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第一章
90番外編 あの男と残りの七人
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ああは言ったが、ヴァンの人を見る目は信頼出来る。あのピエロ男の動きには注意しておいた方がいいだろう。
エルザを見ながら考えていると、ベルがエルザに近づいて行くのが見えた。
安全に飲めるものを渡しに行くのだろうと思っていたら、エルザの近くにいた参加者がはしゃいでベルにぶつかった。
あっと思った時にはトレイに乗せられたグラスは全て傾き、地面に向かって落ちて行く。
と、思われたグラスはふわりと浮き上がり、溢れた飲み物は流れるように空中を舞った。
思わず手で顔を覆った。
恐らくは無意識に手が出たのだろうエルザが、やっちゃったわーとばかりに苦笑いを浮かべてベルの手元のグラスに飲み物を注ぎ戻した。
こりゃあもう、作戦は失敗とみていいな。
相手も魔法を操る女を狙うのはリスクが高いと考えるだろう。
一応は給仕としての姿勢で頭を下げているベルににこやかに微笑むエルザを見つつ、ルーファスに指示を仰ぎに行くかと考えた。
会場を見渡してルーファスを探していると、ベルに駆け寄る男が見えた。
眼鏡と合わせて付けられる仮面を選んだネビルはベルに何かを話しかけて断られているように見える。
珍しい組み合わせだなと見ていると、心配そうな表情のネビルと、やや焦りつつも嬉しそうにはにかむベルの表情に察するものがあった。
自分が会議中に言った言葉を思い出して頭を掻く。
全員当てはまらないは確かに失言だった。
まぁ、胸も背も小さいから間違っちゃいないが、美人は美人だ。
これは後でネビルに謝らないとな。
「失礼致します、旦那様。お背中にほつれが……」
ルーファスを探していると突然給仕に話しかけられた。
こちらの返事も待たずに背後に入る給仕の姿を確認せずに声をかける。
「……なんだよ?」
「エルザ殿に絡んでください。お得意の下品で執拗に」
「お得意のってな……理由は?」
給仕としての動きもそつのない補佐殿は小声で続ける。
「今のトラブルで魔法を使えることが知られました。釣れそうな気配はありましたから、彼女が強引に迫られれば弱いと見せられればまだ可能性はあります」
「……もういいんじゃね? エルザ以外が狙われたらとっ捕まえるって形に変更でも」
「それではあの方が責任を感じます」
「確かにそれはそうだけどよ……補佐殿はいいのかよ。惚れた女が危ない目に合うかもしれねーんだぞ」
背後に目を向けると「何を今更」と睨まれた。
「あの方がやると言ったら、俺はそれを成功するようサポートするまでです。危ない目に合わせないそうにするのがあんたの役目だ」
いいから行ってこいと背中を押され、舌打ちが出る。渋々足を踏み出した。
白のドレスに合わせた仮面は顔の上半分を白のレースで覆い、大きな白い羽根で飾られたものだ。
薄 いブルーの髪や瞳と合わせればまるで。
「ごきげんよう、レディ。まるで湖面を優雅に泳ぐ白鳥のような貴女とダンスを踊る栄誉を私にお与え頂けないだろうか」
怪訝な顔を頂きました。
補佐め……。お得意のってなんだよ。寄ってこられることはあってもこっちから声なんざかけたことねーわ。
「……あいにくですが、わたくしでは貴方のお相手は勤まりませんわ。失礼いたします」
なんで絡んできたのよと目で語るエルザは立ち去ろうとする。
ずっと見ていたがこいつは声をかけてくる男を全て素気無くあしらっていた。
今日の目的わかってんのか?
去る手を取って軽く引き寄せた。
「つれないな。先程から見ていたが誰とも踊らずに帰るつもりかい?そんなのつまらないだろう。僕なら楽しませてあげられるよ」
俺の台詞を聞いたエルザの睨む目に笑いがこもる。……笑われたら一生のトラウマになる。頼むからやめてくれよ。
そっと耳元に顔を寄せて「合わせて嫌がれ。逃げるなよ」と囁いた。
目を瞬いたエルザは、眉根を寄せて声を張った。
「……離してくださいませ。貴方のような方とは踊りたくありません」
「そのように男を怖がることないだろう。周りを見てみなよ。みんな楽しんでる」
「怖がってなど! 皆が皆、そのような目的で参加しているわけではありませんわ」
「面白いことを言うね。僕はダンスに誘っているだけだと言うのに。そのような目的とは何の話だい?」
さっとエルザの頰が赤くなるが、これは恐らく素だな。後で保護者共にどやされないかと冷や汗が出るが、今日の目的にはこの上なくいい反応だった。
「なんて失礼な方なの。手を離しなさ」
パシャリと音を立てて無色の液体がエルザのドレスにかかる。
「これは申し訳ない! お召し物を汚してしまった!」
ドレスに恐らくは水をかけた男はエルザの手を取り「すぐに汚れを落とさなくては。こちらへ」とさりげなく彼女を連れて行く。
エルザに見えないよう、ピエロの仮面の隙間から俺に嘲笑を向けて。
肩をすくめて悔しがる振りをする。
どうやら狙い通り釣り上がったようだ。
エルザを見ながら考えていると、ベルがエルザに近づいて行くのが見えた。
安全に飲めるものを渡しに行くのだろうと思っていたら、エルザの近くにいた参加者がはしゃいでベルにぶつかった。
あっと思った時にはトレイに乗せられたグラスは全て傾き、地面に向かって落ちて行く。
と、思われたグラスはふわりと浮き上がり、溢れた飲み物は流れるように空中を舞った。
思わず手で顔を覆った。
恐らくは無意識に手が出たのだろうエルザが、やっちゃったわーとばかりに苦笑いを浮かべてベルの手元のグラスに飲み物を注ぎ戻した。
こりゃあもう、作戦は失敗とみていいな。
相手も魔法を操る女を狙うのはリスクが高いと考えるだろう。
一応は給仕としての姿勢で頭を下げているベルににこやかに微笑むエルザを見つつ、ルーファスに指示を仰ぎに行くかと考えた。
会場を見渡してルーファスを探していると、ベルに駆け寄る男が見えた。
眼鏡と合わせて付けられる仮面を選んだネビルはベルに何かを話しかけて断られているように見える。
珍しい組み合わせだなと見ていると、心配そうな表情のネビルと、やや焦りつつも嬉しそうにはにかむベルの表情に察するものがあった。
自分が会議中に言った言葉を思い出して頭を掻く。
全員当てはまらないは確かに失言だった。
まぁ、胸も背も小さいから間違っちゃいないが、美人は美人だ。
これは後でネビルに謝らないとな。
「失礼致します、旦那様。お背中にほつれが……」
ルーファスを探していると突然給仕に話しかけられた。
こちらの返事も待たずに背後に入る給仕の姿を確認せずに声をかける。
「……なんだよ?」
「エルザ殿に絡んでください。お得意の下品で執拗に」
「お得意のってな……理由は?」
給仕としての動きもそつのない補佐殿は小声で続ける。
「今のトラブルで魔法を使えることが知られました。釣れそうな気配はありましたから、彼女が強引に迫られれば弱いと見せられればまだ可能性はあります」
「……もういいんじゃね? エルザ以外が狙われたらとっ捕まえるって形に変更でも」
「それではあの方が責任を感じます」
「確かにそれはそうだけどよ……補佐殿はいいのかよ。惚れた女が危ない目に合うかもしれねーんだぞ」
背後に目を向けると「何を今更」と睨まれた。
「あの方がやると言ったら、俺はそれを成功するようサポートするまでです。危ない目に合わせないそうにするのがあんたの役目だ」
いいから行ってこいと背中を押され、舌打ちが出る。渋々足を踏み出した。
白のドレスに合わせた仮面は顔の上半分を白のレースで覆い、大きな白い羽根で飾られたものだ。
薄 いブルーの髪や瞳と合わせればまるで。
「ごきげんよう、レディ。まるで湖面を優雅に泳ぐ白鳥のような貴女とダンスを踊る栄誉を私にお与え頂けないだろうか」
怪訝な顔を頂きました。
補佐め……。お得意のってなんだよ。寄ってこられることはあってもこっちから声なんざかけたことねーわ。
「……あいにくですが、わたくしでは貴方のお相手は勤まりませんわ。失礼いたします」
なんで絡んできたのよと目で語るエルザは立ち去ろうとする。
ずっと見ていたがこいつは声をかけてくる男を全て素気無くあしらっていた。
今日の目的わかってんのか?
去る手を取って軽く引き寄せた。
「つれないな。先程から見ていたが誰とも踊らずに帰るつもりかい?そんなのつまらないだろう。僕なら楽しませてあげられるよ」
俺の台詞を聞いたエルザの睨む目に笑いがこもる。……笑われたら一生のトラウマになる。頼むからやめてくれよ。
そっと耳元に顔を寄せて「合わせて嫌がれ。逃げるなよ」と囁いた。
目を瞬いたエルザは、眉根を寄せて声を張った。
「……離してくださいませ。貴方のような方とは踊りたくありません」
「そのように男を怖がることないだろう。周りを見てみなよ。みんな楽しんでる」
「怖がってなど! 皆が皆、そのような目的で参加しているわけではありませんわ」
「面白いことを言うね。僕はダンスに誘っているだけだと言うのに。そのような目的とは何の話だい?」
さっとエルザの頰が赤くなるが、これは恐らく素だな。後で保護者共にどやされないかと冷や汗が出るが、今日の目的にはこの上なくいい反応だった。
「なんて失礼な方なの。手を離しなさ」
パシャリと音を立てて無色の液体がエルザのドレスにかかる。
「これは申し訳ない! お召し物を汚してしまった!」
ドレスに恐らくは水をかけた男はエルザの手を取り「すぐに汚れを落とさなくては。こちらへ」とさりげなく彼女を連れて行く。
エルザに見えないよう、ピエロの仮面の隙間から俺に嘲笑を向けて。
肩をすくめて悔しがる振りをする。
どうやら狙い通り釣り上がったようだ。
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