悪魔になったらするべきこと?

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新学期

アダムVS暗器使い

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暗器使いは以前の雰囲気とはまるで別人であったがそれ以上の衝撃でアダムを迎えた。

「ひひひひ!」
「おっと、こいつは・・・」

木々を蹴ってまるで跳ねまわる猫のように動き回る。

「ぎゃあっ!」
「ひひーっ!」

地面や仲間のはずの山賊にひっかき傷を作りながらアダムの周囲をぐるぐると移動する。
元より馬車に追随できるだけの強化を受けているはずの体に薬物でさらに強化しているのだろう。
アダムの攻撃に対しても難なく対応している。

「これはちょっと本気が必要か」

投擲に適した小型のナイフを投げてみたがそれも躱されるか、もしくは手甲で弾かれる。
もっとひどいと当たっても意に介していない状態だ。

「あ”-、ぎもぢいいいいい」
「大分狂ってきてるな」
「刻むぞ!刻んで刻んで刻んでぇぇ!やりたぁぁぁぁぁい!」

怪しい精神状態をアダムに対する敵意で塗りつぶしているらしい。それ以上に暗器使いは
戦うことや誰かを傷つけるのが好きらしい。

「血が、もっと血がほしいぞぉ」

速度に比例するようにかぎ爪の斬撃は鋭さと重さを増している。

「鼻と目から出てるだろ」
「ひひ、見たいんだ!質が重要だぞ!お前の血が見たい!」

首を斬り飛ばしそうな勢いの斬撃をしゃがんで躱す。空を切った爪はついでといわんばかりに
仲間のはずの山賊の首を削ぎ飛ばした。

「お構いなしか?」
「ああ、ああ!お前が悪いんだぞ、避けるから!」

責任転嫁も甚だしい。アダムは叱り飛ばしてやろうかと思ったが目の前の人物は
もうすでに正気かも怪しい。ましてやこの後に命を繋げるのかも。
狂気に全てを投げ打って、自分を切り刻むために強さを手に入れたようだ。

「仕方ないな、コイツばかりは・・・」

アダムは疲れ知らずで木々を跳ねまわる暗器使いを見やる。
軌道はランダムなように見えて規則性があり、追えないほどではない。
だが痛みを感じていない相手に致命傷を与えるにはどうするべきか。
手袋をはめるとアダムは懐から金属製の鉤のついたロープを取り出した。

「引っ掛けるしかないだろうな」
「ひひっ!そんなもんに捕まるわけないだろ!」

鉤爪をぐるぐると振り回して加速するとアダムはそれを狙いをつけて飛ばした。

「ひひっ!」

暗器使いはそれを容易く躱す。鉤爪は木に引っ掛かるとピンと縄が張った。
その際に体に刺さっていたナイフを引き抜くとアダムに向けて投げつける。

「ちっ」
「ひひひひー!もらったァ!」

アダムはナイフを見て体を捻ると縄を手放した。無手になったアダムを見て
チャンスが転がってきたと木を蹴って加速し、鉤爪を構える。
両手を広げて左右から爪を振り抜こうとしたその時だった。

「理想的な攻撃だ、助かる」

アダムは手袋をしていた手をぐっと引く。暗器使いの目に一瞬だけ何かの煌めきが見えたが

「おごえっ・・・」

首に引っ掛かった何かで思考が停まった。

「その縄には紐もついてたんだな、これが」

首に絡まったのは見えない細さの紐だった。まるでピアノ線のような強靭さで食い込んだ紐は
皮肉にもすさまじい加速が産み出した勢いを切断力に変えて・・・

「あえ、体が、なんでおれのからだが落ちてる?」
「その状態でしゃべるな、気味が悪いぞ」
「そっか・・・おれ、の、首が・・・おちて・・・る」

途中までまるで気付いていないように喋っていたがアダムが心底ありえないといった
表情で言うと状況を理解したのかそのまま白目を向いて動かなかくなった。

「魔力が尽きるまで無尽蔵に動き続けるタイプだったか?ほっとくとヤバかったな」

アダムは鉤縄を回収するとそのまま生徒の元へ走った。




「皆無事か!」

駆け付けると額にこぶを作ったクロエとお腹を押さえて辛そうなカティナを除けば
ケガらしいケガもなく、また二人も大きなケガではなかったようで一安心。

「先生、遅いよぉ」
「すまんな、手こずった」

アダムが謝りながら周囲を見渡すと数人の山賊と魔法使いの男が倒れているのが見えた。

「お前たちが倒したのか?随分と無茶をしたな・・・」

魔法使いの様子を見るとアダムの目には相当な熟練者に見える。落ちていた杖も上等なもので
とても山賊ごときが雇えるレベルではなかったが・・・。

「ルナちゃんが倒してくれたんだよ」
「フラウステッドが?」

ティナが何故か自慢げに言う。アダムが不思議そうにしているとティナに引っ付いていたルナの
目が八つに増えていることに気付いてなるほど、と合点が言った様子で頷く。

「力を使ったんだな?」
「危なかったんで思わず・・・」

戦場では最適解を即座に選べないとそれが死につながる事は珍しくない。
恐らくこの魔法使いは学者タイプだったんだろう。知識も選択肢もたくさんあったが
目の前の状況におそらく好奇心が勝り、最善手かつ最短でルナ達を仕留めることを
怠ったのだろう。
とはいえ目の前の少女が実は最高位のランクに属する悪魔だとは思いもしなかっただろうが。
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