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第一章
80 補佐は頑張りました
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すらりと前衛が同時に剣を抜く。
二つの剣身に、沈み始めた夕陽が映った。
先に踏み込んだのはエルザだ。
キングは迎え撃つ構えで、その場で静止している。
二つの剣はぶつかった。かに思えたが、エルザはキングの剣を受け流し、くるりと身を躍らせてクイーンに向かって踏み出す。それと同時に水の球をいくつも放った。
「は!?」
「う、そだろ、おい……っ」
エルザの行動に意外なほどキングとクイーンは動揺し、それに気を取られて魔法の発動が遅れた。しかしそれが問題にならないほど、二人の動揺が深い。
戦術としては一般的な魔法使い狙いだというのに、何が二人を驚かせたのかはわからない。
「くそっ……攻めるぞ、ゼン!」
魔法使い狙いの戦術を取られたチームはほとんど二つの選択肢を取る。
攻めるか、守るか。
攻めると言ったキングの両目はまっすぐ俺に向けられた。
さっさと俺を倒して二人掛かりでエルザを仕留めるつもりだ。
両手に魔力を通し、俺の指示通りに影は地面から這い出てうごめく。
俺の仕事は、この人の足止めだ。
一対一の時は、倒すことばかり考えてこの人の動きに翻弄されたが、足止めだけなら。
一直線にこちらに向かうキングの足元から影が飛び出し、両足を縫い付けた。
そのまま両手に胴も絡めとり、キングは動きを止める。
「……まぁ、捕まえるのは十八番だよなぁ」
「エルザで慣れましたので……」
逃げる上司を追う俺を知るキングは、同情的な目を向けてくる。
「お前、よくあれで惚れたもんだよな……」
「綺麗で優しくて、飯も美味いなんて理想的じゃないですか」
俺の言葉にキングは笑みを深めた。
「軽口言える余裕が出てきたのは結構だがな。忠告しといてやるよ」
キングの言葉と同時に視界が白塗りつぶされた。
一瞬で何が起きたのかを悟り、素早く影を配置するも腹に衝撃が来る。
「……ぐっ…!」
「捕まえたからって油断するな。闇属性に多いミスだぞ」
息が上手くできずに膝をつき喘ぐ俺に、キングはまるで教師のように言い聞かせる。
クイーンの光属性だ。一瞬で影を消された。
クイーンに目を向けようとして、揺らめく灯りが視界の端に入った。
キングの手元を見れば火の塊が浮かび上がり、轟々と燃え盛っている。
キングはゆったりと手をかざし、その手の動きからは考えられないほどの速度で火の玉は俺を目掛けて飛んできた。
こんなもの、当たればひとたまりも。
考えるより先に影は俺の身を隠し、風と火が軌道を変えていた。俺の後方で轟音が響く。
「やっぱ複数持ちはいいな。やれることが多い」
思わず両手を見つめる。
咄嗟ではあったものの、複数を同時に使えた。
ぐっと両足に力を込めて立ち上がる。
絶対に逃がさない。決意を込めてキングを鋭く睨む。
再び影を出し、キングはそれを当然のように避ける。しかし、時折突風を混ぜると、苛立たしげに舌打ちした。
火の玉を投げつけられれば、同じく火で相殺するか風で軌道を変えた。
倒さなくていい。前衛が、エルザが来るまで耐えればいいんだ。
「ショーンとやった時みたいだな……やりづれぇ」
ぼそりと言われた言葉には気分が高揚した。
まさかあの、四つの国最高峰の魔法使いを持ち出されるとは。
「……と、まぁ褒めて隙作るやり方もあるから覚えとけよ」
笑い混じりの声に一瞬で我に返り、仰け反ると目の前を一閃が走った。
二つの剣身に、沈み始めた夕陽が映った。
先に踏み込んだのはエルザだ。
キングは迎え撃つ構えで、その場で静止している。
二つの剣はぶつかった。かに思えたが、エルザはキングの剣を受け流し、くるりと身を躍らせてクイーンに向かって踏み出す。それと同時に水の球をいくつも放った。
「は!?」
「う、そだろ、おい……っ」
エルザの行動に意外なほどキングとクイーンは動揺し、それに気を取られて魔法の発動が遅れた。しかしそれが問題にならないほど、二人の動揺が深い。
戦術としては一般的な魔法使い狙いだというのに、何が二人を驚かせたのかはわからない。
「くそっ……攻めるぞ、ゼン!」
魔法使い狙いの戦術を取られたチームはほとんど二つの選択肢を取る。
攻めるか、守るか。
攻めると言ったキングの両目はまっすぐ俺に向けられた。
さっさと俺を倒して二人掛かりでエルザを仕留めるつもりだ。
両手に魔力を通し、俺の指示通りに影は地面から這い出てうごめく。
俺の仕事は、この人の足止めだ。
一対一の時は、倒すことばかり考えてこの人の動きに翻弄されたが、足止めだけなら。
一直線にこちらに向かうキングの足元から影が飛び出し、両足を縫い付けた。
そのまま両手に胴も絡めとり、キングは動きを止める。
「……まぁ、捕まえるのは十八番だよなぁ」
「エルザで慣れましたので……」
逃げる上司を追う俺を知るキングは、同情的な目を向けてくる。
「お前、よくあれで惚れたもんだよな……」
「綺麗で優しくて、飯も美味いなんて理想的じゃないですか」
俺の言葉にキングは笑みを深めた。
「軽口言える余裕が出てきたのは結構だがな。忠告しといてやるよ」
キングの言葉と同時に視界が白塗りつぶされた。
一瞬で何が起きたのかを悟り、素早く影を配置するも腹に衝撃が来る。
「……ぐっ…!」
「捕まえたからって油断するな。闇属性に多いミスだぞ」
息が上手くできずに膝をつき喘ぐ俺に、キングはまるで教師のように言い聞かせる。
クイーンの光属性だ。一瞬で影を消された。
クイーンに目を向けようとして、揺らめく灯りが視界の端に入った。
キングの手元を見れば火の塊が浮かび上がり、轟々と燃え盛っている。
キングはゆったりと手をかざし、その手の動きからは考えられないほどの速度で火の玉は俺を目掛けて飛んできた。
こんなもの、当たればひとたまりも。
考えるより先に影は俺の身を隠し、風と火が軌道を変えていた。俺の後方で轟音が響く。
「やっぱ複数持ちはいいな。やれることが多い」
思わず両手を見つめる。
咄嗟ではあったものの、複数を同時に使えた。
ぐっと両足に力を込めて立ち上がる。
絶対に逃がさない。決意を込めてキングを鋭く睨む。
再び影を出し、キングはそれを当然のように避ける。しかし、時折突風を混ぜると、苛立たしげに舌打ちした。
火の玉を投げつけられれば、同じく火で相殺するか風で軌道を変えた。
倒さなくていい。前衛が、エルザが来るまで耐えればいいんだ。
「ショーンとやった時みたいだな……やりづれぇ」
ぼそりと言われた言葉には気分が高揚した。
まさかあの、四つの国最高峰の魔法使いを持ち出されるとは。
「……と、まぁ褒めて隙作るやり方もあるから覚えとけよ」
笑い混じりの声に一瞬で我に返り、仰け反ると目の前を一閃が走った。
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