サイコパス聖女 〜裁きの鉄槌〜

シマセイ

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第47話:追跡の砂漠路と紅蓮の残影

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「モモちゃん、あの魔女の残り香、しっかりと追えるかしら?」

私の問いに、モモちゃんは自信ありげにプルンと体を震わせ、特定の方向を指し示した。

その瑠璃色の瞳は、まるで猟犬のように鋭く輝いている。

どうやら、あの「紅蓮の魔女」とやらは、相当強い魔力の痕跡を残していったようね。

おかげで、追跡は容易そうだわ。

「よし、出発よ。
あまりのんびりしていると、せっかくの『お宝』を横取りされてしまうかもしれないわね」

私は鉄塊を肩に担ぎ直し、モモちゃんが示す方角へと歩き出す。

神官長は、先ほどの砂嵐と魔女の挑発で憔悴しきっているようだったが、私の命令には逆らえず、よろよろと後をついてくる。

アルノーは相変わらず無表情で、ただ黙々と砂漠を歩いている。

生き残った騎士たちは、もはや恐怖を通り越して、一種の諦観のようなものを漂わせていた。

彼らにとって、私は聖女というより、抗うことのできない天災のような存在なのかもしれないわね。

ふふ、それも悪くない。

砂漠の太陽は依然として容赦なく照りつけ、足元の砂は焼けるように熱い。

しかし、私の心は不思議と高揚していた。

「紅蓮の魔女」……どんな相手なのかしら。

私を楽しませてくれるのかしら。

想像するだけで、口元が緩んでしまう。

モモちゃんの案内は的確だった。

時折、砂の上に残された微かな魔力の残滓や、不自然に焦げ付いた岩など、魔女が通った痕跡を見つけることができた。

どうやら、彼女は相当な炎の使い手らしい。

私の『炎鳥の心臓』と、どちらの炎がより強力かしらね。

試してみるのが楽しみだわ。

数時間ほど進んだ頃、私たちは奇妙な光景を目にした。

広大な砂丘の真ん中に、まるで巨大な爪で抉られたかのような、巨大な亀裂が走っている。

その亀裂の底からは、まだ陽炎のように熱気が立ち上っていた。

「これは……一体何が……?」

神官長が、息をのんで呟く。

「おそらく、あの魔女の仕業でしょうね。
ずいぶんと派手なことをしてくれるじゃないの」

私は亀裂の縁に立ち、その深さを覗き込む。

どうやら、この亀裂は自然にできたものではなく、強力な魔法によって大地が引き裂かれた結果のようだ。

そして、亀裂の底には、何かの残骸のようなものが散らばっているのが見えた。

あれは……魔物の骨?

それも、かなり大型の。

「リリアーナ様、あれを!」

アルノーが、珍しく声を上げた。

彼が指さす先、亀裂の壁面には、焼け焦げたような跡で、再びあの鳥の翼の紋様が描かれていた。

そして、その下には、新たなメッセージ。

『追ってくるのは構わないわ、聖女様。
でも、私の遊び相手になるには、あなた、少し弱すぎるんじゃないかしら?』

「……ふふっ」

私は思わず笑みをこぼした。

挑発的で、自信に満ち溢れた言葉。

気に入ったわ、その生意気な態度。

どうやら、この「紅蓮の魔女」は、私と同じ種類の人間……いえ、それ以上の「怪物」なのかもしれない。

「弱すぎる、ですって?
面白いことを言ってくれるじゃないの。
いいわ、その挑戦、受けて立ちましょう」

私の闘争心は、完全に火がついた。

この魔女を打ち負かし、その自信に満ちた顔を絶望に染めてみたい。

そして、彼女が持つであろう「鍵」も、もちろん私のものにする。

「モモちゃん、魔女はまだ近くにいるかしら?」

モモちゃんはプルプルと震え、首を横に振った。

どうやら、すでにこの場所を離れてしまったらしい。

けれど、その魔力の残滓は、さらに砂漠の奥へと続いている。

「神官長、アルノー、そして騎士の皆さん。
少しペースを上げるわよ。
あまり待たせると、せっかくの『遊び相手』が待ちくたびれてしまうかもしれないから」

私は、先ほどまでの余裕のある笑みとは違う、獰猛な捕食者のような笑みを浮かべた。

生き残った騎士たちは、私のその表情を見て、さらに顔を引きつらせる。

神官長は、何かを諦めたように深いため息をついた。

灼熱の砂漠を舞台にした、聖女と魔女の追いかけっこ。

どんな結末が待っているのかしら。

私は、かつてないほどの期待と興奮に打ち震えていた。

この砂漠が、私たちの血で染まるのも、そう遠い話ではないかもしれないわね。
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