3 / 9
サン
しおりを挟む
おれは祖母、父と暮らしているが、父とは仕事の都合上最近はまったく会っていない。
たまに家には帰ってきているそうだが、すでにおれが寝ている頃だそうだ。
「ばあちゃん、おれもう寝るからね」
「あぁ、わかったよ。おやすみ」
ばあちゃんには感謝しかない。身体が重いだろうに、ずっとおれの面倒を見てくれているのだから。
それだけではなく、いつも「おかえり」や今みたいに「おやすみ」と毎日欠かさず言ってくれる。
「……おやすみなさい」
おれはそんなばあちゃんが大好きだ。
■ ■ ■
「ふぅ~、疲れた」
ばあちゃんには「おやすみ」と言ったものの、現代の日本人らしくおれは真っ暗な部屋でスマホをいじっていた。
とはいっても、いつものようにゲームで遊んでいるわけではない。
佐藤さんとMINEで連絡をしあっていたのだ。一年生の頃から佐藤さんとMINEはしていたが、いずれも学校関連の事務的な内容だった。
だが、今日の『げーむ?』をきっかけに個人的な話をするようになった。時間を無駄にしたと思っていたが、佐藤さんとの距離を縮めるいいきっかけになったかもしれない。
とはいっても、おれ達は初対面に近い関係だ。あまり踏み込んだ話などすることもなく、そのほとんどが『げーむ?』の内容だった。
「……もう寝よう。いつもより一時間も遅くなった」
スマホで時間を見てみれば23時56分だった。普段から朝の5時に起きているので、たった5時間しか寝る事ができない。
憂鬱な気分になるが明日は休みだし、寝坊しても朝ご飯が作れなくなるだけで、悪い影響も少ないだろう。
それからおれが自分の意識を飛ばすのに時間はかからなかった……。
「っ! なんだ、これ?」
……はずだった。
おれは間違いなく寝たはずだ。だというのに何故おれは……。
「学校にいるんだ?」
太陽のお陰でボロボロだけれど歴史あると一見してわかる学校も、夜になれば恐ろしく見える。
とても不気味で、見ているだけで心が震えると同時に身体も震える。夜の冷たい風があたり、恐怖によって混乱していたおれの心は冷静になった。
後ろを見れば門が閉じていて、まるで独房にでも入れらてたかのような錯覚に陥る。夜風によって葉が音を立てて揺れる。
日常生活の中ではどうでもよかった光景も今となっては何故か注目してしまうのだ。
「ね、猫屋敷くん?」
「っ! 誰だ!」
不意に背後から聞こえた声におれはバッ! っと勢いよく振り返る。
「あ、あの、……佐藤です」
ビクッと驚いた様子の佐藤さんを見ておれは自分を殴りたくなった。
いくら気が動転していたとしても女の子を無闇矢鱈にビビらせるのは一人の男として最悪だろう。
「ご、ごめん。許してくれ」
「その……こちらこそ……ごめんなさい」
佐藤さんが手を前で組みながら下を向いてしまった。場の空気が悪くなっていくのがわかったが、そんなことより今は何故ここに佐藤さんがいるのかが気になった。
だがそんなおれの疑問なんてどうでもいいというようなタイミングで新たな声がおれにかかってきた。
「零士! なんでおれ達は学校にいるんだ!?」
「……落ち着け優斗。……おれだって分からない」
優斗の気持ちも痛いほどわかる。今でこそ三人もいるわけだが、おれだって初めは恐ろしくて震えていたのだから。
「え、ないこれ!? なんであたし学校にいるの!?」
「……なにがおきやがった?」
「永井に朝霧さんも……偶然か?」
まだ時間が経てば人が来るかもしれないが、ここにいるのは『げーむ?』をやった5人だ。これが偶然なのかどうかはわからないが、どちらにせよ気味が悪い。
「ま、愛菜! よかった! 一人じゃ……」
そう言いながら佐藤さんに抱きつこうとした朝霧さんだが、その途中で何か恐ろしいものを見たかのように静止した。
その様はまさに異様でおれ達は不審がったが、次第にみんな朝霧さんの見ている先を追いかけた。
「な、なんだよあれ!?」
「が、ガキか!?」
そこにいたのは……
……異様なほどデカい口を大きく歪め、歯茎を丸出しにしておれ達を睨み、血が付着している鉈を肩に担いでいる、おかっぱの日本人形のような少女だった。
たまに家には帰ってきているそうだが、すでにおれが寝ている頃だそうだ。
「ばあちゃん、おれもう寝るからね」
「あぁ、わかったよ。おやすみ」
ばあちゃんには感謝しかない。身体が重いだろうに、ずっとおれの面倒を見てくれているのだから。
それだけではなく、いつも「おかえり」や今みたいに「おやすみ」と毎日欠かさず言ってくれる。
「……おやすみなさい」
おれはそんなばあちゃんが大好きだ。
■ ■ ■
「ふぅ~、疲れた」
ばあちゃんには「おやすみ」と言ったものの、現代の日本人らしくおれは真っ暗な部屋でスマホをいじっていた。
とはいっても、いつものようにゲームで遊んでいるわけではない。
佐藤さんとMINEで連絡をしあっていたのだ。一年生の頃から佐藤さんとMINEはしていたが、いずれも学校関連の事務的な内容だった。
だが、今日の『げーむ?』をきっかけに個人的な話をするようになった。時間を無駄にしたと思っていたが、佐藤さんとの距離を縮めるいいきっかけになったかもしれない。
とはいっても、おれ達は初対面に近い関係だ。あまり踏み込んだ話などすることもなく、そのほとんどが『げーむ?』の内容だった。
「……もう寝よう。いつもより一時間も遅くなった」
スマホで時間を見てみれば23時56分だった。普段から朝の5時に起きているので、たった5時間しか寝る事ができない。
憂鬱な気分になるが明日は休みだし、寝坊しても朝ご飯が作れなくなるだけで、悪い影響も少ないだろう。
それからおれが自分の意識を飛ばすのに時間はかからなかった……。
「っ! なんだ、これ?」
……はずだった。
おれは間違いなく寝たはずだ。だというのに何故おれは……。
「学校にいるんだ?」
太陽のお陰でボロボロだけれど歴史あると一見してわかる学校も、夜になれば恐ろしく見える。
とても不気味で、見ているだけで心が震えると同時に身体も震える。夜の冷たい風があたり、恐怖によって混乱していたおれの心は冷静になった。
後ろを見れば門が閉じていて、まるで独房にでも入れらてたかのような錯覚に陥る。夜風によって葉が音を立てて揺れる。
日常生活の中ではどうでもよかった光景も今となっては何故か注目してしまうのだ。
「ね、猫屋敷くん?」
「っ! 誰だ!」
不意に背後から聞こえた声におれはバッ! っと勢いよく振り返る。
「あ、あの、……佐藤です」
ビクッと驚いた様子の佐藤さんを見ておれは自分を殴りたくなった。
いくら気が動転していたとしても女の子を無闇矢鱈にビビらせるのは一人の男として最悪だろう。
「ご、ごめん。許してくれ」
「その……こちらこそ……ごめんなさい」
佐藤さんが手を前で組みながら下を向いてしまった。場の空気が悪くなっていくのがわかったが、そんなことより今は何故ここに佐藤さんがいるのかが気になった。
だがそんなおれの疑問なんてどうでもいいというようなタイミングで新たな声がおれにかかってきた。
「零士! なんでおれ達は学校にいるんだ!?」
「……落ち着け優斗。……おれだって分からない」
優斗の気持ちも痛いほどわかる。今でこそ三人もいるわけだが、おれだって初めは恐ろしくて震えていたのだから。
「え、ないこれ!? なんであたし学校にいるの!?」
「……なにがおきやがった?」
「永井に朝霧さんも……偶然か?」
まだ時間が経てば人が来るかもしれないが、ここにいるのは『げーむ?』をやった5人だ。これが偶然なのかどうかはわからないが、どちらにせよ気味が悪い。
「ま、愛菜! よかった! 一人じゃ……」
そう言いながら佐藤さんに抱きつこうとした朝霧さんだが、その途中で何か恐ろしいものを見たかのように静止した。
その様はまさに異様でおれ達は不審がったが、次第にみんな朝霧さんの見ている先を追いかけた。
「な、なんだよあれ!?」
「が、ガキか!?」
そこにいたのは……
……異様なほどデカい口を大きく歪め、歯茎を丸出しにしておれ達を睨み、血が付着している鉈を肩に担いでいる、おかっぱの日本人形のような少女だった。
0
あなたにおすすめの小説
意味が分かると怖い話(解説付き)
彦彦炎
ホラー
一見普通のよくある話ですが、矛盾に気づけばゾッとするはずです
読みながら話に潜む違和感を探してみてください
最後に解説も載せていますので、是非読んでみてください
実話も混ざっております
女子切腹同好会
しんいち
ホラー
どこにでもいるような平凡な女の子である新瀬有香は、学校説明会で出会った超絶美人生徒会長に憧れて私立の女子高に入学した。そこで彼女を待っていたのは、オゾマシイ運命。彼女も決して正常とは言えない思考に染まってゆき、流されていってしまう…。
はたして、彼女の行き着く先は・・・。
この話は、切腹場面等、流血を含む残酷シーンがあります。御注意ください。
また・・・。登場人物は、だれもかれも皆、イカレテいます。イカレタ者どものイカレタ話です。決して、マネしてはいけません。
マネしてはいけないのですが……。案外、あなたの近くにも、似たような話があるのかも。
世の中には、知らなくて良いコト…知ってはいけないコト…が、存在するのですよ。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
月弥総合病院
僕君☾☾
キャラ文芸
月弥総合病院。極度の病院嫌いや完治が難しい疾患、診察、検査などの医療行為を拒否したり中々治療が進められない子を治療していく。
また、ここは凄腕の医師達が集まる病院。特にその中の計5人が圧倒的に遥か上回る実力を持ち、「白鳥」と呼ばれている。
(小児科のストーリー)医療に全然詳しく無いのでそれっぽく書いてます...!!
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる