【完結・ルート分岐あり】オメガ皇后の死に戻り〜二度と思い通りにはなりません〜

ivy

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★本編★

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 次の日の朝、珍しくルドルフに朝食を共にと誘われた。
 色とりどりのフルーツを堪能していたら呆れたような顔でルドルフに笑われる。

「そんな普段通りにされると昨日の事が夢だったみたいだ」
「大丈夫です。ちゃんと覚えてますから」
「本当にお前は何度やり直しをしても言う事を聞かないし結局俺のものにはならないし」
「そうなんですか?」
「ああ」

 嫌いではない。誤解も解けたし感謝もしてる。けれどどんな事情があってもルルテラを剣で射抜いたあの時のルドルフを忘れられない。それが僕の為だとしても。

「ルドルフ様にもルルテラが大事だと思って欲しかったです」
「それは無理だ。俺はお前が何より大事だから。娘が生まれても息子が生まれてもお前に害を為すなら迷いなく殺す。それに俺より愛情を注ぐのもダメだ」
「自分の子なのに?」
「そうだ」

 実際にお腹に宿して産みの苦しみを知ってるからだろうか。我が子は本当に愛しいし、この子の為なら死んでも惜しくないのにな。

「僕はルドルフ様とルルテラが崖から落ちそうになってたらルルテラを助けます」
「そうか。それを本人の前で言うのは止めてくれ」
「すいません」

 和やか?に食事は進む。お互い隠し事が無くなり随分と自然体で接する事が出来るようになった。

「そう言えば僕とルルテラが死んだあと、ルドルフ様はどうしたんですか?」
「生き返らないお前にありったけの魔力を注ぎ続けて枯渇して死んだな」
「もしかして二度目とか三度目も?あ、いや聞くの怖いですね」
「想像の通りだが?」
「因みに今は何回目ですか?」
「十回目だ」

 凄い。もうベテランだ。

「じゃあ十一回目の僕はルドルフ様を好きになるかもしれませんね。こんなに良くしてもらってるし」
「そうだな。次のお前に賭けるか」

 はははと笑いながら軽口を叩く。
 側から見ていたらなんと仲睦まじい夫婦かと思うだろう。話の内容は随分と物騒だけど。


 ルドルフが次に会う僕はルルテラを産む前だと良いな。
 そしたらルドルフだけを見てルドルフだけを愛せるだろう。
 僕は見知らぬ自分に、彼の事をくれぐれもお願いしますと心の中で頼んだ。





「今日は出掛けないんですか?」
「ああ、ようやく片がついたからな。それにもうすぐヒートだろ。腹を決めたから逃げ隠れせずにお前の相手をしてやる」
「あ、ありがとうございます。でもまだ三ヶ月程はありますよ」

 改めて言われると緊張する。
 ルドルフは少なくとも僕と九回はしてるけど今生の僕は初めてだし。あ、でも記憶だけなら一回あるか。酷いヒートだったからあんまり覚えてないけど。

「僕は教会に行きますよ」
「俺を置いてか?」

 わがままな駄々っ子みたいで笑える。

「そうです。お留守番してて下さい」
「ああ気をつけて行ってこい」
「はい」

 程なくしてノエルがこちらに歩いてくるのが見えた。

「ほら来たぞ」
「分かってますよ」

 僕は立ち上がりノエルの元に歩み寄る。振り返って見たルドルフは眩しいものを見るように僕達を見送っていた。







「そうだったんですか……」

 教会に向かう馬車の中でルドルフに聞いた話をノエルに伝えた。ノエルにしても八雲から死に戻りの話を聞いてなければにわかには信じられなかっただろう。

「……アリス様はそれで良いんですか」
「うん。ルルテラが無事に生まれて育ってくれるならそれで良い」
「……」
「ノエル、ルルテラを守ってやってね」
「アリス様、私は……」
「頼りにしてるよノエル」
「……はい。皇后陛下のお望みのままに」

 そう言ったきり黙り込むノエル。
 酷い事を言っているのは分かってる。けれど今の僕はそれ以上何も言えない。
 育つ前に摘んでしまったこの思いは胸の底に埋めたまま、僅かに残された日々を新しいペンでなぞっていこうと思う。






 それからの僕は本当に好きな事だけをして過ごした。とは言え領地の問題は解決しておかないと死んでも死にきれないので、寝食も忘れ取り組んだ。そして暇が出来ると教会に行き町の住人達の治癒を行なう。ノエルと魔物の討伐に行った時は少し怪我をして、ルドルフに怒られたりもした。

 魔術の力はあってもどう生かしていいか分からなかった昔とは違う。毎日がとても充実して楽しかった。






 そして春が来て二度目の満月。いよいよルルテラを授かった日が来た。分かってはいても僕は緊張で朝からずっとドキドキしっぱなしだ。
 確か夕方になって突然ヒートが始まったんだっけ。体調不良だと勘違いしたアーロンが急いでルドルフを呼びに行き彼も引きずられラットになったんだ。

 ぼんやり前生を思い出す。あの時ルドルフは何を考えていたんだろう。
 嫌々だったよな。きっと。
 だってそれまでろくに会話したこともなかったんだから。

 僕は嬉しかった。これで本当の夫婦になれると思ったから。けれど翌朝、目を覚ました時にはベッドで一人置き去りにされてた。その時の絶望は今も胸をチリチリと焦がす。
 今生はせめて朝まで一緒に過ごしたいな。
 寂しい思いをした昔の僕の為に。


「変わりないか?」

 ルドルフがワインの瓶を持って部屋に来た。

「早いですね」
「ああ、いつもこの日はどうやってお前から逃げようかって考えてたからなんか変な感じだ」
「面白いです」
「いや、全然面白くない。俺は必死でこの運命を回避しようとしてたのにお前は一瞬で飛び越えてくるんだから腹が立って仕方ない」

 ふふっと笑う。

「一生に一度の我儘です」

 日が暮れてきた。少しだけ身体が熱を持って来るのが分かる。それでも以前のような爆発的なヒート発作ではない。緩やかに穏やかにそれは始まった。

「……なんだ。酒を飲む時間もなかったか」

 ルドルフは酒瓶をテーブルに置き、僕の方に近寄る。僕は彼に向かって手を差し伸べた。

 ルドルフは落ち着いている。ラットの発作はまだ起こってないらしい。

 彼は僕を抱き上げベッドに降ろし、覆い被さってキスの雨を降らせた。僕はルドルフの背中に腕を回し宝物のようにそっと抱きしめる。
 昔の僕が夢見た事故ではない繋がり。
 ここから追い出されないようにとか、ちゃんと愛さなければとか。そんな思いばかりが先走ったけど。






 今頃気付く。
 あの時の僕は幼いながら確かにルドルフが好きだったのだ。









 目覚めた時、隣ではルドルフがぐっすりと眠っていた。
 彼の寝顔は初めて見る。思ったより無防備であどけない。
 僕は寝乱れたシーツの上で身体を丸めお腹を撫でた。
 ……ルルテラがここにいる。

「早く会いにきて」

 僕はそう呟いて多幸感と安堵の中、目を閉じた。

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