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第百十四話:星屑の採掘
僕の肉体が新しい「器」へと生まれ変わってから数日が過ぎた。
僕は地下の研究室でその新しい力の感触を確かめていた。
以前は、常に暴発の危険を孕んでいた魔力の奔流が、今や僕の手足のように滑らかに、そして従順に動く。
身体強化の魔法を使わずとも、僕は成人男性を遥かに凌駕する身体能力を手に入れていた。
器の限界という枷が外れたことで、僕の成長速度は再び加速度的なものへと戻ったのだ。
準備は整った。
僕はついに、王国作りの中核をなす計画、『星屑鉄』の本格的な採掘を開始することを決意した。
僕は鉱山長のボリンと、彼が選び抜いた最も口が堅く、そして腕の立つ数名の鉱夫たちを連れて、夜の闇に紛れ霊峰グレンデルの中腹に掘らせていたあの秘密の試掘坑へと向かった。
坑道の奥深く。
松明の明かりが照らし出すその岩盤には、確かに夜空の星々を砕いて塗り込めたかのような美しい金属の鉱脈が走っていた。
「若様。……こいつが例の『星屑鉄』か」
ボリンが唾を飲み込みながら尋ねる。
「ああ。だが問題がある」
僕は岩盤を指でなぞった。
「この鉱石を含む岩盤は既知のどんな金属よりも硬い。王都の最新の採掘機械を持ってきても傷一つ付けることはできないだろう」
「そ、そんな……。ではどうやってこれを……」
絶望の色を浮かべる鉱夫たち。僕はそんな彼らに静かに告げた。
「だからこそ僕がいる」
僕は岩盤の前に立った。そしてその硬い表面にそっと手のひらを当てる。
僕は僕の全てのスキルをその一点に集中させた。
まずニールから得た『古代ルーン解読』の力でこの岩盤の物質としての構造式、その根本的な「理」を読み解く。
次にレオン先輩から得た『水魔法制御』の応用で僕の魔力を針のように細くそして鋭く研ぎ澄ませる。そして最後に僕のオリジナルスキル『振動剣』の技術。
僕は、その研ぎ澄ました魔力を岩盤の構造の最も脆い一点へと送り込み、そしてその物質が持つ固有の共振周波数と完全に同調する超高速の「振動」を与えた。
僕の手のひらから放たれた魔力は、目には見えない。だが僕の手が触れている岩盤がブゥンという低い唸り声を上げ始めた。
そしてその唸り声は次第に大きくなり、やがて坑道全体が共鳴し凄まじい振動に包まれる。
「うわっ!? な、何だ!?」
「落盤だ! 逃げろ!」
鉱夫たちが悲鳴を上げる。
だが僕はその場で動かなかった。
「——静かにしろ。……もう終わる」
僕がそう告げた直後、全ての振動がぴたりと止んだ。
そして僕たちの目の前で信じられない光景が広がった。
あれほど硬固だった巨大な岩盤がまるで砂の城のようにその形を保てず、サラサラと静かに崩れ落ちていったのだ。
その後には夜空の輝きをそのまま宿した『星屑鉄』の美しい鉱石だけがゴロゴロと転がっていた。
坑道は静まり返っていた。
誰も一言も発することができない。
やがてボリンがその場にへたり込み震える声で呟いた。
「……神だ。……若様は山の神の化身だ……」
その一言が引き金だった。
その場にいた全ての鉱夫たちが僕の前にひざまずき、深く深く頭を垂れていた。
彼らの僕に対する感情はもはや尊敬や信頼ではない。
人知を超えた存在に対する絶対的な「信仰」へと変わっていた。
僕はそんな彼らに静かに語りかけた。
「今宵君たちが見たものは他言無用だ。これは我々のそしてノーランドだけの秘密。この星の欠片は我々の土地を誰よりも豊かにするだろう。だがその富が王都の連中に知られれば、彼らは全てを我々から奪い去っていく。……君たちはこの秘密をその命に代えても守り通すと誓えるか?」
「「「——御意に!!」」」
その力強い誓いの言葉。
僕は僕の王国における最初のそして最も信頼できる腹心たちを手に入れた。
僕は崩れ落ちた岩盤の中から『星屑鉄』の鉱石を一つ拾い上げる。
手のひらにずしりと重い。
そしてその奥底から感じられる莫大な魔力。
(——山の心臓は今鼓動を始めた)
僕は心の中で呟いた。
(この血液が僕の王国の血管を駆け巡る。この力で転移魔法陣を動かしこの富で軍隊を作る)
父は僕をこの地に捨てた。
だが僕はこの地から彼らの想像もつかない帝国を築き上げてみせる。
僕は地下の研究室でその新しい力の感触を確かめていた。
以前は、常に暴発の危険を孕んでいた魔力の奔流が、今や僕の手足のように滑らかに、そして従順に動く。
身体強化の魔法を使わずとも、僕は成人男性を遥かに凌駕する身体能力を手に入れていた。
器の限界という枷が外れたことで、僕の成長速度は再び加速度的なものへと戻ったのだ。
準備は整った。
僕はついに、王国作りの中核をなす計画、『星屑鉄』の本格的な採掘を開始することを決意した。
僕は鉱山長のボリンと、彼が選び抜いた最も口が堅く、そして腕の立つ数名の鉱夫たちを連れて、夜の闇に紛れ霊峰グレンデルの中腹に掘らせていたあの秘密の試掘坑へと向かった。
坑道の奥深く。
松明の明かりが照らし出すその岩盤には、確かに夜空の星々を砕いて塗り込めたかのような美しい金属の鉱脈が走っていた。
「若様。……こいつが例の『星屑鉄』か」
ボリンが唾を飲み込みながら尋ねる。
「ああ。だが問題がある」
僕は岩盤を指でなぞった。
「この鉱石を含む岩盤は既知のどんな金属よりも硬い。王都の最新の採掘機械を持ってきても傷一つ付けることはできないだろう」
「そ、そんな……。ではどうやってこれを……」
絶望の色を浮かべる鉱夫たち。僕はそんな彼らに静かに告げた。
「だからこそ僕がいる」
僕は岩盤の前に立った。そしてその硬い表面にそっと手のひらを当てる。
僕は僕の全てのスキルをその一点に集中させた。
まずニールから得た『古代ルーン解読』の力でこの岩盤の物質としての構造式、その根本的な「理」を読み解く。
次にレオン先輩から得た『水魔法制御』の応用で僕の魔力を針のように細くそして鋭く研ぎ澄ませる。そして最後に僕のオリジナルスキル『振動剣』の技術。
僕は、その研ぎ澄ました魔力を岩盤の構造の最も脆い一点へと送り込み、そしてその物質が持つ固有の共振周波数と完全に同調する超高速の「振動」を与えた。
僕の手のひらから放たれた魔力は、目には見えない。だが僕の手が触れている岩盤がブゥンという低い唸り声を上げ始めた。
そしてその唸り声は次第に大きくなり、やがて坑道全体が共鳴し凄まじい振動に包まれる。
「うわっ!? な、何だ!?」
「落盤だ! 逃げろ!」
鉱夫たちが悲鳴を上げる。
だが僕はその場で動かなかった。
「——静かにしろ。……もう終わる」
僕がそう告げた直後、全ての振動がぴたりと止んだ。
そして僕たちの目の前で信じられない光景が広がった。
あれほど硬固だった巨大な岩盤がまるで砂の城のようにその形を保てず、サラサラと静かに崩れ落ちていったのだ。
その後には夜空の輝きをそのまま宿した『星屑鉄』の美しい鉱石だけがゴロゴロと転がっていた。
坑道は静まり返っていた。
誰も一言も発することができない。
やがてボリンがその場にへたり込み震える声で呟いた。
「……神だ。……若様は山の神の化身だ……」
その一言が引き金だった。
その場にいた全ての鉱夫たちが僕の前にひざまずき、深く深く頭を垂れていた。
彼らの僕に対する感情はもはや尊敬や信頼ではない。
人知を超えた存在に対する絶対的な「信仰」へと変わっていた。
僕はそんな彼らに静かに語りかけた。
「今宵君たちが見たものは他言無用だ。これは我々のそしてノーランドだけの秘密。この星の欠片は我々の土地を誰よりも豊かにするだろう。だがその富が王都の連中に知られれば、彼らは全てを我々から奪い去っていく。……君たちはこの秘密をその命に代えても守り通すと誓えるか?」
「「「——御意に!!」」」
その力強い誓いの言葉。
僕は僕の王国における最初のそして最も信頼できる腹心たちを手に入れた。
僕は崩れ落ちた岩盤の中から『星屑鉄』の鉱石を一つ拾い上げる。
手のひらにずしりと重い。
そしてその奥底から感じられる莫大な魔力。
(——山の心臓は今鼓動を始めた)
僕は心の中で呟いた。
(この血液が僕の王国の血管を駆け巡る。この力で転移魔法陣を動かしこの富で軍隊を作る)
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だが僕はこの地から彼らの想像もつかない帝国を築き上げてみせる。
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