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廃教会
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この前さ、ツレのタツと、ちょっとヤバいとこ見つけちまって…。
いや、見つけたっていうか、噂を聞いて、好奇心で行ってみたんだけど。
マジで、行くんじゃなかったって後悔してる。
日曜の午後だったかな。天気は良くてさ。
新宿からそう遠くない場所に、誰も近づかない、古い廃教会があるって話を聞いたんだ。
なんでも、昔、何か事件があったとか、ないとか…。
まあ、よくある都市伝説みたいなもんだろって、タツと二人で、面白半分で行ってみることにしたんだよ。
ナビ頼りに細い路地とか入ってったら、あった。マジで。
住宅街の、ちょっと奥まった、木々に囲まれた場所に、ぽつんと。
レンガ造りの、たぶん昔は綺麗だったんだろうなって感じの、小さな教会。
でも、今はもう、蔦が壁一面に絡みついてて、窓ガラスはほとんど割れてるか、板で打ち付けられてる。
鉄の門も錆び付いてて、敷地内は雑草が生い茂って、荒れ放題。
昼間なのに、そこだけ、空気がどんより重くて、妙に静かなんだ。
「…マジで廃墟じゃん」タツが呟く。
「入ってみっか?」俺が言うと、タツはちょっと顔を引きつらせてたけど、結局、錆びた門をギィ…って押して、敷地内に入った。
教会の周りをぐるっと回ってみる。
ほとんどの窓は、中が見えないようにされてた。
でも、一箇所だけ、ステンドグラスが嵌ってたであろう窓枠が、外れてて、中の暗闇が覗いてる場所があったんだ。
風もないのに、そこから、ふっと、カビ臭いような、古い木の匂いが漂ってきた。
「…なあ、何か音しないか?」タツが小声で言った。
耳を澄ます。
………んん………。
最初は分からなかったけど、確かに、教会の奥の方から、何か、低い、唸るような音が、かすかに聞こえる気がする。
オルガン? いや、もっと、こう、生き物の呻き声みたいな…。
「俺、見てくるわ」
タツが、その外れた窓枠に近づいて、中を覗き込もうとした。
俺も、その後ろから、ドキドキしながら見てた。
タツが、数秒、中を覗き込んでたけど、急に「うわっ!」って小さい声出して、飛びのいたんだよ。
「どうした!?」って聞いたら、顔真っ青にして、
「い、いや…なんか、奥の方で、黒い何かが、動いた気がして…気のせいかもだけど…」って。
俺も、じゃあ俺が見るって、交代して窓枠から中を覗き込んだ。
中は、やっぱり薄暗くて、埃っぽくて、蜘蛛の巣だらけだった。
長椅子が何列か並んでて、正面には、たぶん祭壇があったんだろうなって場所が見える。
別段、何も…って思った瞬間。
祭壇のあたりに、スーッと、誰かが立った気がしたんだ。
背の高い、痩せた、黒い人影。
顔とか全然わかんない。本当に、影、そのもの。
それが、こっちを、じっと見てる。
瞬きしたら、もう、消えてた。
「……何も、いねえよ。暗くてよく見えねえだけだ」
俺、とっさに嘘ついた。タツを怖がらせちゃ悪いと思って。
でも、心臓はバクバクいってた。
「そ、そうか…ならいいけど…」
タツも、まだ顔色が悪い。
「なあ、もう帰ろうぜ。なんか、ここ、マジでヤバい感じするわ」
俺も同意して、二人で足早に、元来た門の方へ向かったんだ。
敷地を出る直前だった。
——— ドン……。
教会の、中から。
何か重いものが、床に落ちたような、鈍い音が、一度だけ、響いた。
俺とタツは、ビクッとして顔を見合わせる。
そして、
教会の、板で打ち付けられた、正面の大きな扉。その内側から、
——— コン………コン………コン………。
ゆっくりと、重々しく、扉を叩く音が、三度、聞こえたんだ。
まるで、「待て」とでも言うように。あるいは、「気づいているぞ」とでも。
俺たちは、もう、何も言わずに、全力でそこから逃げ出した。
途中、何度か後ろを振り返ったけど、あの廃教会は、ただ、静かに、木々の中にたたずんでるだけだった。
マジであの教会、何だったんだろうな…。
あの黒い人影は? タツが見たっていう「何か」は?
そして、最後の、あのノックの音は…?
もう絶対、あそこには近づかねえ。
好奇心も、ほどほどにしとかねえと、本当にヤバいことになるって、マジで思ったわ…。
今も、思い出すだけで、背筋がぞっとする。
いや、見つけたっていうか、噂を聞いて、好奇心で行ってみたんだけど。
マジで、行くんじゃなかったって後悔してる。
日曜の午後だったかな。天気は良くてさ。
新宿からそう遠くない場所に、誰も近づかない、古い廃教会があるって話を聞いたんだ。
なんでも、昔、何か事件があったとか、ないとか…。
まあ、よくある都市伝説みたいなもんだろって、タツと二人で、面白半分で行ってみることにしたんだよ。
ナビ頼りに細い路地とか入ってったら、あった。マジで。
住宅街の、ちょっと奥まった、木々に囲まれた場所に、ぽつんと。
レンガ造りの、たぶん昔は綺麗だったんだろうなって感じの、小さな教会。
でも、今はもう、蔦が壁一面に絡みついてて、窓ガラスはほとんど割れてるか、板で打ち付けられてる。
鉄の門も錆び付いてて、敷地内は雑草が生い茂って、荒れ放題。
昼間なのに、そこだけ、空気がどんより重くて、妙に静かなんだ。
「…マジで廃墟じゃん」タツが呟く。
「入ってみっか?」俺が言うと、タツはちょっと顔を引きつらせてたけど、結局、錆びた門をギィ…って押して、敷地内に入った。
教会の周りをぐるっと回ってみる。
ほとんどの窓は、中が見えないようにされてた。
でも、一箇所だけ、ステンドグラスが嵌ってたであろう窓枠が、外れてて、中の暗闇が覗いてる場所があったんだ。
風もないのに、そこから、ふっと、カビ臭いような、古い木の匂いが漂ってきた。
「…なあ、何か音しないか?」タツが小声で言った。
耳を澄ます。
………んん………。
最初は分からなかったけど、確かに、教会の奥の方から、何か、低い、唸るような音が、かすかに聞こえる気がする。
オルガン? いや、もっと、こう、生き物の呻き声みたいな…。
「俺、見てくるわ」
タツが、その外れた窓枠に近づいて、中を覗き込もうとした。
俺も、その後ろから、ドキドキしながら見てた。
タツが、数秒、中を覗き込んでたけど、急に「うわっ!」って小さい声出して、飛びのいたんだよ。
「どうした!?」って聞いたら、顔真っ青にして、
「い、いや…なんか、奥の方で、黒い何かが、動いた気がして…気のせいかもだけど…」って。
俺も、じゃあ俺が見るって、交代して窓枠から中を覗き込んだ。
中は、やっぱり薄暗くて、埃っぽくて、蜘蛛の巣だらけだった。
長椅子が何列か並んでて、正面には、たぶん祭壇があったんだろうなって場所が見える。
別段、何も…って思った瞬間。
祭壇のあたりに、スーッと、誰かが立った気がしたんだ。
背の高い、痩せた、黒い人影。
顔とか全然わかんない。本当に、影、そのもの。
それが、こっちを、じっと見てる。
瞬きしたら、もう、消えてた。
「……何も、いねえよ。暗くてよく見えねえだけだ」
俺、とっさに嘘ついた。タツを怖がらせちゃ悪いと思って。
でも、心臓はバクバクいってた。
「そ、そうか…ならいいけど…」
タツも、まだ顔色が悪い。
「なあ、もう帰ろうぜ。なんか、ここ、マジでヤバい感じするわ」
俺も同意して、二人で足早に、元来た門の方へ向かったんだ。
敷地を出る直前だった。
——— ドン……。
教会の、中から。
何か重いものが、床に落ちたような、鈍い音が、一度だけ、響いた。
俺とタツは、ビクッとして顔を見合わせる。
そして、
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——— コン………コン………コン………。
ゆっくりと、重々しく、扉を叩く音が、三度、聞こえたんだ。
まるで、「待て」とでも言うように。あるいは、「気づいているぞ」とでも。
俺たちは、もう、何も言わずに、全力でそこから逃げ出した。
途中、何度か後ろを振り返ったけど、あの廃教会は、ただ、静かに、木々の中にたたずんでるだけだった。
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そして、最後の、あのノックの音は…?
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今も、思い出すだけで、背筋がぞっとする。
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