4 / 36
4
しおりを挟む
薄暗い路地に入っていく背中を追い、シェンは昨日と同じ轍を踏まないとばかりに実弾銃を手にする。
光線銃であれば、反射や防光服など着られてしまっていてはかなわない。
統久は経験値はかなり高そうなので、右に倣えをする方がいい。
「潜入捜査だからな、別にここでドンパチはしかけねえよ、とりあえず情報屋と会うから、入れ」
顎先でさされたのは安いモーテルである。
流石に一瞬ためらうが、一緒に中に入ると無愛想な受付けが身分証を提示しろとリーダーを指さす。
男とモーテルとか罰ゲームだろ。
ため息をついてリーダーに腕につけたIDをかざして、統久の後ろをついていき、部屋に入る。
部屋の中は薄暗く淡い紫の壁紙と、キングサイズのベッドがこれみよがしに置いてある。
「シンジケートが動いたことは分かっているが、まだ、その場所や詳しい情報は得ていない。報酬を先渡ししろと言われてるんでな」
「はあ。それで情報屋とここで待ち合わせですか」
ソファーに座ると、何故か雰囲気に落ち着かなそうにシェンは銃に弾を装填し直す。
「シェン、お前は情報を得たら、すぐに潜入して欲しい。こっちは、囮捜査の準備にかかる」
「.....オレは単独行動ってわけですか」
シェンの表情が曇り、奥歯がギリギリと鳴って苛立ったように爪を噛む。
「潜入は単独の方が危険はないし、お前の経歴は見させてもらったよ。カルハード作戦に参加したそうだな」
「オレは敵に捕まっちまいましたがね」
ハッと笑うと、シェンは嫌なことを思い出したかのように僅かに眉を寄せる。
「それも知っている。しかし、あの作戦はお前の動きがなければ成功しなかっただろ。上が評価しなくとも、俺はそう評価するし、俺がコンビに指名したのもそれが理由だ」
「だったら.....オレが上官を信用できないのもわかるよな。悪いのですが、この件から降ろさせてください」
拳をグッと握ったシェンは、酷く激昂したように統久に詰め寄った。
カルハード作戦。
それは、テロ組織を壊滅させるため、3名の潜入攪乱捜査をおこなった作戦である。
その作戦はすぐに組織にバレてしまい、二人捕えられた時点で作戦は失敗していた。
しかし捕まった中の1人が自ら逃亡して、その際にテロ組織を壊滅に追い込んだ。
主格のパイロン·キムは、この成功の功績で金の勲章を与えられ今は西地区の総督を任されている。
しかし、その組織を壊滅に追い込んだ最功労を遂げたのが、シェン·リァウォーカーである。
何故か彼は叙勲されずに、逆に規律を破ったとして左遷されたのである。
「二度と他人の駒になるのは嫌なのでね」
言い捨てて、部屋を去ろうとシェンはソファーから立ち上がる。
「カルハード作戦の真相までは分からないが、上官命令だ。と言ってもか」
問いかけにすぐに頷き、煩そうに眉を寄せるシェンに統久は肩を聳やかす。聞く耳もたずのようである。
「アンタだって、自分が危なくなれば部下など見捨てで逃げるだろう」
「そんなつもりはないが言葉じゃなんとでも言えるよな。じゃあ、シェン·リァウォーカー、取り引きをしよう。前金でこの仕事を受けてくれ」
統久はポケットから、小さいチップを取り出してシェンに手渡す。
「なんだよ、コレ」
チップに手を翳すと、シェンが手にしたことがないような金額が表示される。
「俺は今、規約違反をしてお前を買収してんだ。この金はお前にやるし、俺がお前を裏切ったならこの事実を訴えればいい。成功すれば、叙勲も功労もお前にやろう。だから手を貸してくれ。俺はこの仕事にかけている」
ここで逃げて金だけ手に入れても、警備隊で働くよりいい生活はできる。
別にそれでもかまわないと統久は言っているのだ。
「アンタにメリットはないだろ」
胡散臭そうにチップを胸元に入れながら、シェンは様子を伺う。
「いや、今回のシンジケートを潰さなければ、俺は前にすすめない」
覚悟を決めたような言葉に、シェンはため息をつきながら肩を落とす。
「よくわからねえけど、あくまでも信用じゃなく金の上の取り引きだって言うなら、受けてやるよ」
その時、部屋の外からの来客のコール音が響いた。
光線銃であれば、反射や防光服など着られてしまっていてはかなわない。
統久は経験値はかなり高そうなので、右に倣えをする方がいい。
「潜入捜査だからな、別にここでドンパチはしかけねえよ、とりあえず情報屋と会うから、入れ」
顎先でさされたのは安いモーテルである。
流石に一瞬ためらうが、一緒に中に入ると無愛想な受付けが身分証を提示しろとリーダーを指さす。
男とモーテルとか罰ゲームだろ。
ため息をついてリーダーに腕につけたIDをかざして、統久の後ろをついていき、部屋に入る。
部屋の中は薄暗く淡い紫の壁紙と、キングサイズのベッドがこれみよがしに置いてある。
「シンジケートが動いたことは分かっているが、まだ、その場所や詳しい情報は得ていない。報酬を先渡ししろと言われてるんでな」
「はあ。それで情報屋とここで待ち合わせですか」
ソファーに座ると、何故か雰囲気に落ち着かなそうにシェンは銃に弾を装填し直す。
「シェン、お前は情報を得たら、すぐに潜入して欲しい。こっちは、囮捜査の準備にかかる」
「.....オレは単独行動ってわけですか」
シェンの表情が曇り、奥歯がギリギリと鳴って苛立ったように爪を噛む。
「潜入は単独の方が危険はないし、お前の経歴は見させてもらったよ。カルハード作戦に参加したそうだな」
「オレは敵に捕まっちまいましたがね」
ハッと笑うと、シェンは嫌なことを思い出したかのように僅かに眉を寄せる。
「それも知っている。しかし、あの作戦はお前の動きがなければ成功しなかっただろ。上が評価しなくとも、俺はそう評価するし、俺がコンビに指名したのもそれが理由だ」
「だったら.....オレが上官を信用できないのもわかるよな。悪いのですが、この件から降ろさせてください」
拳をグッと握ったシェンは、酷く激昂したように統久に詰め寄った。
カルハード作戦。
それは、テロ組織を壊滅させるため、3名の潜入攪乱捜査をおこなった作戦である。
その作戦はすぐに組織にバレてしまい、二人捕えられた時点で作戦は失敗していた。
しかし捕まった中の1人が自ら逃亡して、その際にテロ組織を壊滅に追い込んだ。
主格のパイロン·キムは、この成功の功績で金の勲章を与えられ今は西地区の総督を任されている。
しかし、その組織を壊滅に追い込んだ最功労を遂げたのが、シェン·リァウォーカーである。
何故か彼は叙勲されずに、逆に規律を破ったとして左遷されたのである。
「二度と他人の駒になるのは嫌なのでね」
言い捨てて、部屋を去ろうとシェンはソファーから立ち上がる。
「カルハード作戦の真相までは分からないが、上官命令だ。と言ってもか」
問いかけにすぐに頷き、煩そうに眉を寄せるシェンに統久は肩を聳やかす。聞く耳もたずのようである。
「アンタだって、自分が危なくなれば部下など見捨てで逃げるだろう」
「そんなつもりはないが言葉じゃなんとでも言えるよな。じゃあ、シェン·リァウォーカー、取り引きをしよう。前金でこの仕事を受けてくれ」
統久はポケットから、小さいチップを取り出してシェンに手渡す。
「なんだよ、コレ」
チップに手を翳すと、シェンが手にしたことがないような金額が表示される。
「俺は今、規約違反をしてお前を買収してんだ。この金はお前にやるし、俺がお前を裏切ったならこの事実を訴えればいい。成功すれば、叙勲も功労もお前にやろう。だから手を貸してくれ。俺はこの仕事にかけている」
ここで逃げて金だけ手に入れても、警備隊で働くよりいい生活はできる。
別にそれでもかまわないと統久は言っているのだ。
「アンタにメリットはないだろ」
胡散臭そうにチップを胸元に入れながら、シェンは様子を伺う。
「いや、今回のシンジケートを潰さなければ、俺は前にすすめない」
覚悟を決めたような言葉に、シェンはため息をつきながら肩を落とす。
「よくわからねえけど、あくまでも信用じゃなく金の上の取り引きだって言うなら、受けてやるよ」
その時、部屋の外からの来客のコール音が響いた。
0
あなたにおすすめの小説
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
ユキ・シオン
那月
BL
人間の姿をした、人間ではないもの。
成長過程で動物から人間に変わってしまう”擬人化種”の白猫青年と、16歳年上のオッサンとのお話。
出会ったのは猫カフェ。白猫従業員としての青年と客としてやってきたオッサン。
次に再会したのは青年が人間として通う大学。オッサンは保健室の先生だった。
青年が金のためにヤバいことをしていて、あるトラブルが起こる。
そこへ見計らったかのようにオッサンが飛び込んで救出したのをきっかけに2人の距離は縮まり……
※表紙絵は自作。本編は進むにつれてどんどん動物園と化します(笑)
白花の檻(はっかのおり)
AzureHaru
BL
その世界には、生まれながらに祝福を受けた者がいる。その祝福は人ならざるほどの美貌を与えられる。
その祝福によって、交わるはずのなかった2人の運命が交わり狂っていく。
この出会いは祝福か、或いは呪いか。
受け――リュシアン。
祝福を授かりながらも、決して傲慢ではなく、いつも穏やかに笑っている青年。
柔らかな白銀の髪、淡い光を湛えた瞳。人々が息を呑むほどの美しさを持つ。
攻め――アーヴィス。
リュシアンと同じく祝福を授かる。リュシアン以上に人の域を逸脱した容姿。
黒曜石のような瞳、彫刻のように整った顔立ち。
王国に名を轟かせる貴族であり、数々の功績を誇る英雄。
奇跡に祝福を
善奈美
BL
家族に爪弾きにされていた僕。高等部三学年に進級してすぐ、四神の一つ、西條家の後継者である彼が記憶喪失になった。運命であると僕は知っていたけど、ずっと避けていた。でも、記憶がなくなったことで僕は彼と過ごすことになった。でも、記憶が戻ったら終わり、そんな関係だった。
※不定期更新になります。
オメガ修道院〜破戒の繁殖城〜
トマトふぁ之助
BL
某国の最北端に位置する陸の孤島、エゼキエラ修道院。
そこは迫害を受けやすいオメガ性を持つ修道士を保護するための施設であった。修道士たちは互いに助け合いながら厳しい冬越えを行っていたが、ある夜の訪問者によってその平穏な生活は終焉を迎える。
聖なる家で嬲られる哀れな修道士たち。アルファ性の兵士のみで構成された王家の私設部隊が逃げ場のない極寒の城を蹂躙し尽くしていく。その裏に棲まうものの正体とは。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる