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第51話:灼熱の神殿と太陽の守護者
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「さあ、行きましょうか。
本物の『お宝』が、私たちを待っているわ」
私は鉄塊を担ぎ直し、太陽の神殿の薄暗い入り口へと足を踏み入れた。
モモちゃんも、私の後に続く。
神殿内部は、外の灼熱とはまた異なる、じっとりとした熱気が満ちていた。
壁には古代の象形文字がびっしりと刻まれ、時折、赤い宝石のようなものが埋め込まれて鈍い光を放っている。
私の胸元では、『炎鳥の心臓』が微かに温かく脈打つのを感じる。
この神殿の気配に反応しているのかしら。
「リリアーナ様、この神殿は……尋常ならざる魔力を感じます。
慎重に進むべきかと」
神官長が、緊張した面持ちで進言する。
彼の額には、熱気によるものか、冷や汗か、玉のような汗が浮かんでいた。
アルノーは、相変わらず無言で俯いているが、その握りしめた拳が微かに震えているのが見えた。
生き残った騎士は、もはや恐怖で言葉も出ない様子だ。
まったく、どいつもこいつも役に立たないわね。
「慎重、ですって?
神官長、あなたは私のやり方を知らないわけではあるまいし」
私はクスクスと笑いながら、迷宮のように入り組んだ通路の奥へと進んでいく。
モモちゃんは、その小さな体で壁や床をペタペタと這い回り、罠の気配を探っている。
さすが私のペット、こういう時は本当に頼りになるわ。
しばらく進むと、最初の「おもてなし」が私たちを迎えた。
通路の床が突如として抜け落ち、下からは煮えたぎる溶岩のようなものが顔を覗かせたのだ。
「ひぃっ!」
騎士の一人が短い悲鳴を上げ、危うく落ちそうになる。
それを、アルノーが咄嗟に腕を掴んで引き上げた。
あら、彼も少しは成長したのかしら。
それとも、ただの反射かしらね。
「ふふ、なかなか古典的な罠じゃないの。
でも、私には通用しないわよ」
私は軽やかに浮遊し、溶岩の落とし穴を飛び越える。
モモちゃんも、その粘体を変形させて壁を伝い、難なくクリア。
神官長とアルノー、そして生き残った騎士は、壁際を慎重に伝って、なんとか渡り切ったようだ。
まったく、手間のかかるお荷物たちね。
その後も、火炎を噴き出す石像、鋭い刃が飛び出す壁、幻覚を見せる霧など、様々な罠が私たちを待ち受けていた。
その度に、騎士は命を落とし、あるいは負傷していく。
私はと言えば、モモちゃんのサポートと、これまでに手に入れた三つの「鍵」、『虚ろなる月の瞳』、『星影のクリスタル』、『炎鳥の心臓』の力を巧みに使い分け、それらの罠をまるで遊戯のように突破していった。
神官長は、その度に私の力に戦慄し、アルノーはますます顔色を悪くしていく。
その反応を見るのが、何よりも楽しいのだけれど。
やがて、私たちは広大な円形の広間へとたどり着いた。
広間の中央には、巨大な太陽の紋章が刻まれた祭壇があり、その上には、眩いばかりの黄金色の光を放つ何かが安置されている。
そして、その「何か」を守るように、一体の巨大な存在が立ちはだかっていた。
それは、全身が灼熱の炎そのもので構成されたような、巨大な人型の戦士だった。
その手には燃え盛る大剣を握り、兜の奥からは、溶岩のように赤く輝く双眸が私たちを睨みつけている。
まさしく、太陽の化身、あるいは炎の精霊とでも言うべき存在。
これこそが、四つ目の「鍵」を守る番人――「太陽の守護者」ね。
「クオオオオオオン!」
太陽の守護者は、私たち侵入者に向けて、地鳴りのような咆哮を上げた。
その声だけで、周囲の空気が震え、壁の岩が熱で融解し始める。
氷雪の番人や炎鳥の番人とは、また格の違う圧倒的なプレッシャーだわ。
「まあ、ようやくお目見えね、最後の番人さん。
あなたを倒せば、四つ目の『鍵』……そして、この世界の『真理』とやらに近づけるのかしら」
私は不敵な笑みを浮かべ、鉄塊を構える。
モモちゃんも、私の闘志に呼応するように、その体を氷と水の力を凝縮させたような形態へと変化させた。
灼熱の環境への対策は万全よ。
「あなたたちはお飾りよ。
せいぜい、私の華麗な舞いを特等席で楽しんでいなさい。
間違っても、私の邪魔はしないでちょうだいね?」
私は神官長とアルノー、そしてかろうじて息のある騎士を一瞥し、太陽の守護者へと意識を集中させる。
この灼熱の神殿で、どんな刺激的なダンスが繰り広げられるのか。
この太陽の化身を屈服させ、その奥に眠る「鍵」を手に入れた時、私は一体どんな愉悦を感じるのかしら。
考えるだけで、ゾクゾクするわね。
本物の『お宝』が、私たちを待っているわ」
私は鉄塊を担ぎ直し、太陽の神殿の薄暗い入り口へと足を踏み入れた。
モモちゃんも、私の後に続く。
神殿内部は、外の灼熱とはまた異なる、じっとりとした熱気が満ちていた。
壁には古代の象形文字がびっしりと刻まれ、時折、赤い宝石のようなものが埋め込まれて鈍い光を放っている。
私の胸元では、『炎鳥の心臓』が微かに温かく脈打つのを感じる。
この神殿の気配に反応しているのかしら。
「リリアーナ様、この神殿は……尋常ならざる魔力を感じます。
慎重に進むべきかと」
神官長が、緊張した面持ちで進言する。
彼の額には、熱気によるものか、冷や汗か、玉のような汗が浮かんでいた。
アルノーは、相変わらず無言で俯いているが、その握りしめた拳が微かに震えているのが見えた。
生き残った騎士は、もはや恐怖で言葉も出ない様子だ。
まったく、どいつもこいつも役に立たないわね。
「慎重、ですって?
神官長、あなたは私のやり方を知らないわけではあるまいし」
私はクスクスと笑いながら、迷宮のように入り組んだ通路の奥へと進んでいく。
モモちゃんは、その小さな体で壁や床をペタペタと這い回り、罠の気配を探っている。
さすが私のペット、こういう時は本当に頼りになるわ。
しばらく進むと、最初の「おもてなし」が私たちを迎えた。
通路の床が突如として抜け落ち、下からは煮えたぎる溶岩のようなものが顔を覗かせたのだ。
「ひぃっ!」
騎士の一人が短い悲鳴を上げ、危うく落ちそうになる。
それを、アルノーが咄嗟に腕を掴んで引き上げた。
あら、彼も少しは成長したのかしら。
それとも、ただの反射かしらね。
「ふふ、なかなか古典的な罠じゃないの。
でも、私には通用しないわよ」
私は軽やかに浮遊し、溶岩の落とし穴を飛び越える。
モモちゃんも、その粘体を変形させて壁を伝い、難なくクリア。
神官長とアルノー、そして生き残った騎士は、壁際を慎重に伝って、なんとか渡り切ったようだ。
まったく、手間のかかるお荷物たちね。
その後も、火炎を噴き出す石像、鋭い刃が飛び出す壁、幻覚を見せる霧など、様々な罠が私たちを待ち受けていた。
その度に、騎士は命を落とし、あるいは負傷していく。
私はと言えば、モモちゃんのサポートと、これまでに手に入れた三つの「鍵」、『虚ろなる月の瞳』、『星影のクリスタル』、『炎鳥の心臓』の力を巧みに使い分け、それらの罠をまるで遊戯のように突破していった。
神官長は、その度に私の力に戦慄し、アルノーはますます顔色を悪くしていく。
その反応を見るのが、何よりも楽しいのだけれど。
やがて、私たちは広大な円形の広間へとたどり着いた。
広間の中央には、巨大な太陽の紋章が刻まれた祭壇があり、その上には、眩いばかりの黄金色の光を放つ何かが安置されている。
そして、その「何か」を守るように、一体の巨大な存在が立ちはだかっていた。
それは、全身が灼熱の炎そのもので構成されたような、巨大な人型の戦士だった。
その手には燃え盛る大剣を握り、兜の奥からは、溶岩のように赤く輝く双眸が私たちを睨みつけている。
まさしく、太陽の化身、あるいは炎の精霊とでも言うべき存在。
これこそが、四つ目の「鍵」を守る番人――「太陽の守護者」ね。
「クオオオオオオン!」
太陽の守護者は、私たち侵入者に向けて、地鳴りのような咆哮を上げた。
その声だけで、周囲の空気が震え、壁の岩が熱で融解し始める。
氷雪の番人や炎鳥の番人とは、また格の違う圧倒的なプレッシャーだわ。
「まあ、ようやくお目見えね、最後の番人さん。
あなたを倒せば、四つ目の『鍵』……そして、この世界の『真理』とやらに近づけるのかしら」
私は不敵な笑みを浮かべ、鉄塊を構える。
モモちゃんも、私の闘志に呼応するように、その体を氷と水の力を凝縮させたような形態へと変化させた。
灼熱の環境への対策は万全よ。
「あなたたちはお飾りよ。
せいぜい、私の華麗な舞いを特等席で楽しんでいなさい。
間違っても、私の邪魔はしないでちょうだいね?」
私は神官長とアルノー、そしてかろうじて息のある騎士を一瞥し、太陽の守護者へと意識を集中させる。
この灼熱の神殿で、どんな刺激的なダンスが繰り広げられるのか。
この太陽の化身を屈服させ、その奥に眠る「鍵」を手に入れた時、私は一体どんな愉悦を感じるのかしら。
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