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15話
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お化け一行のお化け屋敷見学が終わると、月は空の頂点を退いていた。
「そろそろ、帰ろう。日が昇る前に戻った方がいい」
子供のように駄々をこねてみたいが、子供でも成功しないことはやっても意味ないだろう。
「そうだね」
いきなり体に魂が戻る訳ではなく、帰り道という余韻があることに感謝をする。
「それなら、これを持って行ってください」
山彦からルークへと怪し気な光が移った。
魔法かな?
「夢を操作できる魔法です。僕が昼に見た光景と共に渡しました。戻ったら香奈さんに使ってあげてください。きっと、夢の中で楽しめると思います」
「ありがとう」
そうか、これから夢をみるのか。
「ぜひ、俺達の遊園地ができたら遊びにに来てくださいね」
完全に吹っ切れたハヤトの笑顔が辺りを明るくする。
死んで幽霊になれたら彼らの遊園地で成仏をしよう。それか、わたしも手伝わせてもらおう。死んで初めて生まれるわたしには希望が溢れてきた。
「うん。絶対」
ルークの姿が変わる。もう、本当に別れの時だ。
「あっ。そうだ。もしよければ、マスコットキャラクター、考えてください。ハヤトさんも絵を描くのは苦手みたいなんで」
「……わかった。期待はしないでね」
わたしもキャラクターなんて描いたことはない。でも、絵を描く紙は沢山あるから。
ゆっくりとルークが空へと連れていく。いつまでも二人は手を振っていてくれていた。
「少しは楽しめたか?」
「うん。ありがとう」
普段通り世界を触れるようになっても、風はわたしを通り抜ける。
右手を広げて伸ばす。どんなに意識しても、いつもと変わらず風を掴むことはできなった。
「また、来てくれる?」
「行ってもいいなら」
「じゃあ、来て。だってさ、ルークが居ないと、わたしの思い出が夢と変わらなくなっちゃうから」
空いた右手がポン、ポンとルークの背中の上で跳ねる。
「病院に戻るまで眠るといい」
「まだ幽霊なのに?」
「体だけでなく心も疲労する。少しでも休ませておいた方がいい」
「わかった」
大きな背中に倒れこむ、まだ眠れそうにはない。
「一つだけ聞いていい?」
「いくらでも聞いてるじゃないか」
わたしは微笑んだ。ルークの表情はわからない。
「そうだね。じゃあ、もし、わたしがあそに降りたいって言わなかったら、何処に連れて行ってくれたの?」
ふと思い出した。どうでもいいことを。
「海に行こうとしてた。行ったことは?」
「ないよ。でも、どうして?」
「好きだから」
そうなんだ。
「今の時代なら感動できないかもしれないが、海から離れた場所に生まれた私にとっては魔物と変わらない存在だったんだ」
煌びやかに輝いていた街も流石に寝静まり、僅かな車だけが働く。
「多分、人間のままだったら、見たいと思いながら死んでいたと思う」
今日くらいは、もう少し、疲れてもいいのに。
「人の道から外れた結果だ」
いつの間にか、わたしは眠りについていた。
「そろそろ、帰ろう。日が昇る前に戻った方がいい」
子供のように駄々をこねてみたいが、子供でも成功しないことはやっても意味ないだろう。
「そうだね」
いきなり体に魂が戻る訳ではなく、帰り道という余韻があることに感謝をする。
「それなら、これを持って行ってください」
山彦からルークへと怪し気な光が移った。
魔法かな?
「夢を操作できる魔法です。僕が昼に見た光景と共に渡しました。戻ったら香奈さんに使ってあげてください。きっと、夢の中で楽しめると思います」
「ありがとう」
そうか、これから夢をみるのか。
「ぜひ、俺達の遊園地ができたら遊びにに来てくださいね」
完全に吹っ切れたハヤトの笑顔が辺りを明るくする。
死んで幽霊になれたら彼らの遊園地で成仏をしよう。それか、わたしも手伝わせてもらおう。死んで初めて生まれるわたしには希望が溢れてきた。
「うん。絶対」
ルークの姿が変わる。もう、本当に別れの時だ。
「あっ。そうだ。もしよければ、マスコットキャラクター、考えてください。ハヤトさんも絵を描くのは苦手みたいなんで」
「……わかった。期待はしないでね」
わたしもキャラクターなんて描いたことはない。でも、絵を描く紙は沢山あるから。
ゆっくりとルークが空へと連れていく。いつまでも二人は手を振っていてくれていた。
「少しは楽しめたか?」
「うん。ありがとう」
普段通り世界を触れるようになっても、風はわたしを通り抜ける。
右手を広げて伸ばす。どんなに意識しても、いつもと変わらず風を掴むことはできなった。
「また、来てくれる?」
「行ってもいいなら」
「じゃあ、来て。だってさ、ルークが居ないと、わたしの思い出が夢と変わらなくなっちゃうから」
空いた右手がポン、ポンとルークの背中の上で跳ねる。
「病院に戻るまで眠るといい」
「まだ幽霊なのに?」
「体だけでなく心も疲労する。少しでも休ませておいた方がいい」
「わかった」
大きな背中に倒れこむ、まだ眠れそうにはない。
「一つだけ聞いていい?」
「いくらでも聞いてるじゃないか」
わたしは微笑んだ。ルークの表情はわからない。
「そうだね。じゃあ、もし、わたしがあそに降りたいって言わなかったら、何処に連れて行ってくれたの?」
ふと思い出した。どうでもいいことを。
「海に行こうとしてた。行ったことは?」
「ないよ。でも、どうして?」
「好きだから」
そうなんだ。
「今の時代なら感動できないかもしれないが、海から離れた場所に生まれた私にとっては魔物と変わらない存在だったんだ」
煌びやかに輝いていた街も流石に寝静まり、僅かな車だけが働く。
「多分、人間のままだったら、見たいと思いながら死んでいたと思う」
今日くらいは、もう少し、疲れてもいいのに。
「人の道から外れた結果だ」
いつの間にか、わたしは眠りについていた。
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