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舞踏会の中心に立つ彼の声は、誰よりも響いた。
「エヴァリーナ=フォン=ヴァイセローゼ。この場をもって、君との婚約を破棄する!」
まるで芝居のように、完璧な抑揚で。
人々の視線が一斉に私へと注がれた。驚き、疑い、興味、そして——優越。
悪役令嬢が断罪される場面を待ち構えていたかのような、都合の良い観客たち。
私は軽く息を吸い込み、ゆるやかに礼を取る。
「承知いたしました、殿下」
ざわりと空気が揺れたのがわかった。
私が泣き崩れるとでも? 取りすがるとでも? ……生憎、そんな筋書きには付き合えない。
「君は、婚約者という立場を盾に、幾度もリリー嬢を傷つけた。数々の証言は……すでに神殿にも確認を取ってある」
隣に立つのは、平民出身の“聖女候補”リリー=シャルマン。
絹のような金髪、愛らしい容貌、そして怯えたふりでエドモンドに寄り添う姿は、まるで絵画のように整っていた。
私は彼女を見た。微笑むことすらせず、ただその目を見据える。
——うまくやったわね。けれど、舞台はこれで終わりではない。
エドモンドの語気は高まっていた。
だが、私にはもう関係がなかった。彼の理想も、彼の正義も、そして彼の後悔も。
何もかも、今日を境に“遠くなる”。
「この婚約破棄は、王家としての正式な決定だ。君の家にも、追って通知が届くだろう」
「ええ、それを楽しみにしておりますわ」
リリーが小さく肩を震わせた。
けれど私の声に、怒りも涙も含まれていないことが、彼女には恐らく伝わっただろう。
——私の人生は、今日、解き放たれた。
悪役令嬢という“配役”からも、貴族社会の“仮面劇”からも。
何より、あなたという“王子様の幻想”からも。
ふと、客席の片隅に立つ男と目が合った。
濃い緑の目をした情報屋——ノエル=グリューネヴァルト。
彼は私に向かって、口元だけで言った。
《やっと幕が下りたな、お姫様》
いいえ、ノエル。
これは終幕ではなく、開幕よ。
私という人間の、誰にも縛られない、本当の人生の——。
「エヴァリーナ=フォン=ヴァイセローゼ。この場をもって、君との婚約を破棄する!」
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私は軽く息を吸い込み、ゆるやかに礼を取る。
「承知いたしました、殿下」
ざわりと空気が揺れたのがわかった。
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私は彼女を見た。微笑むことすらせず、ただその目を見据える。
——うまくやったわね。けれど、舞台はこれで終わりではない。
エドモンドの語気は高まっていた。
だが、私にはもう関係がなかった。彼の理想も、彼の正義も、そして彼の後悔も。
何もかも、今日を境に“遠くなる”。
「この婚約破棄は、王家としての正式な決定だ。君の家にも、追って通知が届くだろう」
「ええ、それを楽しみにしておりますわ」
リリーが小さく肩を震わせた。
けれど私の声に、怒りも涙も含まれていないことが、彼女には恐らく伝わっただろう。
——私の人生は、今日、解き放たれた。
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何より、あなたという“王子様の幻想”からも。
ふと、客席の片隅に立つ男と目が合った。
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彼は私に向かって、口元だけで言った。
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