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第2章 創造魔法と救世主
第25節 同行と緊張
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その後店の前で正座をさせられたグラフォスは、通行人の冷たい視線を感じながらこんこんとアカネの説教を受けていた。
「アカネさんそろそろ……」
日も高く昇りはじめてグラフォスの足の感覚がなくなってきたころ、アカネの息も上がり説教がいったん途切れたところで、グラフォスは口をはさむ。
「……ごめん、ちょっと言い過ぎたかも」
グラフォスの割り込みによって少し冷静になったのか、息が切れながらもアカネは少ししょげた表情をしてグラフォスに手を差し伸べる。
謎の解放感を味わっていたグラフォスは彼女の手を取ると立ち上がる。
しかしあまりの長時間正座をしていたせいで足の感覚が全くなかったグラフォスは、立ち上がったと同時によろめいてしまい、彼女の方に倒れこんでしまう。
「きゃ!」
「す、すいません。足の感覚がなくて……」
「大丈夫?」
それから少しの間周りの通行人の生暖かい視線を感じながら彼女にもたれかかり、ある程度足の感覚が戻ったところで背中に背負っていたリュックをしょいなおす。
「じゃあ僕はこれで……」
「まだいくつもりなの?」
「大丈夫ですよ。死ぬつもりはありませんし、しっかりと怒られたんで今日は森の中まではいかないつもりです」
「そういう問題じゃないんだけど……」
アカネはグラフォスの言葉を受けて何かを考えるようにうんうんとうなり始める。
「……アカネ?」
いい予感がしなかったグラフォスは彼女の注意を引こうとするが、そんなことを気にすることなくアカネは何かを考え続けていた。
「……わかった! どうしても行くっていうなら私もついていく!」
「え? それは危ないですよ」
「そんな危ないことを君は独りでしようとしているんでしょ? というよりこれまでしてきたんでしょ? 今日からは私もついていくよ。私だって回復魔法が使えるし、何かの役には立つはず」
「アカネは森に行っても大丈夫なんですか?」
アカネが森から出てきたときは精神的にも肉体的にもボロボロの状態だった。
そんな目にあった森に改めて自らの足で行くことなどできるのだろうか。
グラフォスの言葉の真意に気づけず、最初首をかしげていたアカネだったが、少し考えてようやく彼の言いたい意味に気づいたのか、少し気まずそうな表情を浮かべながら苦笑していた。
「多分……大丈夫だと思う。グラフォス君も一緒だし」
彼女の手は若干震えているようにも見えたが、これ以上グラフォスが何を言ってもアカネはひかない気がする。
グラフォスはこれから店に戻って一日店番をして過ごすか、アカネを連れて街の外に連れていくか、どちらの方がいいか天秤にかけた。
「……行きますか。二人ならギルドのパーティ募集に参加してくれる人がいるかもしれませんし」
結果、グラフォスの知識欲の方が勝ってしまい、アカネを連れて行く方を選んだ。
「わかった! 私はこのままでも行けるよ。すぐに行くの?」
「じゃあ僕ももちろん準備はできてますから、まずはギルド行きますか……」
そうしてグラフォスはアカネを連れて、ようやく店の前を離れてギルドへ向かうのだった。
「だめだったね……」
「だめでしたね……」
ギルドに向かった時とは違い、少し重くなった足取りで二人は街の外を歩いていた。
意気揚々とギルドに向かったグラフォスとアカネだったが、パーティ募集をした結果集まった人数はゼロ人だった。
グラフォスも初めて一人以外で街の外に出るからと少しテンションが上がっていたのかもしれない。
それゆえに今日こそはだれか同行してくれる人がいるかもしれないと考えてしまっていたかもしれない。
しかし冷静になって考えてみれば当然である。
書き師と『回復士(仮)』の実際は職業不詳という怪しすぎる二人組のパーティ募集である。
そんな二人組の募集に参加するもの好きがこんな昼下がりにいるはずもなかった。
グラフォスはため息をつき、物思いにふけながらアカネの方を見ると、彼女はもう気を取り直したのか、首にぶら下げた名前が刻まれた丸石のアクセサリのようなものを楽しそうに眺めていた。
「そんなにうれしいですか?」
「うん、まさか冒険者になれると思ってなかったし。それにお揃いみたいだし」
グラフォスもポケットからアカネが持っているのと同じ形をした、ただこちらにはグラフォスの名前が刻まれている記章を取り出す。
「冒険者になればだれでももらえますよ。できれば銅等級くらいにはいきたいですけどね」
グラフォスもそういいながらも、アカネの冒険者登録ができるとは思っていなかった。
冒険者登録するときには必ず職業の提示が必要となるわけで、逆に言えば職業を提示すれば誰でもなれるものではあるのだが、アカネにとってはそこが一番の難関だった。
しかし最早軽い気持ちのダメもとで回復士といったところ、それで通ってしまったのだからギルドのシステムを疑うまである。
まあ何はともあれこれで晴れてアカネは回復士(仮)の石等級の冒険者になれたわけだ。
「さて、いよいよ森に入るわけですが、大丈夫ですか?」
森の入り口というかわき道にそれていつもグラフォスが土いじりをしている場所に立つと、グラフォスは足を止めてアカネの方に顔を向ける。
今日の当初の目的はいつもの土いじりではなく、森の浅い部分に入って魔物の探索をすることである。
アカネがついてきたからといってそれをあきらめようとは思っていなかった。
そうなるとグラフォスについてくるといったアカネもその道中に道連れにしてしまうわけだが。
当のアカネはやはり怖さがあるのかさっきまでの明るい表情は消え去り、こわばった表情で無理やり笑みをその顔に張り付けている。
「アカネだけでも戻りますか? やっぱり僕一人で」
「ううん、大丈夫。私も行くよ。……手、握ってもらってもいい?」
「まあそれくらいならいくらでも」
アカネが弱弱しく差し出した震える手を何の気なくそのまま手に取ったグラフォスは、一歩ずつアカネに合わせるように歩き始めた。
「まあそんなすぐに魔物も出てくるわけじゃないでしょうし、僕も何も考えていないわけじゃないですから、きっと大丈夫ですよ」
空いている方の手でリュックから一冊の本を取り出してアカネに諭すように語りかけるグラフォスに対して、息を止めてしまっているんじゃないかと思うほど無表情で返事を返せないアカネは無言でこくこくと頷くと、二人は森へ一歩足を踏み入れた。
「アカネさんそろそろ……」
日も高く昇りはじめてグラフォスの足の感覚がなくなってきたころ、アカネの息も上がり説教がいったん途切れたところで、グラフォスは口をはさむ。
「……ごめん、ちょっと言い過ぎたかも」
グラフォスの割り込みによって少し冷静になったのか、息が切れながらもアカネは少ししょげた表情をしてグラフォスに手を差し伸べる。
謎の解放感を味わっていたグラフォスは彼女の手を取ると立ち上がる。
しかしあまりの長時間正座をしていたせいで足の感覚が全くなかったグラフォスは、立ち上がったと同時によろめいてしまい、彼女の方に倒れこんでしまう。
「きゃ!」
「す、すいません。足の感覚がなくて……」
「大丈夫?」
それから少しの間周りの通行人の生暖かい視線を感じながら彼女にもたれかかり、ある程度足の感覚が戻ったところで背中に背負っていたリュックをしょいなおす。
「じゃあ僕はこれで……」
「まだいくつもりなの?」
「大丈夫ですよ。死ぬつもりはありませんし、しっかりと怒られたんで今日は森の中まではいかないつもりです」
「そういう問題じゃないんだけど……」
アカネはグラフォスの言葉を受けて何かを考えるようにうんうんとうなり始める。
「……アカネ?」
いい予感がしなかったグラフォスは彼女の注意を引こうとするが、そんなことを気にすることなくアカネは何かを考え続けていた。
「……わかった! どうしても行くっていうなら私もついていく!」
「え? それは危ないですよ」
「そんな危ないことを君は独りでしようとしているんでしょ? というよりこれまでしてきたんでしょ? 今日からは私もついていくよ。私だって回復魔法が使えるし、何かの役には立つはず」
「アカネは森に行っても大丈夫なんですか?」
アカネが森から出てきたときは精神的にも肉体的にもボロボロの状態だった。
そんな目にあった森に改めて自らの足で行くことなどできるのだろうか。
グラフォスの言葉の真意に気づけず、最初首をかしげていたアカネだったが、少し考えてようやく彼の言いたい意味に気づいたのか、少し気まずそうな表情を浮かべながら苦笑していた。
「多分……大丈夫だと思う。グラフォス君も一緒だし」
彼女の手は若干震えているようにも見えたが、これ以上グラフォスが何を言ってもアカネはひかない気がする。
グラフォスはこれから店に戻って一日店番をして過ごすか、アカネを連れて街の外に連れていくか、どちらの方がいいか天秤にかけた。
「……行きますか。二人ならギルドのパーティ募集に参加してくれる人がいるかもしれませんし」
結果、グラフォスの知識欲の方が勝ってしまい、アカネを連れて行く方を選んだ。
「わかった! 私はこのままでも行けるよ。すぐに行くの?」
「じゃあ僕ももちろん準備はできてますから、まずはギルド行きますか……」
そうしてグラフォスはアカネを連れて、ようやく店の前を離れてギルドへ向かうのだった。
「だめだったね……」
「だめでしたね……」
ギルドに向かった時とは違い、少し重くなった足取りで二人は街の外を歩いていた。
意気揚々とギルドに向かったグラフォスとアカネだったが、パーティ募集をした結果集まった人数はゼロ人だった。
グラフォスも初めて一人以外で街の外に出るからと少しテンションが上がっていたのかもしれない。
それゆえに今日こそはだれか同行してくれる人がいるかもしれないと考えてしまっていたかもしれない。
しかし冷静になって考えてみれば当然である。
書き師と『回復士(仮)』の実際は職業不詳という怪しすぎる二人組のパーティ募集である。
そんな二人組の募集に参加するもの好きがこんな昼下がりにいるはずもなかった。
グラフォスはため息をつき、物思いにふけながらアカネの方を見ると、彼女はもう気を取り直したのか、首にぶら下げた名前が刻まれた丸石のアクセサリのようなものを楽しそうに眺めていた。
「そんなにうれしいですか?」
「うん、まさか冒険者になれると思ってなかったし。それにお揃いみたいだし」
グラフォスもポケットからアカネが持っているのと同じ形をした、ただこちらにはグラフォスの名前が刻まれている記章を取り出す。
「冒険者になればだれでももらえますよ。できれば銅等級くらいにはいきたいですけどね」
グラフォスもそういいながらも、アカネの冒険者登録ができるとは思っていなかった。
冒険者登録するときには必ず職業の提示が必要となるわけで、逆に言えば職業を提示すれば誰でもなれるものではあるのだが、アカネにとってはそこが一番の難関だった。
しかし最早軽い気持ちのダメもとで回復士といったところ、それで通ってしまったのだからギルドのシステムを疑うまである。
まあ何はともあれこれで晴れてアカネは回復士(仮)の石等級の冒険者になれたわけだ。
「さて、いよいよ森に入るわけですが、大丈夫ですか?」
森の入り口というかわき道にそれていつもグラフォスが土いじりをしている場所に立つと、グラフォスは足を止めてアカネの方に顔を向ける。
今日の当初の目的はいつもの土いじりではなく、森の浅い部分に入って魔物の探索をすることである。
アカネがついてきたからといってそれをあきらめようとは思っていなかった。
そうなるとグラフォスについてくるといったアカネもその道中に道連れにしてしまうわけだが。
当のアカネはやはり怖さがあるのかさっきまでの明るい表情は消え去り、こわばった表情で無理やり笑みをその顔に張り付けている。
「アカネだけでも戻りますか? やっぱり僕一人で」
「ううん、大丈夫。私も行くよ。……手、握ってもらってもいい?」
「まあそれくらいならいくらでも」
アカネが弱弱しく差し出した震える手を何の気なくそのまま手に取ったグラフォスは、一歩ずつアカネに合わせるように歩き始めた。
「まあそんなすぐに魔物も出てくるわけじゃないでしょうし、僕も何も考えていないわけじゃないですから、きっと大丈夫ですよ」
空いている方の手でリュックから一冊の本を取り出してアカネに諭すように語りかけるグラフォスに対して、息を止めてしまっているんじゃないかと思うほど無表情で返事を返せないアカネは無言でこくこくと頷くと、二人は森へ一歩足を踏み入れた。
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