことで傷つくようなやわなハートの持ち主だと思ってるのか。……生きてるだけで充分だけどね。そろそろ大気圏に突っ込むよ」
必死で操縦桿を握って着陸態勢に入っているエドの表情が曇るのをカートは確認すると、それ以上この話を聞くのをやめることにした。




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