炎上ラプソディ 

怜悧(サトシ)

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薄暗い路地に入っていく背中を追い、シェンは昨日と同じ轍を踏まないとばかりに実弾銃を手にする。
光線銃であれば、反射や防光服など着られてしまっていてはかなわない。

統久は経験値はかなり高そうなので、右に倣えをする方がいい。

「潜入捜査だからな、別にここでドンパチはしかけねえよ、とりあえず情報屋と会うから、入れ」

顎先でさされたのは安いモーテルである。
流石に一瞬ためらうが、一緒に中に入ると無愛想な受付けが身分証を提示しろとリーダーを指さす。
男とモーテルとか罰ゲームだろ。
ため息をついてリーダーに腕につけたIDをかざして、統久の後ろをついていき、部屋に入る。
部屋の中は薄暗く淡い紫の壁紙と、キングサイズのベッドがこれみよがしに置いてある。

「シンジケートが動いたことは分かっているが、まだ、その場所や詳しい情報は得ていない。報酬を先渡ししろと言われてるんでな」
「はあ。それで情報屋とここで待ち合わせですか」
ソファーに座ると、何故か雰囲気に落ち着かなそうにシェンは銃に弾を装填し直す。

「シェン、お前は情報を得たら、すぐに潜入して欲しい。こっちは、囮捜査の準備にかかる」
「.....オレは単独行動ってわけですか」
シェンの表情が曇り、奥歯がギリギリと鳴って苛立ったように爪を噛む。
「潜入は単独の方が危険はないし、お前の経歴は見させてもらったよ。カルハード作戦に参加したそうだな」
「オレは敵に捕まっちまいましたがね」
ハッと笑うと、シェンは嫌なことを思い出したかのように僅かに眉を寄せる。
「それも知っている。しかし、あの作戦はお前の動きがなければ成功しなかっただろ。上が評価しなくとも、俺はそう評価するし、俺がコンビに指名したのもそれが理由だ」
「だったら.....オレが上官を信用できないのもわかるよな。悪いのですが、この件から降ろさせてください」
拳をグッと握ったシェンは、酷く激昂したように統久に詰め寄った。


カルハード作戦。

それは、テロ組織を壊滅させるため、3名の潜入攪乱捜査をおこなった作戦である。

その作戦はすぐに組織にバレてしまい、二人捕えられた時点で作戦は失敗していた。
しかし捕まった中の1人が自ら逃亡して、その際にテロ組織を壊滅に追い込んだ。
主格のパイロン·キムは、この成功の功績で金の勲章を与えられ今は西地区の総督を任されている。
しかし、その組織を壊滅に追い込んだ最功労を遂げたのが、シェン·リァウォーカーである。

何故か彼は叙勲されずに、逆に規律を破ったとして左遷されたのである。

「二度と他人の駒になるのは嫌なのでね」
言い捨てて、部屋を去ろうとシェンはソファーから立ち上がる。
「カルハード作戦の真相までは分からないが、上官命令だ。と言ってもか」
問いかけにすぐに頷き、煩そうに眉を寄せるシェンに統久は肩を聳やかす。聞く耳もたずのようである。

「アンタだって、自分が危なくなれば部下など見捨てで逃げるだろう」
「そんなつもりはないが言葉じゃなんとでも言えるよな。じゃあ、シェン·リァウォーカー、取り引きをしよう。前金でこの仕事を受けてくれ」
統久はポケットから、小さいチップを取り出してシェンに手渡す。
「なんだよ、コレ」
チップに手を翳すと、シェンが手にしたことがないような金額が表示される。
「俺は今、規約違反をしてお前を買収してんだ。この金はお前にやるし、俺がお前を裏切ったならこの事実を訴えればいい。成功すれば、叙勲も功労もお前にやろう。だから手を貸してくれ。俺はこの仕事にかけている」
ここで逃げて金だけ手に入れても、警備隊で働くよりいい生活はできる。
別にそれでもかまわないと統久は言っているのだ。
「アンタにメリットはないだろ」
胡散臭そうにチップを胸元に入れながら、シェンは様子を伺う。

「いや、今回のシンジケートを潰さなければ、俺は前にすすめない」
覚悟を決めたような言葉に、シェンはため息をつきながら肩を落とす。

「よくわからねえけど、あくまでも信用じゃなく金の上の取り引きだって言うなら、受けてやるよ」

その時、部屋の外からの来客のコール音が響いた。
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