ヒロインは私のルートを選択したようです

深川ねず

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第一章

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 目を開ければそこは慣れ親しんだ自室のベッドの上だった。穏やかな日の光での目覚めは決して悪くないが、私は唸りながら顔を手で覆い、再びベッドに背中から倒れ込んだ。

 酔っても記憶を失わないから昨日のことは完全に覚えている。
 ララに告白され、飲み物の確認もせずに一気に飲み干し、幼馴染に謝り続ける酔っ払いの所業を一片も漏らさず……。

「あああもう、なにがどうしてこうなっちゃったの……」

 返事をしてくれる人はいない。
 しかし吐き出さずにはいられなかった。



 このゲームは自由行動があり、その時に会いに行ったキャラの好感度が上がってイベントが起こる、というシステムだった。
 ルーファスなら中庭、ゼンなら執務室、ノエルなら修練場にいることが多く、会いに行って二言三言話すと好感度が上がるという具合だ。
 ちなみにショーンは食堂か図書室にいることが多かった。
 そしてこのゲームは寄り道にシビアだ。ほとんど毎ターン攻略したいキャラに会う必要があった。
 それを踏まえて思い返せば……。

「会いに来てたわねぇ……毎日毎日……」

 白の国から書状が届いてからのララは、毎日私に会いに来ていた。

 誰かのイベントを起こしさえすれば問題ないと思って特に考えもせず一緒に過ごしていたが、まさか私が攻略される対象になるとは考えてもいなかった。
 わかっていたら理由をつけて断っ……れただろうか。なんだかんだと言いつつ一緒に過ごすことになっていた気もする。

 とにかく、早く返事をしないと。
 いつまでもだらだらと先延ばしにすることは不誠実だし、何より私にはララを恋人として見ることは出来ない。
 早い段階で断れば、まだストーリーへの軌道修正は可能かもしれないし……。
 いや、ダンスを申し込まれなかった時点で、確実にもう好感度は足りない。
 ララはノーマルエンドでこの世界を去ることになるだろう。
 それを寂しく思ってしまうが仕方ないことだ。初見でグッドエンドは難しい。

 ゆっくりと体を起こし身支度を整えた。
 朝食前にララに会いに行こう。
 ララも私達と同じ食堂で食事をしているから、顔を合わせることになる。
 その前にきちんと返事をして、お友達としてこれからの時間を過ごしていこう。
 泣かれてしまうかもしれないけど、長引かせたところで思いに応える気はない。

 シャツにパンツとラフな服装に着替え、ララの部屋へと向かった。



 部屋をノックすると、ララはすぐに出てきた。もしかして眠れなかったりしたのかしらと不安になる。しかし客が私だとわかったら花が咲いたような笑顔で出迎えてくれて、心が痛い。

「おはよう、ララ。少しお話がしたいのだけど、いいかしら」
「もちろんです! 朝からエルザさんが会いに来てくれるなんて、嬉しい」

 頬を染めてはにかむララに、心臓が激しく脈打つ。
 朝から会いに行くのって、もしかして断るには非常識だった? OKすると思われてる? この空気で断れるか、私!?
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