王宮に咲くは神の花

ごいち

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第四章 三人目のハル・ウェルディス

蜜月

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 鳥の鳴き声しか響かぬ無人の宮を、サラトリア・ヴァルダンは感情を浮かべぬ顔で見渡した。

 凝った装飾の花瓶に花はなく、瀟洒な燭台からは灯りが取り除かれている。
 宮の主に相応しく、ほんの数日前まで風雅な様相であったこの宮も、人がいなくなれば廃墟同然だ。蕾をつけ始めた中庭の花も、愛でるものがいなければただ虚しく寂しいだけだった。

 この宮の主は数日前からここを離れ、遥か南にある離宮に赴いている。それを知るのは、王都ではサラトリア一人だ。

 『白桂宮では下働きが持ち込んだ流行病が広がり、王妃ばかりか国王ジハードまでもが病に倒れた』

 表宮殿ではそういう話になっていた。
 特別な医師団が組まれ、厳戒態勢をとって療養中であるとしているため、まさかこの宮が全くの無人だとは、宮廷貴族の誰も信じはすまい。離宮へ同行を許されたごく一部の侍従を除いて、残りの者は事実を知らされることもなく、療養の名目で宿下がりを命じられていた。

 あらゆる扉が施錠されているため、出入りできるのはこのホールまでだ。病床の国王夫妻を見舞うという口実で、サラトリアは毎日無人の宮を訪れていた。
 ホールに置いてある鍵付きの引き出しの中には、あらかじめジハードが署名を済ませて用意しておいた書類がいくつか積まれている。ここで少しばかりの時間を潰して、病床のジハードから命を受けてきたように見せかけて戻るのが、サラトリアに課せられた役割だった。

 冷たい風が手に持った書類を揺らした。神山から風が吹き下ろす王都は、春の訪れが遅い。――南の方では、これより少しは風が温くなっているだろうか。

 サラトリアは風が吹いてきた中庭の奥に視線を向けた。
 白い息を吐きながら、寂しげに空を見上げていた細い背中は、今はここにはない。

 北風に吹き上げられて千々に散ってしまったのではないかと、サラトリアは低い空を見上げた。








「う……」

 小さな呻きと共に、シェイドは意識を取り戻した。
 気を失っていたのは一瞬のことだったようだ。伏せた姿のまま首を巡らせて壁を見る。燭台の蝋燭は気を失う前に比べいくらも短くなっていなかった。
 それに、身の内を穿つ塊はまだ勢いを保ったままで、解放される兆しは感じられない。

「……苦し、い……もう、ッ……」

 啜り泣きが漏れた。太いものが体内をゆるゆると動く感触に、敏感になった下腹がひきつれそうになる。
 思わず弱音を零すと、背を温めていた大きな体が重みを掛けて深く沈んできた。

「あ、ぁっ……!」

「名を呼べと、言ったろう」

 衰えを知らぬ剛直が押し込まれてきて、深々と体奥を抉った。先に放たれたものが狭い内腔から溢れ出し、足の間を伝って寝具を濡らす。柔らかい絹でできた敷物には、二人が何度も放ったもので小さな水たまりができていた。
 後ろから揺さぶられるたびに緩く勃った性器がそこで擦れて、シェイドは泣き声を上げて身悶えた。

 今日は寝台に入った時からずっと俯せに這い、後ろから国王の体を受け入れていた。
 震えて腕の力が抜けると、濡れた寝具と逞しい剛直に挟まれて前と後ろを同時に責められる。甘く苦しい責めから逃れたくて腰を浮かせば、肉の凶器がその分深々と入り込み、長く尾を引く絶頂へと追い上げられる。
 何度も何度も頂へと昇りつめ、もはや臍から下が己のものとは思えないほど、ぐずぐずに蕩け切っていた。

 夜も浅い時間から気をやり続け、いつ終わるとも知れぬ際限の無い愉悦に晒され続けていた。
 穿たれる快楽に鋭く叫び、頭の中が閃光で埋め尽くされるごとに、己が何者であったのかさえ忘れてしまいそうになる。
 賤しく醜い化け物であったことを忘れ、人肌の温かさに溺れてしまいそうになっていた。

「もう……終わら、せて……っ、くださ……」

 少しでも正気が残っているうちに己を取り戻したい。そうでなければ何もかも忘れて、尊い体に両手で縋り付いてしまいそうだった。

「俺の名を呼びながら果てればな……!」

「ひゃ、ぁ! ぁ、ああぁっ……!」

 ゆるゆるとした突き上げが激しいものに変わった。腰を寝台から持ち上げられて、太く逞しいものが蜜溢れる窄まりを大きく掻き回す。力の入らない両腕は上半身を支えることもできず、敷物の上に突っ伏したままだ。
 そこだけ高々と掲げられた尻を掴んで、シェイドの主は貪欲な性奴隷の肉を激しく穿った。

 腰の奥から鳩尾に掛けて、総毛立つような震えがまたも走る。足の間で揺れるものからトロトロと粘液を零しながら、シェイドは泣き声で主に許しを乞うた。

「……陛、下ぁ……もう、ッ……もう、だめで、す……っ!」

「懲りない奴だな……!」

「や!……ぁああッ!」

 苛立たしげな声と共に、伏せていた上半身が持ち上げられた。

 胡坐をかいた国王の膝の上に、両足を開いたあられもない姿で座らされる。無論、体の内側は杭のような牡に貫かれたままだ。
 自重で深々とそれを呑み込むことになり、下腹の奥がゴリゴリと抉られた。

「ひあ!……ひぁあぅっ」

 中で逝った証に萎えた男の象徴からまた蜜が溢れだした。もう何時間も抱き合っているのに欲情は尽きることなく湧き上がり、シェイドを何度でも高みに連れて行く。
 脱力して踏みしめることもできない足を後ろから抱えて、幼子に用を足させる姿でジハードは聞き分けの悪い愛人を揺さぶった。

「名を呼べと言ったろう。それとも俺の名を忘れてしまったか」

「あ!……ぁああ!……だめ、ぇ……ッ」

 忘れてなどいない、忘れるものか。
 首を横に振ってそれを伝えようとしたが、気性の荒い王はそんな答えでは満足しない。

 汗に濡れた髪を掻き分け、白い首筋を強く吸って鮮やかな所有の印を残し、張りつめてツンと勃ちあがった乳首を後ろから交互に虐める。途端、鋭い声を放ってシェイドはまた昇りつめた。胸の粒も弄られ過ぎたせいで、ここだけで気をやれるほど感度が鋭くなっていた。

「……体の方は、こんなに素直なのにな……ッ」

「や……ぁ! あ――――ッ……!」

 閉じた瞼の裏で閃光が弾けた。下腹がぎゅっと縮み上がり、体内の牡を締め上げるのが自分で分かった。脈打つ熱い肉塊はそれを振りほどくかのように大きな揺さぶりを掛けてくる。
 昇りつめている最中にさらに上へ上へと追い立てられ、シェイドはついに卑しい己の身分を忘れた。

「……ジハー、ド!……ッ、いぃ、逝く、逝きますッ……!」

 尊い名を口に上らせれば、その背徳感がさらなる悦楽を呼び覚ます。
 卑しい北方人の身の上で、神にも等しい国王の名を呼んで果てるなど、これほど罪深いことがあるだろうか。それなのに名を呼べば呼ぶほど、体の奥底から大きな愉悦の波が押し寄せてきて、もう止められはしない。

「そうだ。果てる時には、俺の名を呼べ……っ」

「また、逝っ、ァアアッ!……ジハードッ……ジハードッ!……!」

 胸を苛む手に手を重ね縋るように握りしめながら、シェイドはまたとない深い絶頂を味わった。後ろから巻き付いた力強い両腕が、それに応えて抱き潰さんばかりの強さで全身を拘束する。

「……俺、も……ッ!」

 深々と身の内に埋まったものから熱情の塊が勢いよく吐き出された。淫らな体は歓喜してそれを受け止める。
 溢れ出てくるほどの質量に自身も悦楽の証をトロトロと零して、シェイドは身を捩って泣き咽んだ。
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