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新学期
新学期の準備
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通り名を決めて、ルナは悪魔としての自己を確立した。
しかしそんな事とはお構い無しに世間の時間は進んでいく。
「さて、Fクラスの名簿はこんなもんか」
魔法学校ではアダムがFクラスの生徒の手続きが終わったのでその情報を元にクラス名簿を作っていた。
実技が始まり、そこからかなりの脱落者や中途退学して就職する者などが多いとはいえ魔法学校は一クラス30人がAから始まりFまであるというかなりの人数が在籍している。
「今年は何人残るか・・・」
厳しい世界であるため教師にとっては何人を無事に送り出せたかが力量の指標の一つになる。実技に入るまでにもそれなりに脱落者はおり、金銭などの家庭の事情ないし地域によっては故郷が戦火に巻き込まれて家族の安否がわからなくなったために魔法学校から孤児院に移動になった生徒もいる。当然学力でついていけなかったものも。
実技に漕ぎつけた生徒もその事情で学園を去るものもいるのでアダムをはじめとする教師陣は生徒の動向に常に気を配ることになる。
「おぅい、おつかれぇ~」
名簿を作ったアダムにコロンが声を掛けてきた。相変わらずのマイペースぶりで職員室に備え付けられたコーヒーをただ飲みする厄介なヤツである。
「ルナちゃん助けた時の名誉の負傷はどんな具合?」
「おかげさんで大分良くなったよ」
校医であるコロンはその言葉に笑顔を見せると名簿を覗き込んだ。
「毎年末端のクラスは人数が少ないね」
「仕方ないだろう、クラス単位でやるイベントがちょいと不安だが今回は大型新人がいるからな」
「それってルナちゃんのことかい?」
コロンの言葉にアダムは頷いた。まさか生徒の中に魔法使いの中でも最高峰、純粋な力の強さでは人外の規格である悪魔がいるとは思うまい。下手をするとエリートクラスや上級生だって真っ向勝負となると彼女に勝てるものはいないかもしれない。
しかしながらそんな彼女がまさか悪魔の中でもさらに上位の大悪魔の末席に座っているとは思うまい。
「良い子だから過去の生徒みたいにとんでもない事をしたりはしないとおもうが・・・」
「えらく弱気だねぇ?」
「人というのは何につけても例外だらけだからな」
彼女に関しては例外だらけだが、とアダムは頭の中で呟いた。コロンも多少はルナを取り巻く環境についてアダムから聞いていたが彼女が悪魔だという事はまだ知らなかったので彼ほど深刻には考えていなかった。
「もうじき新学期で実技を合格した子たちが集まってくる。どのみち大変になるんだからあんまり気張っちゃダメだよ?」
「年中緩み切ってるお前さんが言うと説得力があるよ」
コロンはアダムの溜息を意に介さずコーヒーを楽しんでいた。
「・・・成った、というより確定したって感じだな」
塒の古びた教会でエトナ―は一人朝日に目を細めながらつぶやいた。悪魔の存在に敏感な彼女は通常の悪魔とは異なる次元の存在である大悪魔の誕生に複雑な気分だった。
「名づけしてなくてアレだったのかよ、伸びしろやべーな」
真名は魔法使いや悪魔にとっても重要なことであるし、魔法とは別のベクトルの術を扱うエトナ―にもそれはよく理解できていた。それ故にルルイエ経由で知り得た情報を元に考えてみてもルナのこれからを考えると頭が痛い内容だった。
「大悪魔がここをうろうろしているってなるとまあ、考えなきゃならんわな」
教会に属する占い師やエトナ―程では無いにしろ敏感な聖職者が大悪魔の誕生を予見して大騒ぎしている。
大悪魔はいったいどのような存在なのか?どのように対策を打つべきなのか?
ほぼほぼ対策が無いに等しい大悪魔の存在は彼らにとって居るだけで脅威だ。それが増えたというのだからその混乱はエトナ―にも理解できた。
「刺激しないように、って考えてくれればいいけど問題は排斥しようとするバカだよな」
悪魔祓い、異端審問官。彼らの中には怪しき者は罰するべきという考えのものもいる。
悪魔が超常の力を操る存在であり、この世界で自分達に次ぐ権威の存在である魔法使いの関係者ということも深くかかわっているからだ。
前者はもちろん無辜の民を守り、教義を守るためである。後者は権威、権力、そしてそれが齎す安寧や利益が目的。どちらも確かに必要であるが、それ故に過激になるときがある。
不幸な存在がやり玉に挙げられた悪魔一人ならまだエトナ―がどうにかできるがもしそれで大きな争いになり、犠牲者が山のように出てしまったらと考えると彼女は考えるのも億劫になる。
「あの子が殺されるのも可哀想だし、馬鹿に扇動されて彼女やその保護者に殺されるような羽目になる聖職者たちが出るのも勘弁だなぁ・・・ああ、やだやだ」
悪魔に転じてなお心優しいルナ。信仰に生きて人々の為に尽くしている聖職者たち。エトナ―はどうにか彼らがぶつからずに穏やかに暮らせるように祈った。
しかしそんな事とはお構い無しに世間の時間は進んでいく。
「さて、Fクラスの名簿はこんなもんか」
魔法学校ではアダムがFクラスの生徒の手続きが終わったのでその情報を元にクラス名簿を作っていた。
実技が始まり、そこからかなりの脱落者や中途退学して就職する者などが多いとはいえ魔法学校は一クラス30人がAから始まりFまであるというかなりの人数が在籍している。
「今年は何人残るか・・・」
厳しい世界であるため教師にとっては何人を無事に送り出せたかが力量の指標の一つになる。実技に入るまでにもそれなりに脱落者はおり、金銭などの家庭の事情ないし地域によっては故郷が戦火に巻き込まれて家族の安否がわからなくなったために魔法学校から孤児院に移動になった生徒もいる。当然学力でついていけなかったものも。
実技に漕ぎつけた生徒もその事情で学園を去るものもいるのでアダムをはじめとする教師陣は生徒の動向に常に気を配ることになる。
「おぅい、おつかれぇ~」
名簿を作ったアダムにコロンが声を掛けてきた。相変わらずのマイペースぶりで職員室に備え付けられたコーヒーをただ飲みする厄介なヤツである。
「ルナちゃん助けた時の名誉の負傷はどんな具合?」
「おかげさんで大分良くなったよ」
校医であるコロンはその言葉に笑顔を見せると名簿を覗き込んだ。
「毎年末端のクラスは人数が少ないね」
「仕方ないだろう、クラス単位でやるイベントがちょいと不安だが今回は大型新人がいるからな」
「それってルナちゃんのことかい?」
コロンの言葉にアダムは頷いた。まさか生徒の中に魔法使いの中でも最高峰、純粋な力の強さでは人外の規格である悪魔がいるとは思うまい。下手をするとエリートクラスや上級生だって真っ向勝負となると彼女に勝てるものはいないかもしれない。
しかしながらそんな彼女がまさか悪魔の中でもさらに上位の大悪魔の末席に座っているとは思うまい。
「良い子だから過去の生徒みたいにとんでもない事をしたりはしないとおもうが・・・」
「えらく弱気だねぇ?」
「人というのは何につけても例外だらけだからな」
彼女に関しては例外だらけだが、とアダムは頭の中で呟いた。コロンも多少はルナを取り巻く環境についてアダムから聞いていたが彼女が悪魔だという事はまだ知らなかったので彼ほど深刻には考えていなかった。
「もうじき新学期で実技を合格した子たちが集まってくる。どのみち大変になるんだからあんまり気張っちゃダメだよ?」
「年中緩み切ってるお前さんが言うと説得力があるよ」
コロンはアダムの溜息を意に介さずコーヒーを楽しんでいた。
「・・・成った、というより確定したって感じだな」
塒の古びた教会でエトナ―は一人朝日に目を細めながらつぶやいた。悪魔の存在に敏感な彼女は通常の悪魔とは異なる次元の存在である大悪魔の誕生に複雑な気分だった。
「名づけしてなくてアレだったのかよ、伸びしろやべーな」
真名は魔法使いや悪魔にとっても重要なことであるし、魔法とは別のベクトルの術を扱うエトナ―にもそれはよく理解できていた。それ故にルルイエ経由で知り得た情報を元に考えてみてもルナのこれからを考えると頭が痛い内容だった。
「大悪魔がここをうろうろしているってなるとまあ、考えなきゃならんわな」
教会に属する占い師やエトナ―程では無いにしろ敏感な聖職者が大悪魔の誕生を予見して大騒ぎしている。
大悪魔はいったいどのような存在なのか?どのように対策を打つべきなのか?
ほぼほぼ対策が無いに等しい大悪魔の存在は彼らにとって居るだけで脅威だ。それが増えたというのだからその混乱はエトナ―にも理解できた。
「刺激しないように、って考えてくれればいいけど問題は排斥しようとするバカだよな」
悪魔祓い、異端審問官。彼らの中には怪しき者は罰するべきという考えのものもいる。
悪魔が超常の力を操る存在であり、この世界で自分達に次ぐ権威の存在である魔法使いの関係者ということも深くかかわっているからだ。
前者はもちろん無辜の民を守り、教義を守るためである。後者は権威、権力、そしてそれが齎す安寧や利益が目的。どちらも確かに必要であるが、それ故に過激になるときがある。
不幸な存在がやり玉に挙げられた悪魔一人ならまだエトナ―がどうにかできるがもしそれで大きな争いになり、犠牲者が山のように出てしまったらと考えると彼女は考えるのも億劫になる。
「あの子が殺されるのも可哀想だし、馬鹿に扇動されて彼女やその保護者に殺されるような羽目になる聖職者たちが出るのも勘弁だなぁ・・・ああ、やだやだ」
悪魔に転じてなお心優しいルナ。信仰に生きて人々の為に尽くしている聖職者たち。エトナ―はどうにか彼らがぶつからずに穏やかに暮らせるように祈った。
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