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第一章
83 補佐は頑張りました
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「……おい、エルザ、どうした? 早く返事しろ!」
「あ、あまりお待たせするのは失礼ですよ!」
固まる俺達を見かねたキングとクイーンがエルザを急かす。
「お前も、オーウェンのこと好きなんだろ!?」
肩を揺すって叫ぶキングにエルザは「好きよ。もちろん」と当然のように言い返した。
「や、やはり補佐として、でしたか!?」
平然とするエルザに、俺の足は生まれたての子鹿のように震え、彼女から距離を取り後ずさる。
こんなことが……いや、この人ならありえる。ありえてしまう……。
「ええっ!? 違うって昨日言ったでしょう! そ、そういう、やつだって!」
「それは確かに言われましたが……ではどうして……」
そんな、なに言ってるのかしらこの人。みたいな顔を……。
「えっ、だ、だって……」
エルザは顔を赤く染めてモジモジと指を弄び、視線は彷徨い、唇を震わせている。
一度ぎゅうと目を閉じたかと思えば、すぐに見開き、意を決してといった調子で視線を合わせられた。
「私達、恋人じゃなかったの……?」
………………。
「ああっ……!!」
咄嗟に口を手で押さえた。
「その……恋人じゃなかったなら、私、結構恥ずかしいことをあなたに……」
「い、いえ! あなたは悪くありません!!」
キングの雰囲気に飲まれて本来の目的を忘れていた。何を素直に告白してるんだ。俺は。
昨日あれだけのことをしておきながら、恋人ではないという方がおかしいだろう。
エルザはまったく悪くない。それはもうまったくもって。
だが、いまこの流れはまずい!!
「へぇ」
「ほう」
肩にズシリと重みがかかり喉の奥から声にならない悲鳴が漏れる。
「そいつが勘違いするだけのことは、すでにしてあるわけだ」
「想定外に手が早いですねぇ……これは人柄を見誤ったか」
「も、ももも申し訳……ございません……」
油の切れたブリキ人形のようなぎこちなさで振り返るも、満面の笑みのキングとクイーンの目は笑っていない。
これは、まさか交際を認めていただけないか!?
「かっ……」
「「……か?」」
「可愛かったんです!!」
渾身の叫びだった。
今更、やはり交際はなしにしろと言われてももう無理だ。俺はもう可愛いエルザを知ってしまった。もうただの補佐には戻れない。
「赤らんだ頰も潤んだ瞳もとてつもない可愛らしさで! あれを前にしてはどんな男でも手を出さずにいられません!」
必死に訴える。エルザの可愛さを伝えて仕方なかったのだとわかっていただかなくては!
「想いが通じて舞い上がったことは事実です! ですが、それがなくともあの上ずる声や不慣れな仕草の可愛らしさは抗いきれるものではありません! それはもう、どんな男でもです! キングやクイーンもご覧になればお分かりいただけるはずです!」
「………………いや、俺達は手は出さねぇぞ」
「やはり私は人柄を見誤ったのでしょうか……」
「エルザさん、本当にこの人でいい……エルザさん?」
なおも言い募ろうとする俺の後頭部に衝撃が走った。手をやればびっしょりと濡れている。水?
そっと振り返ると同時にぎくりと体が強張った。
顔中を真っ赤に染め、全身の毛が逆立ったように髪がなびき、背中には炎を背負っているような気迫を漂わせた愛しい人は全身でみなぎらせていた。俺に対する怒りを。
「うるさい!!!!」
「あ、あまりお待たせするのは失礼ですよ!」
固まる俺達を見かねたキングとクイーンがエルザを急かす。
「お前も、オーウェンのこと好きなんだろ!?」
肩を揺すって叫ぶキングにエルザは「好きよ。もちろん」と当然のように言い返した。
「や、やはり補佐として、でしたか!?」
平然とするエルザに、俺の足は生まれたての子鹿のように震え、彼女から距離を取り後ずさる。
こんなことが……いや、この人ならありえる。ありえてしまう……。
「ええっ!? 違うって昨日言ったでしょう! そ、そういう、やつだって!」
「それは確かに言われましたが……ではどうして……」
そんな、なに言ってるのかしらこの人。みたいな顔を……。
「えっ、だ、だって……」
エルザは顔を赤く染めてモジモジと指を弄び、視線は彷徨い、唇を震わせている。
一度ぎゅうと目を閉じたかと思えば、すぐに見開き、意を決してといった調子で視線を合わせられた。
「私達、恋人じゃなかったの……?」
………………。
「ああっ……!!」
咄嗟に口を手で押さえた。
「その……恋人じゃなかったなら、私、結構恥ずかしいことをあなたに……」
「い、いえ! あなたは悪くありません!!」
キングの雰囲気に飲まれて本来の目的を忘れていた。何を素直に告白してるんだ。俺は。
昨日あれだけのことをしておきながら、恋人ではないという方がおかしいだろう。
エルザはまったく悪くない。それはもうまったくもって。
だが、いまこの流れはまずい!!
「へぇ」
「ほう」
肩にズシリと重みがかかり喉の奥から声にならない悲鳴が漏れる。
「そいつが勘違いするだけのことは、すでにしてあるわけだ」
「想定外に手が早いですねぇ……これは人柄を見誤ったか」
「も、ももも申し訳……ございません……」
油の切れたブリキ人形のようなぎこちなさで振り返るも、満面の笑みのキングとクイーンの目は笑っていない。
これは、まさか交際を認めていただけないか!?
「かっ……」
「「……か?」」
「可愛かったんです!!」
渾身の叫びだった。
今更、やはり交際はなしにしろと言われてももう無理だ。俺はもう可愛いエルザを知ってしまった。もうただの補佐には戻れない。
「赤らんだ頰も潤んだ瞳もとてつもない可愛らしさで! あれを前にしてはどんな男でも手を出さずにいられません!」
必死に訴える。エルザの可愛さを伝えて仕方なかったのだとわかっていただかなくては!
「想いが通じて舞い上がったことは事実です! ですが、それがなくともあの上ずる声や不慣れな仕草の可愛らしさは抗いきれるものではありません! それはもう、どんな男でもです! キングやクイーンもご覧になればお分かりいただけるはずです!」
「………………いや、俺達は手は出さねぇぞ」
「やはり私は人柄を見誤ったのでしょうか……」
「エルザさん、本当にこの人でいい……エルザさん?」
なおも言い募ろうとする俺の後頭部に衝撃が走った。手をやればびっしょりと濡れている。水?
そっと振り返ると同時にぎくりと体が強張った。
顔中を真っ赤に染め、全身の毛が逆立ったように髪がなびき、背中には炎を背負っているような気迫を漂わせた愛しい人は全身でみなぎらせていた。俺に対する怒りを。
「うるさい!!!!」
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