サイコパス聖女 〜裁きの鉄槌〜

シマセイ

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第35話:灼熱の試練と流砂の罠

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灼熱の太陽が容赦なく照りつける砂漠は、まさに地獄のような場所だった。

どこまでも続く砂丘、蜃気楼の揺らめき、そして肌を刺すような熱風。

王都の快適な生活に慣れた騎士たちは、早々に音を上げ始めていた。

水筒の水はみるみる減り、彼らの顔には疲労と絶望の色が濃く浮かんでいる。

まったく、これだから温室育ちは困るのよ。

「聖女様……こ、この先に本当に神殿などあるのでしょうか……?」

一人の騎士が、乾いた唇でか細く尋ねてきた。

その目は虚ろで、もはや私への恐怖よりも、この過酷な環境への絶望の方が勝っているようだ。

「神の試練とは、常に厳しいものよ。
疑う心を持つ者に、聖地への道は開かれませんわ」

私は涼しい顔で答え、水筒の水を一口飲む。

もちろん、私の水筒にはモモちゃんが生成した清浄な水が常に満たされているから、喉の渇きなど感じるはずもない。

モモちゃんは、砂漠の熱にも負けず、私の肩の上で小さなトカゲのような姿になり、周囲の砂の中に潜む微細な水分を吸収している。

本当に、環境適応能力が高い子だこと。

神官長から得た情報によれば、「太陽の神殿」は、古代のオアシスがあったとされる場所に築かれているらしい。

しかし、そのオアシスは数百年前に枯れ果て、今では砂漠の民ですら近寄らない禁断の地となっているという。

手がかりは、三つの巨大な岩が品文字に並ぶ場所。

そこが神殿への入り口を示す目印らしいわ。

私たちは、ラクダの背に揺られながら、ひたすら砂漠を進んだ。

昼は灼熱地獄、夜は凍えるような寒さ。

そんな過酷な旅が数日続いた頃、ついにそれらしき場所が見えてきた。

地平線の彼方に、巨大な三つの岩が、まるで天を突くようにそびえ立っている。

「あれね……」

私が呟くと、神官長が興奮したように声を上げた。

「間違いありません、リリアーナ様!
あれが古文書に記された『三柱の巨岩』です!
太陽の神殿は、あの岩の向こうに!」

しかし、私たちが巨岩に近づくにつれ、不穏な気配が漂い始めた。

風の音が変わり、砂が奇妙な模様を描いて渦巻いている。

そして、足元の砂が……まるで生きているかのように、ゆっくりと沈み込んでいることに気づいた。

「これは……流砂!?」

騎士の一人が叫び声を上げる。

時すでに遅し。

私たちの足元は急速に砂に飲み込まれ、ラクダたちはパニックを起こして暴れ始めた。

「落ち着きなさい!」

私は鉄塊を地面に突き立て、辛うじて体勢を保つ。

モモちゃんは素早く私の体に巻き付き、浮力を生み出そうとしている。

しかし、流砂の勢いは想像以上に強く、私たちを容赦なく引きずり込もうとしていた。

「神官長!アルノー!あなたたちも何か掴まりなさい!」

私が叫ぶが、神官長はすでに腰まで砂に埋もれ、必死にもがいている。

アルノーは……意外にも冷静だった。

彼は、近くにあった倒れた枯れ木に素早くしがみつき、沈みゆく騎士の一人に手を差し伸べている。

あら、少しは見所があるじゃないの。

「くそっ、こんなところで……!」

神官長が悪態をつく。

彼の顔には焦りの色が浮かんでいた。

このままでは、神殿にたどり着く前に、全員砂漠の藻屑と化してしまう。

(さて、どうしたものかしら……)

私は冷静に周囲を見渡す。

流砂の中心は、どうやらあの三つの巨岩の間のようだ。

そして、その中心部から、微かに熱気のようなものが立ち上っているのが見える。

もしかしたら、あれが……。

「モモちゃん、あの巨岩の真ん中、何か感じる?」

私の問いに、モモちゃんはプルプルと震え、肯定の意思を示した。

そして、何か熱いもの、そして強い魔力の波動を感じると伝えてくる。

「ビンゴね」

私はニヤリと笑みを浮かべた。

どうやら、この流砂もまた、神殿への試練の一つらしい。

そして、その突破口は、最も危険な場所にあるというわけね。

面白いじゃないの。

「神官長、アルノー!私についてきなさい!
この流砂の中心に、活路があるかもしれないわ!」

私は鉄塊を杖代わりにし、モモちゃんの浮力を借りながら、あえて流砂の中心へと進み始めた。

騎士たちは、もはやなすすべもなく砂に飲まれていく。

まあ、彼らの犠牲は、私の新たな力の糧となるでしょう。

灼熱の太陽が照りつける中、聖女の過酷な砂漠の試練は、まだ始まったばかりだった。

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