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第二章 とんでもない相手を好きになり
魔法戦開幕
グレウスは士官室で以前見た地図を頭の中に思い浮かべた。
アスファロスの南東部でラデナとの国境に接する辺りは、ロンロルド山脈と呼ばれる切り立った山々が連なっている。
国境は地割れのように広がる深い谷で、谷底には山脈から流れ込む雪解け水や湧き水が流れていた。唯一の交通路は、平野部から山脈を切り開いて造った細い街道で、谷を渡す堅固な橋が二つの国を繋いでいる。
橋の両側にはそれぞれの国の砦が築かれていた。そこが関所だ。
遥か昔一帯すべてがアスファロスの領土であった頃には橋の通行料だけを納めればよかったが、現在では通行手形と通行料の他に、出入国に対する税が掛かるようになった。特にラデナから海産物を持ち出す際の税が高額で、アスファロスでは高級品となっている。
その二つの国を渡す堅固な橋の上は今、ラデナ国旗を掲げた兵によって埋め尽くされていた。
国境のラデナ側を見れば、急拵えで道幅を広げたらしい街道と、その街道いっぱいに押し寄せる軍勢の姿が見える。先頭では巨大な弩の設置作業が進められ、アスファロス側に築かれた要塞を破ろうと準備しているのがわかった。
上空から見れば、ラデナが周到に戦の準備をしていたことは一目瞭然だ。だが複雑な地形が目隠しになって、アスファロスの側からそれを察することは難しそうだった。
砦の警備兵からしてみれば、突如として数も知れない軍勢が押し寄せてきたようなものだろう。
最低限の備えしかない警備兵たちは、自分たちでは手に負えないと逃げてしまったのかもしれない。
橋の上がラデナ勢で埋まっているというのに、アスファロス側の砦に人の気配はなく、防衛する兵士の姿を確認することはできなかった。
上空から見るラデナ軍の数は、怖ろしく多い。
千や二千どころでないことだけは確実だが、果たして何万の軍勢なのかと問われても、見たこともない大軍勢だとしか答えようがないほどだ。
何台もの弩、武器や軍糧を載せた無数の馬車。押し寄せる騎兵軍と、その後ろに控えた歩兵の大軍。
国を挙げて国境を制圧しに来ていることだけは明白だ。
「見るがいい、あの軍勢を! 国境の砦さえ突破すれば、お前らの国はまともな防衛線を持たない! 我がラデナ国軍の勢いを、止められるものなら止めてみよ!」
ディルタスとコンラートに肩を押さえられたまま、ゼフィエルが吠えた。それを聞いてグレウスは歯噛みする。
腹立たしいが、ゼフィエルの言う通りだ。
オルガの魔法で帝都からここまで空を駆け抜けてきたが、途中に防衛の拠点となるような城砦などは見当たらなかった。平野部のほとんどは小さな集落がある穀倉地帯で、いかにも長閑な田園風景だ。押し寄せる他国の軍隊に対抗する力があるとはとても思えない。
魔導皇の威光と、山脈に囲まれた守りやすい地形。それに胡坐をかいて、確かにアスファロスは国防をないがしろにしすぎたのかもしれない。
「私一人を捕らえたところで、ラデナ軍は止まらんぞ! 温情を求めるのならば今すぐ私を解放し、国王陛下の前で土に額を擦りつけて慈悲を乞うことだ!」
足下の大軍勢に力を得たらしい。先程までの青褪めた顔は消え、ゼフィエルの顔に再び勝利を確信する笑みが浮かんだ。
オルガに手を握られたグレウスは顔色を変えたが――。
ゼフィエルの肩を押さえるディルタスが、呆れたように溜息を吐いた。
「知らんぞ、どうなっても」
スッと背筋が寒くなる感覚に、グレウスはブルリと震えた。
寒い。全身に鳥肌が立っている。
山より高い空の上に居るせいで、空気が薄くて寒いのか。
オルガは大丈夫かと隣を窺って、グレウスはヒュッと息を呑んだ。
「……ほぉう?」
美しいが、どう贔屓目に見ても禍々しい笑みが、薄く形のいい唇に浮かんでいた。
黒い翼が悠々と羽ばたき、長い黒髪が風を孕んでゆらりとたなびく。
切れ長の両目に嵌る赤い目は、今や人外の光を帯びて煌めいていた。
「どの軍が――」
低く艶やかな声は、むしろ猫を撫でるように優しい。
しかし優しいはずのその声を聞いて、オルガの視線を受けた三人はガタガタと震え出した。
理屈でも演技でもない。氷を背中に抱いたような悪寒に襲われているのだ。
オルガ曰く、強靭な魔法防御を備えたグレウスでさえ、背筋の寒さに震えを禁じ得ないのだから。
左手をグレウスに預けたまま、オルガの右手が高々と上がる。
「――私が定めた国境を越え、我が国に侵攻してくると?」
長く整った指先が美しかった。
ペンよりも重いものは持ったことがなさそうな、白く優美な貴人の手だ。
その手が拳を握る。
「教えてもらおうか、ゼフィエル王子。如何なる国の軍隊が、我が許しなく魔法帝国アスファロスに足を踏み入れられるのかを!」
言葉が終わると同時に、空が真っ二つに割れた。
割れんばかりの轟音を伴って、落ちた雷がラデナの砦を打ち砕く。
突風が吹き荒れ、設置の途中だった弩が倒れていく。橋の上にいた兵士は飛ばされ、軍馬は恐慌状態で辺りを踏み荒らした。
冬の低い空を、なおも稲光が走る。
天から振り下ろされた巨大な鉄槌のように、雷は国境の山を直撃した。焼け焦げて煙を上げる大木が山の斜面から転がり落ち、ラデナの軍を直撃する。
街道は堰き止められ、軍隊は分断された。馬たちは主人を振り落として逃げ去り、後に残されたのは陣頭で砦攻めの準備をしていた一軍だけだ。
地上の異変はそれだけでは終わらなかった。
谷の水は逆流し、鎌首をもたげる蛇のように跳ね上がった。冬の冷たい水が渦を巻いて橋を襲い、ラデナ側の国境の土を洗い流していく。
ラデナの兵士に残された逃げ場は、アスファロス側の砦だけだった。
「砦を落とせ! 砦を落とせ――ッ!」
馬を失った指揮官が、采配を振るって檄を飛ばした。次の瞬間――。
風を受けたラデナの旗が大きく広がり、指揮官の体に巻きついて橋の上へと引き倒した。
にわかに突風が吹き荒れる。
矢をつがえた兵士たちの弓弦が、切り裂くような風を受けて次々と弾け飛んでいく。薄く光る魔法の痕跡が辺りを舞った。
「兵を捕縛せよ!」
叫んだのは、近衛騎士団団長のカッツェだった。
その声を合図に、今まで無人だったアスファロスの砦に重武装した軍勢が姿を現わした。
銀色の甲冑の肩にアスファロスの紋章を刻印した一団――特殊任務で都を空けているはずの近衛騎士団に間違いない。
「速やかに制圧せよ!」
号令の下、魔力を帯びた風と炎が吹き荒れた。
貴族の子弟で構成された精鋭部隊、近衛騎士団の得意とする魔法戦が始まった。
アスファロスの南東部でラデナとの国境に接する辺りは、ロンロルド山脈と呼ばれる切り立った山々が連なっている。
国境は地割れのように広がる深い谷で、谷底には山脈から流れ込む雪解け水や湧き水が流れていた。唯一の交通路は、平野部から山脈を切り開いて造った細い街道で、谷を渡す堅固な橋が二つの国を繋いでいる。
橋の両側にはそれぞれの国の砦が築かれていた。そこが関所だ。
遥か昔一帯すべてがアスファロスの領土であった頃には橋の通行料だけを納めればよかったが、現在では通行手形と通行料の他に、出入国に対する税が掛かるようになった。特にラデナから海産物を持ち出す際の税が高額で、アスファロスでは高級品となっている。
その二つの国を渡す堅固な橋の上は今、ラデナ国旗を掲げた兵によって埋め尽くされていた。
国境のラデナ側を見れば、急拵えで道幅を広げたらしい街道と、その街道いっぱいに押し寄せる軍勢の姿が見える。先頭では巨大な弩の設置作業が進められ、アスファロス側に築かれた要塞を破ろうと準備しているのがわかった。
上空から見れば、ラデナが周到に戦の準備をしていたことは一目瞭然だ。だが複雑な地形が目隠しになって、アスファロスの側からそれを察することは難しそうだった。
砦の警備兵からしてみれば、突如として数も知れない軍勢が押し寄せてきたようなものだろう。
最低限の備えしかない警備兵たちは、自分たちでは手に負えないと逃げてしまったのかもしれない。
橋の上がラデナ勢で埋まっているというのに、アスファロス側の砦に人の気配はなく、防衛する兵士の姿を確認することはできなかった。
上空から見るラデナ軍の数は、怖ろしく多い。
千や二千どころでないことだけは確実だが、果たして何万の軍勢なのかと問われても、見たこともない大軍勢だとしか答えようがないほどだ。
何台もの弩、武器や軍糧を載せた無数の馬車。押し寄せる騎兵軍と、その後ろに控えた歩兵の大軍。
国を挙げて国境を制圧しに来ていることだけは明白だ。
「見るがいい、あの軍勢を! 国境の砦さえ突破すれば、お前らの国はまともな防衛線を持たない! 我がラデナ国軍の勢いを、止められるものなら止めてみよ!」
ディルタスとコンラートに肩を押さえられたまま、ゼフィエルが吠えた。それを聞いてグレウスは歯噛みする。
腹立たしいが、ゼフィエルの言う通りだ。
オルガの魔法で帝都からここまで空を駆け抜けてきたが、途中に防衛の拠点となるような城砦などは見当たらなかった。平野部のほとんどは小さな集落がある穀倉地帯で、いかにも長閑な田園風景だ。押し寄せる他国の軍隊に対抗する力があるとはとても思えない。
魔導皇の威光と、山脈に囲まれた守りやすい地形。それに胡坐をかいて、確かにアスファロスは国防をないがしろにしすぎたのかもしれない。
「私一人を捕らえたところで、ラデナ軍は止まらんぞ! 温情を求めるのならば今すぐ私を解放し、国王陛下の前で土に額を擦りつけて慈悲を乞うことだ!」
足下の大軍勢に力を得たらしい。先程までの青褪めた顔は消え、ゼフィエルの顔に再び勝利を確信する笑みが浮かんだ。
オルガに手を握られたグレウスは顔色を変えたが――。
ゼフィエルの肩を押さえるディルタスが、呆れたように溜息を吐いた。
「知らんぞ、どうなっても」
スッと背筋が寒くなる感覚に、グレウスはブルリと震えた。
寒い。全身に鳥肌が立っている。
山より高い空の上に居るせいで、空気が薄くて寒いのか。
オルガは大丈夫かと隣を窺って、グレウスはヒュッと息を呑んだ。
「……ほぉう?」
美しいが、どう贔屓目に見ても禍々しい笑みが、薄く形のいい唇に浮かんでいた。
黒い翼が悠々と羽ばたき、長い黒髪が風を孕んでゆらりとたなびく。
切れ長の両目に嵌る赤い目は、今や人外の光を帯びて煌めいていた。
「どの軍が――」
低く艶やかな声は、むしろ猫を撫でるように優しい。
しかし優しいはずのその声を聞いて、オルガの視線を受けた三人はガタガタと震え出した。
理屈でも演技でもない。氷を背中に抱いたような悪寒に襲われているのだ。
オルガ曰く、強靭な魔法防御を備えたグレウスでさえ、背筋の寒さに震えを禁じ得ないのだから。
左手をグレウスに預けたまま、オルガの右手が高々と上がる。
「――私が定めた国境を越え、我が国に侵攻してくると?」
長く整った指先が美しかった。
ペンよりも重いものは持ったことがなさそうな、白く優美な貴人の手だ。
その手が拳を握る。
「教えてもらおうか、ゼフィエル王子。如何なる国の軍隊が、我が許しなく魔法帝国アスファロスに足を踏み入れられるのかを!」
言葉が終わると同時に、空が真っ二つに割れた。
割れんばかりの轟音を伴って、落ちた雷がラデナの砦を打ち砕く。
突風が吹き荒れ、設置の途中だった弩が倒れていく。橋の上にいた兵士は飛ばされ、軍馬は恐慌状態で辺りを踏み荒らした。
冬の低い空を、なおも稲光が走る。
天から振り下ろされた巨大な鉄槌のように、雷は国境の山を直撃した。焼け焦げて煙を上げる大木が山の斜面から転がり落ち、ラデナの軍を直撃する。
街道は堰き止められ、軍隊は分断された。馬たちは主人を振り落として逃げ去り、後に残されたのは陣頭で砦攻めの準備をしていた一軍だけだ。
地上の異変はそれだけでは終わらなかった。
谷の水は逆流し、鎌首をもたげる蛇のように跳ね上がった。冬の冷たい水が渦を巻いて橋を襲い、ラデナ側の国境の土を洗い流していく。
ラデナの兵士に残された逃げ場は、アスファロス側の砦だけだった。
「砦を落とせ! 砦を落とせ――ッ!」
馬を失った指揮官が、采配を振るって檄を飛ばした。次の瞬間――。
風を受けたラデナの旗が大きく広がり、指揮官の体に巻きついて橋の上へと引き倒した。
にわかに突風が吹き荒れる。
矢をつがえた兵士たちの弓弦が、切り裂くような風を受けて次々と弾け飛んでいく。薄く光る魔法の痕跡が辺りを舞った。
「兵を捕縛せよ!」
叫んだのは、近衛騎士団団長のカッツェだった。
その声を合図に、今まで無人だったアスファロスの砦に重武装した軍勢が姿を現わした。
銀色の甲冑の肩にアスファロスの紋章を刻印した一団――特殊任務で都を空けているはずの近衛騎士団に間違いない。
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