アイテムボックスを極めた廃ゲーマー、異世界に転生して無双する。

メルメア

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プロローグ 転生

死因『ゲームのやり過ぎ』とかいう恥

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「プレイヤー『ミオン』さん。あなたは死亡しました」

 VRゲーム「セブンホライズン・オンライン」のプレイ中。
 いきなり世界が真っ暗になったかと思ったら、そんな声が聞こえてきた。
 徐々に周りが明るくなっていく。
 ゲームでは見たことのない謎の空間に、私と少女がいた。
 少女――このゲームの公式PRキャラクターであるリリアちゃんが口を開く。

「プレイヤー『ミオン』さん。あなたは死亡しました」

「それはさっきも聞いたんだけど……。どういうこと? 私、死んだの?」

「はい」

「それはゲーム内でミオンが死んだってこと? それとも中の人が?」

「中の人、楠木美音さんが死亡しました」

「ええ……」

 ミオンというのはゲームのプレイヤー名で、私の本名は楠木美音という。
 20歳。無職。引きニート。廃ゲーマー。
 正直、いてもいなくても社会にはあまり影響のない人間だ。
 ……自分で言ってて悲しくなってきた。

「死んだって……何で死んだの? ひょっとして、現実世界で災害が起きたとか?」

「いえ、そうではありません。あなた、最後にゲームをログアウトしたのがいつか覚えてますか?」

「えーっと、確か1週間前……ああ、なるほどね」

 私は事の全てを理解する。
 ゲーム内でも飲食はできるが、それは味覚や嗅覚に作用するだけで、現実の渇きや空腹を満たすことは無い。
 そんな状況で1週間も過ごし続けたらどうなるか。
 答えは明白だ。逆に、よく1週間もったものだと思う。

「お分かりになりましたか? ご自分の愚かさが」

「それはもう。痛いほどに」

 リリアちゃんからの辛辣な一言に、ぐうの音も出ない。
 そんな私に、彼女はなおも追い打ちをかける。

「ゲームのやり過ぎで死亡。子供たちへの反面教師として、ニュースで大いに取り上げられそうですね」

「あ、あ、あ、やめ、やめてぇ……」

 効果抜群。
 私のライフポイントはゼロだ。
 いや、もう実際に死んでるんだっけ。

「と、ここまで話を聞いて何か疑問に思うことはありませんか?」

「んー……あ、そうだ。死んでるはずのに、どうして私はリリアちゃんと会話できてるの?」

「愚かなミオンさんでも気付かれたようですね。そこが話のクソなんです」

「たぶんミソだね?」

 クソってそんなに私へ暴言吐きたいのかな?
 リリアちゃんってこんな毒舌キャラじゃないはずなんだけど。
 この愚か者を前にかなり辛辣だ。
 でもまあ、完全に自業自得だから仕方がない。

 リリアちゃんは一つ咳ばらいをすると、真面目なトーンで話を始めた。

「楠木美音さんは死亡しましたが、プレイヤーのミオンさんは大変人気があります。中の人と違って」

 あ、真面目なトーンだけど毒舌だわ。
 そこは変わってないわ。

 でもミオンが人気というのは、私も重々承知しているところだ。
 ミオンは世にも珍しい“アイテムボックス”を使って戦うプレイヤー。
 しかもただのイロモノではなく、セブホラ四天王の一角に数えられる最強の実力者なのだ。
 “無限空間”ミオンという異名も持っている。

「あなたのような目玉となるプレイヤーに突然消えられては、当ゲームにとって大きな損失となります。そこで、サーバに保存されているあなたのデータを運営側に引き継ぎ、このVRゲーム内で運用し続ける許可を頂きたいのです」

「早い話が、アバターを運営に渡せってことね? 中の人は死んだけど、今度は運営がミオンを動かすと」

「その通りです」

「別に構わないけど」

 理由が理由だし、運営も悪いようにミオンを運用したりはしないだろう。
 そもそも、死んだ身では何も言うことはない。

「ありがとうございます。もちろん、ただでデータを譲れとは言いません。大切なゲームデータです。運営の都合で譲っていただくからには、こちらとしても相応のお礼を用意させていただきました」

「死人にお礼ねぇ」

「まあまあ、そう疑い深い目をされずに。運営としては、あなたに人生をリスタートさせるチャンスを差し上げたいと思います」

「……分かりやすく言うと?」

「異世界に転生させて差し上げます」

 正気か? という言葉が出かかったが、リリアちゃんにふざけている様子は見られない。
 でも異世界転生って……いや、死んだ私がこうして喋れてる時点でファンタジーみたいなものだしな……。

「それも、あなたがミオンとして獲得したスキルを全て引き継いでの転生です」

「マジで?」

「はい。異世界でイージーモードのやり直しライフが送れます」

「ていうか、人間を異世界に転生させるってセブホラ運営は一体何者……?」

「細かいことはお気になさらない方がいいですよ?」

 リリアちゃんの笑顔からは、それ以上聞くんじゃねえという意思が伝わってくる。
 私は素直に質問を取り下げ、一つため息をついた。

「本当に、異世界に転生させてくれんの?」

「はい」

「何でこんなことに……。まあいいや。それじゃ、異世界に送ってよ」

「分かりました」

 リリアちゃんは一つ頷き、それから私に手をかざした。

「今度こそはまともに働いてくださいね。それではミオンさん、良き異世界ライフを……」

 突如、激しい光に全身が包まれる。
 目の前が真っ白になり、私は意識を失った。
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