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「──正式な文書として、神殿より申し出がございます」
秋風が吹き込む応接室。
神殿の使者として現れたのは、若き女性神官──
清潔な法衣に金の帯、そして冷静な言葉の切れ味を備えた、レナ=シルヴェストリスという名の人物だった。
「《アウストリアの灯》を、“信仰再教育における模範拠点”として認定したいと考えています。
制度の中で信仰を見直す流れの中、こちらの取り組みは一定の評価に値すると、神殿上層も判断しております」
その言葉に、私は静かに視線を上げた。
「つまり、“制度に組み込む”ということですね」
「あくまで“共に学ぶ関係”を構築したいのです。
教育カリキュラムの一部を制度と連携し、報告を共有するかたちで──」
「報告という名の“監督”と、“成果の数値化”を求められるのでは?」
レナはほんの一瞬だけ言葉を止めた。
だが、すぐに微笑んで続ける。
「……それが“迎合”とお感じになるのであれば、我々は手を引くことも検討いたします。
ですが、あなた方の“言葉”が確かであるならば、それを制度の中からも“信じる”者が現れるべきではないですか?」
言い返せない理だった。
けれど、それが“正しさ”だとは限らない。
私は椅子に背を預けたまま、返す。
「制度に入ることと、制度に灯をともすことは、まったく別です。
私たちは、“制度の外”であるからこそ、子どもたちに選択を許せたのです」
レナの目が細められた。
「……ならば問います。
“制度の中の子どもたち”は、その選択を得る権利すらないのですか?」
私は思わず、言葉を止めた。
──それは、制度を責める者が“制度にいる子”を見失ってしまう危険な問いだった。
「……私たちは、“誰の居場所であってもいい場所”を守ります。
それが制度の中であれ、外であれ、選ぶのはあくまで子どもたちです。
神殿と連携することでその選択肢が広がるのなら──慎重に、受け止めさせていただきます」
レナは軽く頭を下げた。
「それで十分です。
あなた方が“灯”である限り、制度がそれに手をかざすことを恐れる必要はありません。
ただ──“灯がどこにあるか”を知りたがる者もまた、信じる者の一種なのですから」
彼女が去ったあと、ユリアがぽつりと漏らした。
「……踏み込みすぎず、引きすぎず。
それでも、“観測される側”に戻る可能性が出てきましたね」
「ええ。でも、今なら“名を選ぶ自由”がある。
その灯がある限り、私たちは“内側”にいても、決して沈まない」
そして私は思った。
制度が変わるということは、
私たちが“守る側”に回る瞬間でもあるのだと。
その重みを噛みしめながら、私は静かに覚悟を深めた。
灯は、見つかっても消えない。
見守られても、従わない。
それがこの場所の、本当の意味での“信仰”だった。
秋風が吹き込む応接室。
神殿の使者として現れたのは、若き女性神官──
清潔な法衣に金の帯、そして冷静な言葉の切れ味を備えた、レナ=シルヴェストリスという名の人物だった。
「《アウストリアの灯》を、“信仰再教育における模範拠点”として認定したいと考えています。
制度の中で信仰を見直す流れの中、こちらの取り組みは一定の評価に値すると、神殿上層も判断しております」
その言葉に、私は静かに視線を上げた。
「つまり、“制度に組み込む”ということですね」
「あくまで“共に学ぶ関係”を構築したいのです。
教育カリキュラムの一部を制度と連携し、報告を共有するかたちで──」
「報告という名の“監督”と、“成果の数値化”を求められるのでは?」
レナはほんの一瞬だけ言葉を止めた。
だが、すぐに微笑んで続ける。
「……それが“迎合”とお感じになるのであれば、我々は手を引くことも検討いたします。
ですが、あなた方の“言葉”が確かであるならば、それを制度の中からも“信じる”者が現れるべきではないですか?」
言い返せない理だった。
けれど、それが“正しさ”だとは限らない。
私は椅子に背を預けたまま、返す。
「制度に入ることと、制度に灯をともすことは、まったく別です。
私たちは、“制度の外”であるからこそ、子どもたちに選択を許せたのです」
レナの目が細められた。
「……ならば問います。
“制度の中の子どもたち”は、その選択を得る権利すらないのですか?」
私は思わず、言葉を止めた。
──それは、制度を責める者が“制度にいる子”を見失ってしまう危険な問いだった。
「……私たちは、“誰の居場所であってもいい場所”を守ります。
それが制度の中であれ、外であれ、選ぶのはあくまで子どもたちです。
神殿と連携することでその選択肢が広がるのなら──慎重に、受け止めさせていただきます」
レナは軽く頭を下げた。
「それで十分です。
あなた方が“灯”である限り、制度がそれに手をかざすことを恐れる必要はありません。
ただ──“灯がどこにあるか”を知りたがる者もまた、信じる者の一種なのですから」
彼女が去ったあと、ユリアがぽつりと漏らした。
「……踏み込みすぎず、引きすぎず。
それでも、“観測される側”に戻る可能性が出てきましたね」
「ええ。でも、今なら“名を選ぶ自由”がある。
その灯がある限り、私たちは“内側”にいても、決して沈まない」
そして私は思った。
制度が変わるということは、
私たちが“守る側”に回る瞬間でもあるのだと。
その重みを噛みしめながら、私は静かに覚悟を深めた。
灯は、見つかっても消えない。
見守られても、従わない。
それがこの場所の、本当の意味での“信仰”だった。
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