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アンダーテイカーは勇者そしてアンデッドと旅に出る
ユイは必死に考えを巡らせた。
だが、どう考えてもこの状態のセルヴィスを連れて旅をするのは難しい。
そう思ったユイは下手に出る事にする。
「クレイド……様?」
「なんだ」
クレイドは一仕事終えたとばかりに部屋の片付けを始めていた。先ほどの自身の詠唱で、棚の香辛料や本棚の本まですっかり部屋中に撒き散らされてしまったのだ。
「僕たちと一緒に旅に出ましょう」
「は?どうして私が?」
「だって僕、アンデッドが何を食べるかも知りませんし、そもそも歩いてる途中に足が取れたりしたらどうしたらいいか分かりません」
「ある程度保護の魔法はかけてやる。それから現世の空気に触れる事で少しずつは人間らしく再生されるはずだ。そのうち喋れるようにもなるだろう。まあ、記憶は戻らないがな。……チッ!瓶が割れてしまった。貴重な香辛料で風呂に入れたら発汗作用のある珍しい物だったのに。変な好奇心なんて出すんじゃなかった」
ぶつぶつと文句を言うクレイドを見て、ユイはあることを閃いた。
「……そう言えばクレイド様はずっとここに住んでるんですか?」
「ああ、そうだ。職場に近いのが一番だからな」
職場というのは来る時に見たあの巨大な墓場の事だろうか。
「外の世界を見たいと思いませんか?」
「いらん。そもそも休みが取れない」
むむっ。
だがユイは諦めない。ここで諦めたら自分は間違いなく地獄を見る。
確かにセルヴィスは大切だが、だからと言って根性論でどうにかなるなんて思えるような脳筋ではないのだ。
「その香辛料、セルヴィスの故郷の物ですよ。それ以外にも見た事ないような香料があって、それを風呂桶に張ったお湯に垂らすとそれはそれは天国にいるかのような素晴らしい心地になるのです」
「……香料とはなんだ」
……よし!
「花を集めて作った貴重な液体です。それぞれに効能があって、よく眠れたり、頭痛が治ったりするんです」
「……なんと」
「僕は取り敢えず、セルヴィスの故郷に行くつもりです。昔、一緒に魔王を討伐した仲間がいればその人たちからセルヴィスの事が聞けると思うんです」
「……お前は色々と頭がいいな。勇者らしくない」
「ありがとうございます?」
褒められたのか貶められたのかは分からないが、ユイは取り敢えずクレイドの興味を引く事に成功した。
「……あの、それで旅には……」
「さっさとしろ。早く片付けてゆっくりと湯に入るぞ」
「はい!!!」
こうして、アンダーテイカーのクレイドと勇者のユイ、それに元勇者のアンデッド(セルヴィス)は三人で旅に出る事になったのだ。
※※※※※※※※※※※※
「ユイ、食料はどうするんだ」
最初に立ち寄った街で装備を整えるべく、店を見回っていたクレイドが、ユイに尋ねた。
「まだしばらくは幾つも街を通るから三日分くらいで問題ないです」
「なるほど」
このパーティーで旅慣れしているのはユイだけだ。まあセルヴィスもアンデッドでなければ慣れていただろうが。
「いらっしゃ……ひっ!!」
店の主人がセルヴィスを見て喉の奥で悲鳴を上げた。
「ユイ、先にセルヴィスの顔を隠す物を買おう」
体はしっかりと補強して、大きめの服を何枚も着せたので一見普通の人間だが、顔は半分が腐敗しているため、見る者の恐怖を煽る状態だった。
「……そうですね。主人、この人は僕の兄だが、先日酷い火傷を負った。顔を隠せるものはないか?」
「そりゃ失礼な態度を取ってすまなかった。頭からかけられるショール風の布と、土産に売っている工芸の面があるが、どっちにする?」
ショールなら寒い時は体にも巻ける。……アンデッドが寒さを感じるかは分からないが。
少し悩んでクレイドは黒いショールを手に取った。
そして主人に金を払い、セルヴィスの頭から被せて首元でぐるぐると巻いた。
「よく似合うぞ。アンデッド」
「……クレイドやめてください。セルヴィスです……あれ?」
「どうしたユイ」
「あれを見てください」
ユイの指差す方を見ると、頭から布を被ったセルヴィスが、先ほどの仮面を手に取りしきりに顔を隠そうとしている。
「……やっぱり気になるんですね。あんな姿で恥ずかしいのかな」
「いや、アンデッドにそんな羞恥心とかないから」
けれどセルヴィスは、自由にならない両手で懸命に仮面を付けようとしている。
それを見て、店の主人が涙を拭いながらその仮面をセルヴィスにくれた。
「酷い目に遭ったんだな。まだ若いのに。これを持って行きな。その仮面、兄ちゃんによく似合うぜ」
「……うあ」
「主人、親切痛み入る。……貴君の魂が安らかに導かれるように祈ろう」
「……え?……わしはもうすぐ死ぬのか?」
「違うんです。この人流しの葬送士なんです。いつか召される時の話なので安心してください」
「そうか……ありがとな」
「いいえ、じゃあまた!」
ユイは、主人の青ざめた顔が元に戻ったのを確認して二人を連れて店を出る。
「クレイドはちょっと大人しくしててください」
「なんと……」
礼のつもりで死出の旅たちに備え祝福を与えてやったのに。
「……それより流しの葬送士ってなんだ。私を旅に連れ出して根無草にしたのはお前だろう」
「……まあ帰る家はちゃんとあるからいいじゃないですか。とりあえず必要な物を買い揃えて街を出ましょう」
「ああそうだな」
どうもユイとは気が合わない気がする。さっさとアンデッドの記憶を取り戻して家に帰ろう。クレイドはそう考えながらユイの後を追った。
だが、どう考えてもこの状態のセルヴィスを連れて旅をするのは難しい。
そう思ったユイは下手に出る事にする。
「クレイド……様?」
「なんだ」
クレイドは一仕事終えたとばかりに部屋の片付けを始めていた。先ほどの自身の詠唱で、棚の香辛料や本棚の本まですっかり部屋中に撒き散らされてしまったのだ。
「僕たちと一緒に旅に出ましょう」
「は?どうして私が?」
「だって僕、アンデッドが何を食べるかも知りませんし、そもそも歩いてる途中に足が取れたりしたらどうしたらいいか分かりません」
「ある程度保護の魔法はかけてやる。それから現世の空気に触れる事で少しずつは人間らしく再生されるはずだ。そのうち喋れるようにもなるだろう。まあ、記憶は戻らないがな。……チッ!瓶が割れてしまった。貴重な香辛料で風呂に入れたら発汗作用のある珍しい物だったのに。変な好奇心なんて出すんじゃなかった」
ぶつぶつと文句を言うクレイドを見て、ユイはあることを閃いた。
「……そう言えばクレイド様はずっとここに住んでるんですか?」
「ああ、そうだ。職場に近いのが一番だからな」
職場というのは来る時に見たあの巨大な墓場の事だろうか。
「外の世界を見たいと思いませんか?」
「いらん。そもそも休みが取れない」
むむっ。
だがユイは諦めない。ここで諦めたら自分は間違いなく地獄を見る。
確かにセルヴィスは大切だが、だからと言って根性論でどうにかなるなんて思えるような脳筋ではないのだ。
「その香辛料、セルヴィスの故郷の物ですよ。それ以外にも見た事ないような香料があって、それを風呂桶に張ったお湯に垂らすとそれはそれは天国にいるかのような素晴らしい心地になるのです」
「……香料とはなんだ」
……よし!
「花を集めて作った貴重な液体です。それぞれに効能があって、よく眠れたり、頭痛が治ったりするんです」
「……なんと」
「僕は取り敢えず、セルヴィスの故郷に行くつもりです。昔、一緒に魔王を討伐した仲間がいればその人たちからセルヴィスの事が聞けると思うんです」
「……お前は色々と頭がいいな。勇者らしくない」
「ありがとうございます?」
褒められたのか貶められたのかは分からないが、ユイは取り敢えずクレイドの興味を引く事に成功した。
「……あの、それで旅には……」
「さっさとしろ。早く片付けてゆっくりと湯に入るぞ」
「はい!!!」
こうして、アンダーテイカーのクレイドと勇者のユイ、それに元勇者のアンデッド(セルヴィス)は三人で旅に出る事になったのだ。
※※※※※※※※※※※※
「ユイ、食料はどうするんだ」
最初に立ち寄った街で装備を整えるべく、店を見回っていたクレイドが、ユイに尋ねた。
「まだしばらくは幾つも街を通るから三日分くらいで問題ないです」
「なるほど」
このパーティーで旅慣れしているのはユイだけだ。まあセルヴィスもアンデッドでなければ慣れていただろうが。
「いらっしゃ……ひっ!!」
店の主人がセルヴィスを見て喉の奥で悲鳴を上げた。
「ユイ、先にセルヴィスの顔を隠す物を買おう」
体はしっかりと補強して、大きめの服を何枚も着せたので一見普通の人間だが、顔は半分が腐敗しているため、見る者の恐怖を煽る状態だった。
「……そうですね。主人、この人は僕の兄だが、先日酷い火傷を負った。顔を隠せるものはないか?」
「そりゃ失礼な態度を取ってすまなかった。頭からかけられるショール風の布と、土産に売っている工芸の面があるが、どっちにする?」
ショールなら寒い時は体にも巻ける。……アンデッドが寒さを感じるかは分からないが。
少し悩んでクレイドは黒いショールを手に取った。
そして主人に金を払い、セルヴィスの頭から被せて首元でぐるぐると巻いた。
「よく似合うぞ。アンデッド」
「……クレイドやめてください。セルヴィスです……あれ?」
「どうしたユイ」
「あれを見てください」
ユイの指差す方を見ると、頭から布を被ったセルヴィスが、先ほどの仮面を手に取りしきりに顔を隠そうとしている。
「……やっぱり気になるんですね。あんな姿で恥ずかしいのかな」
「いや、アンデッドにそんな羞恥心とかないから」
けれどセルヴィスは、自由にならない両手で懸命に仮面を付けようとしている。
それを見て、店の主人が涙を拭いながらその仮面をセルヴィスにくれた。
「酷い目に遭ったんだな。まだ若いのに。これを持って行きな。その仮面、兄ちゃんによく似合うぜ」
「……うあ」
「主人、親切痛み入る。……貴君の魂が安らかに導かれるように祈ろう」
「……え?……わしはもうすぐ死ぬのか?」
「違うんです。この人流しの葬送士なんです。いつか召される時の話なので安心してください」
「そうか……ありがとな」
「いいえ、じゃあまた!」
ユイは、主人の青ざめた顔が元に戻ったのを確認して二人を連れて店を出る。
「クレイドはちょっと大人しくしててください」
「なんと……」
礼のつもりで死出の旅たちに備え祝福を与えてやったのに。
「……それより流しの葬送士ってなんだ。私を旅に連れ出して根無草にしたのはお前だろう」
「……まあ帰る家はちゃんとあるからいいじゃないですか。とりあえず必要な物を買い揃えて街を出ましょう」
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