電車で会った彼女たち

クレイン

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茶髪さん

見返りにハグとキス

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「前も思ったけどこの駅のトイレきれいだよね。」
「ね~。しかも角のトイレ広いし。」
 女子トイレの一番奥の個室に4人で入った。
 世の男の何人がこんな体験をしたことがあるだろうか。チラッと茶屋野さんの顔を見ると不安げな表情をしていて、少し興奮が収まった。

 ガチャ 鍵を閉めてから4人で向かい合う。
「2回分だとどれくらいかな?」
「そうだなぁ……サオリの前だし、ハグとキスくらいかな。」
 2人が話しているのを僕と茶屋野さんは黙って聞いている。僕はこの後のことを想像してソワソワしているが、彼女は居心地が悪そうに自分の体をさすっていた。

「じゃあ今日はハグとキスに決まり。1人5分間ね。」
 黒崎さんが僕の前に移動して手を広げる。
「タイガ、おいで。」
 彼女が浮かべる優しい微笑みを見たら我慢できなかった。
「クロサキさんっ」
「んっ。…情熱的だね。」
 黒崎さんに勢いよく抱きつくと彼女は優しく僕を受け止めてくれた。互いの背中に両手を回して優しく撫でる。顔にかかる長い黒髪からはほんのり甘い匂いがして無意識に鼻息が荒くなる。
「いい匂いがして、柔らかくて温かいです。」
「私も温かくて、なんか安心する。」
 両手を動かし続けて背中をさする内に、尻や太ももに触りたくなるが認められているのはハグのみ。高ぶった気持ちをどうしようもなくて、僕はより彼女の感触を感じられるように両手に力を入れた。胸板の上で彼女の巨乳が潰れる。服を着ているので直接の感触はないが、何枚か布を隔てた先にある確かな柔らかさを感じる。
「っ、タイガ、ちょっと強い。」
「あっすいません。」
 両手の力を弱めて彼女から体を浮かせる。彼女の感触が無くなって少し寂しさを感じた。何気なく両手を動かすと彼女の髪に触れた。サラサラとした感触がすごく心地いい。
「タイガ、キス。」
「…うん。」
「んっ」
 顔を動かして彼女と唇を合わせる。目を閉じるとすぐに舌を絡める濃厚なものに変わり再び両手に力が入るが、先ほどのことを思い出して優しく髪と背中を撫でる。すると今度は彼女の抱きしめる力が強くなった。背中に少しだけ痛みを感じるくらいだ、だがその痛さが心地よかった。
 彼女が僕を求めているように思えて嬉しくなる。このままキスを続けていたいが――ポロロン ポロロン ポロロン ポロロっ アラームが鳴った。

「は~い、ランの番はおしま~い。次私の番ね。」
 声が聞こえて両手の力を抜き唇を離すが、黒崎さんの手から力が抜けない。
「クロサキさん?」
「5分は短かったな。」
 彼女は呟いてからぎゅっと抱きついて離れていった。少し顔を赤くしながら不満げな表情をしている。そのまま見続けていると正面に金沢さんが来た。
「私の番ね。」
「…はい。お願いします。」
 首の後ろに手を回されて彼女の顔が至近距離にくる。真っ白な肌に整った顔立ち、トイレなので少し暗いのになぜこんなに白く見えるのだろうか。
「ほら、ぎゅーってして?」
「はい。」
 両手を背中に回して抱きしめる。やはり柔らかくて温かい。彼女はスレンダーで力を入れすぎると腰が折れるんじゃないかと心配になってしまう。身長も僕より若干低いので守ってあげたくなる。実際は僕より気が強めなことは分かっているが、それでもときめいてしまう。
「カナザワさんってスレンダーですよね。」
「…胸が小さいと?」
 背中にかかる彼女の両手の力が強くなった。
「いえ違います。華奢で、細くて、儚い美しさみたいな感じで……」
 焦って変なことを言ってしまうが、彼女は小さく笑っていた。
「そんな焦んないでよ。冗談だから。……まぁランより胸がないのは事実だけど。」
「カナザワさんも十分大きいですし、フィット感があるのですごく魅力的ですよ。」
 肩に顎を乗せてくる彼女にありのまま思ったことを言うが、フォローになっていない気がする。
「そうか、まぁあんま気にしてないけど。」
 肩を顎でグリグリと抉って彼女が顔を上げる。
「キスしようか。」
「はい。」
 彼女と唇を合わせて舌を絡ませる。僕の舌は彼女の舌で舐め回されて、唇で咥えられて吸われる。こちらも同じように彼女の舌を味わう。
 もっと感じたいと彼女の頭に手を添えて引き寄せる。髪を掻き分けていく指に心地いい感触。いつまで触っていても飽きないと思えるほどに彼女の髪の触り心地はいい。
 サラサラ クシャ サラサラ 髪を撫でて掻き上げて感触を楽しみながら、彼女の唇を堪能する。彼女は深く舐めたり吸ったりすることは少なく、浅い口付けを繰り返してチュッチュと音を立てる。
 唇と舌の感触、柔らかさと温かさ、口付けを強調する音、僕の興奮は高まっていきいつの間にか勃起していた。彼女に押し付けるようになりそうで腰を引くと、足を絡められて陰茎が彼女の太ももに押し付けられる。
 興奮が高まって両手が彼女の尻に向かおうとすると――ピピピピ ピピピピ ピピピピ ピピっ
またいいところでアラームが鳴った。

 金沢さんから離れて見返りの時間が終わった。それぞれ個室に入ったときの位置に戻ったが全員動こうとしない。正確に言うと僕は勃起しているのであまり動きたくない。茶屋野さんは目を伏せがちにして僕の股間をチラチラ見ている。
「あ、あの……」
「ちょっと物足りないけどしょうがないよね。」
 黒崎さんが不満げな顔で僕の前に立った。
「クロサキさん?」
「右手出して。」
「えっ?はい。」
 右手を出すと彼女も右手を出してきて握手をした。彼女はそのままニギニギと手を動かす。
「クロサキ、さん?」
「私今日右手でスルからさ。」
「はい?」
 いつの間にか彼女は左手を自身の股に添えていた。
「タイガも右手でしてね。」
 正面から見つめられてドキッとしてしまう。頬に赤を浮かべながら今夜の自慰について話す。美人な女子に言われるとすごく興奮する。触られてもいないのに陰茎の硬さが増していく。

 黒崎さんの手が離れていくと、金沢さんが近付いてきた。
「じゃあ私左手でスルから、タイガくんも左手でするときは私を思い出してね。」
「…はい。」
 同じように握手をしてから離れる。
 まだ両手の平に彼女たちの感触が残っている気がする。
「じゃあ帰ろうか。」
「はい。」「うん。」「あっうん。」
 トイレを出てそれぞれ帰路に付いた。
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