電車で会った彼女たち

クレイン

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茶髪さん

新たな出会い

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 部活帰りのジャージ姿でいつものように電車に乗り込もうとすると、見知った2人と知らない1人の女性を見つけた。

 楽しそうな声で喋っている彼女たちをチラチラ見ながら座席に座ろうとすると手招きされた。

 大人しく彼女たちに近付いていくと金沢さんが左にズレてできたスペースに座る。彼女の残った体温が僕の体温と混ざっていくのを感じていると左側から黒崎さんが腕を組んできた。
「タイガくん、今日は紹介したい人がいます。」
「あっはい。」
 腕で潰れるおっぱいに気を取られて生返事になってしまう。
「こちら私たちの同級生の茶屋野沙織ちゃん。かわいいでしょ。」
「…どうも。」
「あっどうも。」
 茶髪の茶屋野さんがチラッとこちらを見て軽く会釈してきたのでこちらも返す。
「それでこちら私と有希音のパンツを覗いてきた変態のタイガくん。」
「えぇ⁉︎」
「…キモっ。」
 事実だが最低な自己紹介をされて茶屋野さんが引いている。
「そんな言い方は……」
「本当のことでしょ?ね~変態くん。」
「うぐっ。」
 黒崎さんの方を向いて抗議すると後ろから股をさすられた。おとなしく引き下がって座席に座る。チラッと茶屋野さんを見ると黒崎さん越しにジト目で僕を見ていた。
「大したことなさそうじゃん。」
 茶屋野さんがバカに呆れるような表情で言ってすぐ目線を逸らした。
 そのまま見ていても彼女はこちらを見なかった。

 何をすれば良いか分からなくておろおろしていると金沢さんが話し始めた。
「ごめんね。この娘ちょっと男嫌いでさ。慣れてもらうためにタイガくんの手を借りようかと思って。」
「はぁ、そうなんですか。」
 茶屋野さんを見ると僕の方を見ようともせずにそっぽを向いている。こちらを気にしないことをいいことに彼女の体を見る。重なって見える黒崎さんの胸よりも彼女の胸は完全に大きかった。
“この胸の大きさで男子に揶揄われたのかな。僕はあんまり見ないようにしよう。”
「僕で力になれるなら何でもしますよ。」
 茶屋野さんの横顔を見ながら言うと彼女もこちらを見て目が合った。
「あ、おお。」
 彼女はすぐにまたそっぽを向いてしまった。

「サオリ、タイガくん優しいから大丈夫だよ。たぶん。」
「…何で2人はそんな仲良いの、そいつと。」
 茶屋野さんを見ていると、またチラッと目が合った。
「ん~もうヤっちゃったからかな~。」
 金沢さんが僕の太ももを撫でてくる。
「………え?ヤったって、ヤったの?……エッチ?」
 驚きの表情を浮かべて茶屋野さんが声を上げる。あらためて正面から顔を見るとすごく美人な顔立ちをしている。この顔なら男はほっとかないだろうな。
「うん。3人でヤっちゃった。すごく良かった。」
 黒崎さんも太ももを撫でてくるし、彼女の言葉にニヤけてしまう。茶屋野さんが嫌悪感丸出しの顔で僕を見てくる。いけないいけない、真面目な顔に戻すが彼女の顔は完全に引いていた。
「……あれ?でもこの前会ったって…」
「いや前から知ってはいたんだ、電車同じときが多かったから。知り合ったのはこの前、でそのままセックスした。」
「えぇ?ヤバぁ。」
 茶屋野さんは完全に引いてしまった。

「サオリ、ヤった上でタイガくんなら大丈夫そうだなと思ったんだから。大丈夫だよ、それにそろそろ克服したいって言ってたじゃん。」
「んん、2人のことは信じてるけどさ……でもねぇ。」
 茶屋野さんは疑いの目を隠そうともせずに僕を見てくる。少しゾクゾクしてしまう。
「何も最初からトバす必要ないし、嫌なことされたら途中でボコボコにすればいいし。」
「えっ⁉︎怖い。」
 乱暴な言葉に反応してしまう。僕の身の安全はさすがに確保されてると思いたい。
「……それならまぁ。」
 2人に説得される形で茶屋野さんが了承する。
「しょうがないから、あんたに私の相手させてやる。変なことしたら叩くからね。」
「あっはい、お願いします。」
 いつの間にか僕が頼み込むような感じになってしまった。

 電車が途中の駅で止まった。

「じゃあ始めようか。」
「えっ?今からですか。」
「そりゃあ思い立ったときに始めなきゃ。サオリもいいよね?」
「…うん。」
「よし、じゃあ席替わろう。」
 黒崎さんと茶屋野さんが席を交換する。
 左隣にきた茶屋野さんの顔を見るとすごく整っていてほとんどの人が美人だと思うだろうが表情がない。
「茶屋野さん、大丈夫ですか?」
「何がだよ、早くしろよ。」
 彼女の表情は少し投げやりに見えた。
 
「黒崎さん。」
「いつもこんな感じだから気にしないで。今日は軽く触るだけにしとこう。」
 触るだけと言ってもどうすればいいか分からずに茶屋野さんを見つめる。
「強くしたら叩くからね。」
 彼女は少しだけ体をこちらに向けると大きな胸が揺れた。爆乳と呼んで差し支えないほどの大きさを持つ凶悪なおっぱいが目の前にある。思わず唾を飲んで手が伸びそうになってしまう。
 何とか目線を上げると彼女は目を瞑っていた。少し震えているようにも感じる。
「じゃあ触ります。」
「おお。」

 僕は左手で彼女の頭に触れた。きれいな茶色の髪はサラサラで触り心地がいい。掴んでもスルスルと手の平から逃げていく髪の毛。髪の流れに沿うように上から下へ何度も撫でる。
 彼女を見ると少し困惑した表情をしていた。
「何やってんの、お前?」
「えっ?いや触れって言われたから……あっ髪触っちゃだめでしたか?」
 急いで彼女の頭から手を引いてしまったので髪が少し顔にかかってしまう。
「あっすいません。」
 顔に触れないように髪を戻す。その間も彼女は変なものを見る目で僕を見ていた。

「あはは、思ったより大丈夫だった。サオリ大丈夫でしょ?」
「…うん。これなら大丈夫そう。」
 黒崎さんと茶屋野さんが僕をほっといて話し始める。顔を合わせて喋っているので茶屋野さんの表情が見えない。
「やるな~タイガくん。」
 バンバンと金沢さんに背中を叩かれる。意味が分からないまましばらく時間だけ過ぎていく。

「じゃあ今度はサオリがタイガくんのこと触ろうか。」
「…うん。おらこっち向け。」
 相変わらず僕に対する言葉遣いは荒いままだが、僕を見る目は幾分か優しくなっていた。
 茶屋野さんの方を向き見つめ合う状態になる。彼女は一瞬目を逸らしたがまた僕と目を合わせてくれた。
「触るぞ。」
「はい。」
 彼女の右手が僕の頭に触れる。距離が近いせいで肘を僕の肩に乗せていて余計近くに感じる。
 彼女の手が優しく僕の髪を撫でていく。気持ちよさを感じてニヤけてしまうと、彼女の手が離れていった。
「今日はこれくらいにしとこう。」
「あっはい。」
 ニヤけたのがダメだったかな。彼女は少しだけ嫌そうな顔に戻っていた。

 電車が目的地で止まった。
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